第17話 エルフが長寿ってそれどこ情報?


 オレはユウキを連れて街の商店街までやってきた。


 オレたちが現在いる街は交通の要にあり、商業キャラバン隊が多数滞在している。

 商人が集まる街は自然と貿易で栄えて、街も発展する。

 インフラも整っており、メイン通りには石畳が敷かれて魔法のランプで街灯まで設置されていた。



「ここまでくればいいだろ」



 そんな中央通りにある商店街の人混みにまぎれなから、オレはようやくひと息ついた。隣にいたユウキが頬を膨らませる。



「せっかく精霊使いとお話ができると思ったのに。なにをそんな急いでたの?」


「それは……」



 ぐぅ……。


 答えようとしたところで、オレの腹の虫が鳴いた。



「な~んだ。もしかしてボクとデートしたかったの? しょうがないなぁ。いいよ。食べ歩きなら付き合ってあげる」


「そうだな。屋台で串焼きでも食べながら話すか」



 立ち止まって話をしていたら怪しまれる。

 オレは羊肉の串焼きを屋台で購入。ユウキと一緒に食べ歩きをしながら事のあらましを伝えた。



「えっ!? あの占い師に殺されたの!?」


「しー! 声が大きい。どこで聞いてるかわからないんだぞ」


「ご、ごめん……」


「あのカーラとかいう占い師はおまえを魔女と呼んでいた。偽りのステータスも見抜いてる様子だった」


「それはゆゆしき事態だね。偽装が甘かったのかな」


「どうだろう。ギルドのお姉さんは騙せていたから一般人には普通のステータスに見えてるはずだ」



 カーラについては謎が多い。目的もわからないし、実力も未知数だ。

 警戒を続けながらアイツの情報を集める必要がある。



「裏のステータスを見抜いたのも驚きだが、問題なのはユウキの昔の呼び名を知っていたことだ。あいつと知り合いなのか?」


「そんなわけないでしょ。数千年もの間、洞窟に閉じ込められてたんだよ」


「だけど相手は長寿のエルフだ。1000年以上生きると言われてる。あいつの家族が傾国の魔女と関わりがあってもおかしくはない」


「あ~~~。今はそういう感じなのか。なるほどなるほど」


「何か思い当たる節でも?」


「カーラについては知らないよ。コールドスリープから目覚めたときに記憶がゴチャゴチャになったんだ。知り合いだったとしても顔を覚えてない」



 ユウキは羊肉を食べきると、空いた串を使って青空を指し示した。



「ボクが納得したのはお天気占いの方。精霊と話をして天候を読み取るのは、なんだ」


「そうなのか? だけど【精霊使役】のスキルは一般的に使われてるぞ」


「みたいなんだよねぇ。今まで精霊使いに会ったことがなかったからスキルが広まってることに驚いちゃった」



 ユウキは説明した。


 数千年前の戦乱の時代は世に混沌が満ちており、自然を司る精霊も狂っていた。

 それを嘆いた一部の亜人種がユウキを森に招いて、ユニークスキルを授けてくれるように懇願した。



「ボクも世界が壊れるのはイヤだったからね。誰にどうやって授けたかは覚えてないけど、死印を刻んでユニークスキルに目覚めさせたんだ」


「そのユニークスキルが……」


「【精霊使役】だね」



 ――――【精霊使役】。


 それは万物に宿る自然の化身、精霊を召喚して使役する魔法スキルだ。


 魔法スキルに分類されているが、体内の魔力を使って攻撃を放つ一般的な魔法とは異なる。

 精霊使役は精霊自身の力を操り、敵を攻撃する。

 術者とは別の魔力タンクを要するので、使いすぎて倒れることもない。



「便利なスキルだけど精霊は気難しいから術者に牙を剥く場合もある。自然と対話する必要もあるから使用者は限られてる……はずだったんだけど」


「【精霊使役】はエルフが日常的に使ってる魔法スキルだ。エルフと遭うのは稀だけど、そこまで珍しいわけでもない」



 エルフは希少種の亜人だ。引きこもりな上に数も少ない。

 ユウキと出会ったのは2年前。それより以前に洞窟から出てきたとしても遭遇する確率は低いだろう。



「長い年月をかけてスキルを使い続けて【精霊使役】を体に染みこませたんだろう。それで意識せず精霊を操れるようになったんだ。死印の呪いの上手い使い方だ」


「エルフの呪いって?」


寿


「は……? エルフの寿命が長いのは死印の影響なのか?」


「うん。ボクがいた時代に生きていたエルフの寿命は普通の人間と変わらなかったよ」



 ユウキはそこで空になった木の串を見つめる。



「エルフは森の貴人と呼ばれて自然を崇拝していたから、精霊との親和性が高かった。【精霊使役】に覚醒したのはその影響だ。けど、それだけで長寿ってことにはならないでしょ?」


「それはそうだが……」



 オレの中の常識がガラガラと崩れ去る。エルフは長寿という定説が覆った。



「ボクは洞窟に封じられたから結果を見るまで呪いの正体はわからなかった。けど、まさか長寿とはね」



 ユウキはそこで寂しそうに苦笑を浮かべる。



「当時のボクはお友達を欲していたのかも。不老と長寿なら見た目だけでも一緒の存在に見えるから」


「ユウキ……」



 不老の呪いを受けたユウキは肉体的な成長が望めない。

 長寿のエルフもまた、ある年齢を境に肉体の成長が著しく停滞するという。


 不老の魔女と長寿のエルフ。

 傍目からは、若い友人同士が楽しくお茶会をしているように見えるだろう。


 ユウキがオレに対して積極的な理由がわかった気がした。

 ユウキは自分と同じ異質な存在を求めている。

 その関係性が歪んだものだとしても、オレは――



「デザートだ!」


「え?」


「飯を食ったらデザートを食わないとな。この街の名物は甘豆を煮込んで作った冷やしプリンだ。つるっとしたのど越しで食後でも何杯もいける。むしろ、いこう! ジャンジャン食べよう!」



 オレはユウキの手を再び引っ張る。



「あっ、引っ張らないでよ、もう……っ」



 ユウキはぷくりと頬を膨らませて怒るが。



「けど強引なロイスもいいかも……。夜もその調子でお願いね」


「考えとく……」


「えへへ♪ ロ~イス♪」



 ユウキは子猫のように笑い、俺の腕にひっついてきた。


 最初は保身のためにユウキのそばにいることにした。

 だけど今では、心からユウキと一緒にいたいと思う自分がいた。


 この気持ちは死印が導く魂の共鳴かもしれない。

 例えそうだとしてもこの笑顔を護りたい。

 ユウキの笑顔をもっと見たい。この気持ちに嘘はなかった――。




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