第2話 フユウ霊
「こちらのお部屋はいかがでしょうか?」
「ここには何が出るんですか?」
俺は予めそう訊ねる。最初から知っていれば心構えが出来るし、なんとか対処も可能かもしれない。
「はい。こちらにはフユウ霊が……」
吉沢さんは少し表情を曇らせながら言う。
浮遊霊か……その辺をフワフワされるだけなら害はなさそうだ。無視すればいい。
そう考え、俺はこの部屋で一晩を明かすことに決めた。
何事もなく夜は更けていき、俺は昨日の睡眠不足からぐっすりと寝入っていた。
ジャンジャンジャン! ジャジャンジャン!
そこへけたたましい音楽が聞こえてくる。それはテレビ番組で観た昔のディスコの様な……。
「な!? なんだ!?」
あまりのうるささに飛び起きれば、部屋の中を色とりどりの光が舞っていた。これもまたディスコで見たことがある。
そして部屋の中央、テーブルの上で若い女性が踊り狂っていた。
身に着けているのは、ボディラインを強調する身体にフィットした派手な衣装だ。長い髪を振り乱し、手にした扇をクルクルと回している。
「うるさい! やめろ!」
俺はその女の幽霊に怒鳴りつけるが、踊りに夢中なのかこちらの声が届いた様子はない。
「こ、これ……一晩続くのか」
俺はげっそりとしながらそう呟くのだった。
◆
翌朝、俺は再び分有不動産を訪れた。
「吉沢さん、あの部屋に出る幽霊ってなに?」
「彼女は1980年代のイケイケギャルでございます。当時の日本はバブル景気に沸いていたそうです」
「浮遊してないじゃん?」
俺の疑問に彼女はこう答えるのだった。
「ですから、
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