第10話 白いヒグマ

俺達はそのままコルンの部屋へと入った。

一時するとコルンの父、国王が入ってくる。

ファルツやバローロとあいさつを交わし、俺の所へ、

「君がアスティ君か。話は聞いているよ、本当に綺麗なんだな!

 いやいや、本当に美しい!」と俺の手を握る。


「イタリアンヌ商会も繁盛しているみたいだし将来が

 楽しみだな」とも。

「いえいえ、コルン王子の許嫁でもあるキアンティ様の

 所、カンパーニア商会と比べれば全然ですよ」と俺は答える。


「そのことなんだがなぁ」と少し含む国王。

「助けてやってくれないか、コルンを」とも。


国王が出て行き、俺達は許嫁の話となる。

どんな人なんですかね、とファルツが言うので

「やっぱ金髪縦ロールだろ?」と俺。の願望。

「いや、ストレートロングだろう、紫の」とバローロ。

「アスティの様なショートで、アスティの様な顔立ちで

 アスティの様な瞳がいいな」とコルン。


一時して俺達は呼ばれ広間へと移動した。

扉を開けると既に国王と王女、そして多分カンパーニア家の

人達。


「あれはなんだ」とバローロ。

「うを!」と思わず俺。


そこには白い熊。ヒグマなんじゃないかというほどの熊。

「し、白いヒグマなんて初めて見たぞ。すごいな、あんなの

 ペットにするなんてやっぱすごいんだな、カンパーニア商会って」

と驚きながらじろじろと見てしまった。


「揃ったな、皆のモノ。紹介しよう。コルンの許嫁となる

 キアンティ嬢だ」と国王。

俺達は全員、扉へと目を向ける。・・・向ける。

が、一向に入ってこない。


「初めまして、キアンティです。」と声がしたのでそっちを

振り向くと、そこに居たのは。白いヒグマ。

全員が唖然としていたので

「コルン、大丈夫だ。俺がぶっ殺してくる」と俺。

「た、たのむ、いや!だめだ!」とコルンが俺を止める。


「コルン!アレはだめだ!人ならまだいいが、熊だぞ!

 あげくに喋る熊だ。」と言う俺をコルンとバローロが止めている。

ファルツは立ったまま気絶している。


つい興奮してしまったが俺達がペットと思っていたヒグマが

コルンの許嫁となるキアンティ。ヒグマに見えるだけで、よく見ると

人間かもしれないので、よく見る事にしたが。それでもヒグマだった。

「おまえどうするんだ?これ」とコルンに聞いてみたが。

「どうもこうも。なにかの冗談だろ」とコルン。


近づいてくる白い熊。俺達は固唾をのむ。

ゆっくりと近づいてくる。


「ディフェーサ・プロテクト!」


いかん!つい危険と思い俺は防御魔法を唱えてしまった!

が!その白い熊は防御壁をものともせずに入り込んでくる!

「に、にんげんなのか!やっぱり!」と言っちゃう俺。

ヒグマの手がコルンへと延びる。

俺はその腕を「たたっ切ってやる!」と思ったがバローロが

止めてくれた・・・。


「後でお話がございます。お部屋へ伺いますね」と

笑顔なのか何なのかわからない顔でヒグマは言う。


ってか、ここに居る全員。何とも思っていないのかっ!


コルンとヒグマ・・。いやキアンティ嬢は壇上へと上がる。

腕を組んでいるが、どうみても餌を捕まえたヒグマにしか見えない。


「俺がコルンだったら発狂しているな」とバローロに言うと

「普通はそうだろう。流石王家と言うべきか、コルンって

 やっぱすごいですね」とバローロ。


「多分、あれ。気絶してますよ?コルン王子」とファルツ。

どうやら意識は戻ったようだ。ファルツは。


その後俺達はコルンの部屋と先に戻った。王家とカンパーニア家との

食事があるらしい。「食われるのか、コルン」と思っちゃったりした。


一時してコルンが部屋へ戻ってきた。

「すごいんだぜ・・・・あの熊。普通にフォークとナイフ使うんだ」

そのコルンの一言に「そ、そうか」としか言えなかった。


沈黙が流れる。


コルンが涙する。


「泣くな!コルン!頼むから泣かないでくれ!」と俺達は

そう言うのが精いっぱいだった。


そしてドアをノックする音。

「よろしいでしょうか、コルン様」との声も聞こえる。

「ひぃいいいいいい!」とコルンの絶叫。

ファルツが精神魔法を掛ける!「おちついて!コルン!」と!


キアンティと言う人間の名前のヒグマを招き入れる俺。

俺達は机を囲み座る。

笑顔が素敵なヒグマさん。因みに白い。


「驚かないんですね、この姿を見て」とキアンティ。

十分驚いていますよ、殺すつもりだったし。とは言えなかった。


「あ、そうか。ミラージュの魔法ですね。幻惑の。」と

ファルツが言うとヒグマ、いやキアンティ嬢は首を振る。

因みに首がどこからどこまではわからない。

頭を横に振るに変更。


「そうか!呪いか!」とバローロ。

キアンティ嬢は頭を横に振る。


「これ着ぐるみなんですよ」とキアンティ嬢。

「よくできてるじゃねえか!本物にしかみえないぞ!」と俺。


「ほっとした!まじでほっとした!」と泣きながらコルン。


因みになんでそんな着ぐるみを?と聞いちゃう俺。

するとキアンティ嬢は

コルン様には悪いですが私は許嫁になりたくなくて。

こんな格好していたらダメになっちゃうと思って。

「普通はダメになるな」と俺。


なんで許嫁になりたくないの?と聞くとそのヒグマは。


「私、男性を愛せないんです。女性が好きなんです。

 女性なのに女性が好きなんです。」



・・・だそうだ。














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る