ざまぁされた勇者と無能魔女の死に戻りループ無双~追放者に復讐されたら死亡フラグ回避のチートスキルに覚醒しました。今からでも遅くない! 俺と冒険の旅に出よう~
第10話 もうひとつの死亡フラグを回避する
第10話 もうひとつの死亡フラグを回避する
オレは顔を上げてユウキの手を握った。
「オレのパートナーになってくれ!」
「ええっ!? そ、それって……」
ユウキの顔が紅くなる。
過ちに気がつき、オレは慌てて手を離した。
「あっ! 違うぞ。これからも一緒に冒険をしようって話だ」
「あ、そういう……」
「正直、オレはまだ戸惑っている。自分の置かれた状況も。ユウキのことも。けど、だからこそ一緒の時間を過ごして理解を深めたいんだ」
魔女とか言われてもピンとこない。
昨晩のお楽しみも覚えてはいるが、どこか他人事みたいで実感が湧かない。
まるで誰かに記憶を植え付けられたかのようだ。
だが、理解できないから気持ち悪いからと突き放したら今までのオレと同じだ。
「前世のオレはユウキを見棄てた。その結果、誰も幸せにならなかった……」
オレは首を横に振り、改めてユウキの手を握った。
「今度はこの手を離さない。ずっとひとりぼっちで寂しかったよな。オレでよければそばにいる」
「ロイス……」
「魔女だろうが関係ない。オレたちはずっメン(ずっとパーティーメンバー)だ★」
「ありがとう。出会えたのがキミで本当によかった……」
「泣くなって。そういうのは苦手なんだ」
オレは苦笑を浮かべて、ハンカチをユウキに渡した。
重い話は抜きにしてユウキのために生きるのも悪くない。
「これからたくさんユウキを笑わせるからな。一緒に世界を見て回ろう!」
「うん!」
◇◇◇◇
女の子は朝の支度が長い。
オレは先に下の階に降りて、窓際の席で朝食を取ることにした。
「ふぅ……」
今朝の食事は、大麦を羊乳でふやかしたお粥だった。
栄養を取れるが味が最悪なので、テンションが下がる。
だが、昨晩の流れを踏まえると多少はテンションを下げた方がいいだろう。
実際、大麦粥のおかげでだいぶ気分が落ち着いてきた。
「お疲れね、リーダー」
「メイメイ……?」
「眉間にしわを寄せちゃって。イケメンが台無しじゃない」
テーブルでため息をついていると、パーティーメンバーのメイメイが声をかけてきた。
ハイソーサラーであるメイメイは、いつも通りの三角帽子と露出の激しいローブを身につけている。
「昨日はどうしたの? 探したのに酒場にいないんだもの。おかげで一人寂しく飲んでたわ」
「すまないな。少し用事があって」
「ふ~ん? まあいいか」
メイメイは二本のエールを両手に持ちながら、紫色の長髪と豊満な胸を揺らして隣の席に腰掛けた。
人懐っこくて甘い笑みを浮かべながら、オレの前に酒を差し出した。
「これはアタシちゃんの奢り」
「いいのか?」
「もちろん。嫌なことはお酒を飲んで忘れましょ?」
「朝からエールとか。相変わらず酒が好きなんだな」
「酒は百薬の長よん。飲んでこその人生。アタシちゃんが冒険者やってるのもお酒のためだしね」
そう言ってメイメイは妖艶に微笑んだ。泣きぼくろが実に色っぽい。
この光景には見覚えがある。
シチュエーションに差異はあるが、この後……。
「それとも、いつもみたいに優しく抱きしめましょうか?」
「実に魅力的なお誘いだ……」
オレはエールには口を付けず、首を横に振った。
「だが断る!」
「ええええっ!? どうしてどうして? いつも乗り気だったじゃない」
まさかの対応だったのだろう。メイメイは大きく目を開いて驚いた。
「ふと思い立ってな。これからはユウキの育成に力を入れたいんだ」
