15話目 雨男
僕は生まれた頃からずっと、どうしようもないくらい雨男だった。
遠足に行くぞと言えば雨が降り、体育祭だと言えば雨が降り、デートだと言えば雨が降る……。根拠はあるのかと言われれば無いが、偶然で済ませようがない程野外で行われる僕の人生の重要行事の日にちに限って雨が降り、屋内に入ったと思えば降り止んだ。
お陰で僕は体育祭を生まれてから一度も経験したことがなく、僕の学年で唯一体育祭が開催された日には風邪で寝込んでいた始末。その日は焦げ付く程の快晴だったらしい。雨男晴れ男の観念すら超えて僕にそういった超能力がなければ説明がつかない程、僕の屋外人生には雨が付き纏って周った。いや、ただそれだけならまだ良かった。……それだけならまだ良かった、と言わせてしまう僕の力も大概だが、どうやらその雨の強さは僕が行われる行事に対してどれだけの熱量を持っているかに比例してどんどん強さを増すらしい。例えば入学してから二年間片思いし続けた先輩が卒業してしまうので先輩の卒業式に想いをぶつけよう‼︎と意気込んで迎えた当日、一歩も外を出て歩けないような横殴りの豪雨が降り注いで卒業式はやむなく延期。
それを受けて流石に僕も告白は諦めようと思った。延期された日にまた告白しようと僕がイベントを立ててしまったら雨が降ってまた中止になる。あまりにもいたたまれない。
僕はそんな風な、絶大な力を持った雨男なのである……さて。
ここに死体がある。
人を殺してしまった時のベターオブベターと言えば山の中に埋める、とかいう隠し方だと思うのだが、僕がそう考えた瞬間外で豪雨が打ち付けテレビの箱の中ではひっきりなしに警報音と増水した川の映像が流され始めた。
最近乗り換えた安いで話題の回線がもう機能していない。
「だからちゃんと屋外に隠す以外の方法で僕が納得しないと多分これから日本沈没するんだけど一緒に考えてくんない?」
「十分時間をくれ」
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