第4話 野営で飯を食う
「ところで後二人は?」と歩きながら
コルンに聞く俺。
「あぁ、馬車の所で待ってるよ」と言いながら
何故か、距離が近い。
「肩あたってるぞ?」と言うと
「す、すまん。つい。」と少し下を向きながらも
「お前さ」と質問をしてきた。
な、なぁ。彼氏・・・じゃなかった。彼女とか
いるのか?
「いるわけねぇだろう。見てわからんのか。
というか、今、彼氏って言っただろう。
いいかげんさ?止めてくれよ。」と呆れる俺。
そ、そうか。それならいいんだが。
「何がいいんだよ。そう言うお前はどうなんだよ。」
と俺は少しニヤニヤしながら聞いてみた。
なんかさぁ。親父が勝手に選んできたんだよ。許嫁。
会った事もねえのに婚約だよ。
「た、大変だな。王子も」そう言いながらも俺は
王子ってやっぱそんなもんなんだな。と思ってしまう。
あぁ、だからか。突然彼女の事聞いてきたのは。
「おーい。こっちだ。」と遠くに手を振る二人。
「あれ?バローロ君じゃね?」と俺は少し
驚きながら王子に聞くと
「お前が行くって聞いたらぜひ行きたいって。
なんだ、知ってたのか?」と王子。
「知るも知らないも今年の剣術大会の決勝で
俺と戦ったじゃねえか。あ、去年もか。
あいつ強いしなぁ」と少し駆け足でそいつの所に
向かった俺達。
「バローロ君だよね?決勝で当たった。
王子と友達だったの?」と聞くと
「こうやって話すのは初めてですね、よろしく。
アスティ君」と丁寧にあいさつをしてきたので
俺は右手を差し出し、そして握手をした。
その後ろになにかモゾモゾとしているもう一人。
「あれ?君はファルツ君だよね?魔法大会の
決勝で当たった」と俺が聞くと
「な、名前を憶えていてくれて光栄です!
決勝ではコテンパンにというか、一方的に
やられたファルツです!」と右手を差し出してきたので
俺もその手を握り返す。
「いやいや、偶然だよ。開始の一手勝負だったしね」
実際は確かに一方的だったのだが。俺も世渡りが
上手くなったのかもしれない、お世辞とか。
「話は馬車でしようか」と王子が言ってきたので
俺達は馬車へと向かうが・・・。
「いいな!これ!冒険って感じで!もしかしたら
王室御用達の馬車じゃないかなって心配したよ」
と俺は荷馬車、それも少し年季が入ってる幌を見て
感動した。
最初はファルツ君が御者をする事となり
俺達残りは荷台に乗り込んだ。
「あ、あの。君付けはやめてください。」と
少し照れながらファルツが言ったので
「じゃあ、そうするよ。あ、俺の事も
アスティって呼び捨てでいいよ」と言っちゃうと
「い、いいんですか!?」と何故か二人は喜んでくれた。
こいつら友達居ないんじゃないか?と言うほどに。
どうやら俺は近寄りがたい何かがあるらしく。
声を掛けようにも掛けられない存在だったらしい。
「俺、そんなに怖い?」とコルンに聞くと笑いながら
「近寄りがたいってのはあるが、怖いは無いな。
もう色気のオーラが凄いってのはあるが」と王子。
「そうですね、決勝で剣を向けた時も
闘気と言うより色気が凄かったですよ」とバローロ。
「色気かよ!」俺の闘気はどうやら色気に見えるらしい。
2時間ほどたったので俺はファルツの所に行き
「御者替わろうか?」と肩に手を置き声を掛けた。
「ひゃあ」と声を出しながら慌てるファルツ。
「す、すまん。驚かしたかな」と俺は焦った。
「そ、そう言う事ではなくて」とファルツ。
「じゃあ昼飯にするか」と王子の提案で俺達は
馬車を止め、昼飯の準備をする。
俺は前世でアウトドアが好きだったのでテキパキと
準備をする。勿論、俺んちの商会で扱っている道具だ。
俺が考案した道具も結構ある。というか前世での
パクリ商品だったが・・・。
ファルツがじっと俺の行動を眺めて「ほおおお」と
声を上げている。
「やっぱさ、冒険者になるにはこういうの。
出来て当たり前だと思うんだ」と俺は竈やら
ターフを準備しながら言うと。
「ま、まじで冒険者になるんだな」とコルン。
「噂は本当だったんですか!?」と驚くファルツ。
「獲ってきた、フランゴだ。茂みに居た」と
バローロがフランゴの首を持ってぶらぶらさせている。
「お!いいね。調理しよう。」俺はそう言うと
毛をむしる。兎に角むしる。
フランゴというのはニワトリの様な、と言うより
ほぼニワトリだ。
「見てないで手伝え、コルン。」と言うと
「ぼ、僕にさせてください!」とファルツが言ってきた。
なれてない手つきで毛をむしるファルツ。
「あれ?うまくできないな」と焦っていたので
「初めてなら仕方ないよ。教えるから」と
俺はファルツと一緒に毛をむしる。
「こうやって掴んで、こう」とやってみるが
ファルツはうまくできない。
俺はファルツの手に俺の手を添えて
「こうやってここをグイっとするんだよ」
この時、気が付かないほどに俺は
すこしファルツにもたれ掛かっていたらしい。
「こうやって、こう。そうそう。
うまいうまい。もっと早く。いいね
早く強く、そしてやわらかく。」と
俺は優しく言ったつもりが
「す、すみません。耳元でそう囁かれると
な、なんか。アレです」とファルツ。
俺はハッとして「すまん!」と言いながら
体を放した。
だよな、今日話したばかりの相手が密着するほどの
距離はやっぱ嫌だしなぁ、失敗した。と俺は思う。
「すまんが!俺にも教えてくれ!」とコルン。
「わ、私にも教えてくれないだろうか!
・・・だろうか!」とバローロ。
なんだこいつら。調理に目覚めたのか?
次回 第5話 鶏皮と皮の話
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