「へ……? パーティーから追い出したんじゃないの?」
「やめた。オレはユウキと冒険を続けることにした。だから他のことに時間を費やす暇はない」
「なにそれ! アタシちゃんと過ごす時間は無駄だと言いたいわけ!?」
「その逆だ。メイメイ、キミと一緒にいるとオレは冒険者であることを忘れてしまう。いつまでも甘い夢に浸っていたくなる」
「やだ♪ そんなにアタシちゃんのこと気に入ってくれてたの~? だったらいいじゃん。もっとこの胸に溺れちゃえよ~。ほれほれ♪」
メイメイはオレの腕を取ると、その豊満な乳房で挟み込んできた。
腕を包むスライムみたいな柔らかな感触に、オレは一瞬だけ天国を垣間見た。
そこでふと思い浮かんだのは、オレを信じて目を輝かすユウキの姿だった。
「ダメだ。ユウキと約束したからな。一緒に世界を見て回ろうって」
「ふ~ん? そっかそっか。なるほどね」
オレが再度首を横に振ると、メイメイはつまらなさそうに眉をひそめた。
「ユウキちゃんとシタの?」
「はっ!? な、何の話だっ!?」
「いいのいいの。わかってる。男はみんな、ああいう陰のある女の子に弱いから」
「ユウキが女だと気づいていたのか?」
「あれで男装してるつもりなんて笑っちゃうわ。見抜けなかったロイスくんの目もかなりの節穴だけどね」
「うっ……」
返す言葉がない。ユウキの性別だけではない。
隠されていた力を見抜けずに追放しようとしたんだ。節穴と言われて当然だ。
「ロイスくんの気持ちはわかったわ。けど、アタシちゃんにも女としてのプライドがあるから」
メイメイは手の平を上向きにして差し出してきた。
「契約はここまで。今月分のお友達料くださいな♪」
「わかった。魔法使いのヘルプは他を当たるよ」
オレは懐から金貨の詰まった小袋を取り出して、メイメイの手の平にのせた。
メイメイは金貨の枚数を数えると小袋を胸の谷間にしまいこんだ。
「まいどあり~♪ またのご利用をお待ちしてま~す♪」
メイメイは軽い口調で礼を述べるとテーブルから立ち上がる。
「もう行くのか?」
「アタシちゃんは売れっ子なの。フリーランスの冒険者は仕事を回してナンボだから」
メイメイは金で動くフリーの冒険者だ。
月極契約でオレのパーティーに力を貸してくれていた。
オレと夜を共にしていたのも金が目当てだったんだろう。
「またどこかのダンジョンで会いましょう。そのときは商売敵になってるかもしれないけどねん」
メイメイは笑顔でヒラヒラと手を振ると、そのまま酒場を後にした。
去り際は実にあっさりとしたものだった。
(これでよかったんだよな……)
パーティーの解散理由、その第1位は痴情のもつれだと言われている。
前世のオレはメイメイに骨抜きにされた。
ユウキを追放したことで高難易度のクエストを受けられるようになり羽振りがよくなった。その金をメイメイにつぎ込んでしまったのだ。
結果、オレの行動に呆れたパーティーメンバーが離脱。
【魔竜の洞窟】に挑む頃には、戦力は半減していた。
もしも暴走したユウキに勝ったとしても、奥にいるドラゴンに敗れていただろう。
(これで死亡フラグその2は回避できたはずだ)
オレはメイメイとのエロエロなルート(結末はバッドエンド)を捨て、ユウキを選んだ。これはそういう話だ。
魔法使いが抜けたのは痛手だが、ユウキがいれば戦力を補強できるだろう。
(ユウキはまだ下りてこないのか……?)
様子を窺おうとして後ろを振り向くと――
「じと~……」
「うわっ!? ユウキ、いつからそこに!?」
柱の陰に隠れていたユウキが、鋭い視線をオレに向けていた。
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