15話目 位は飾り

「フェリデンスって…あの!?」



目を丸くし、パクパクと口を動かすリュミリスに対し、フェリデンスは微笑む。

先程男性の修道士が慌てて自身の口を抑えたことに対し、

リュミリスは納得がいった。なぜなら―――


「フェリデンスってアレだろ、すっげぇ偉い奴だろ!?!?!」

「偉いなんてそんな」


フェリデンスという名は、メシア教の信者であれば誰でも知っている。

信仰してはいないものの教会に住み、しかも母親がこの国の出身とあって、

リュミリス自身も何度か耳にした。


フェリデンスとはメシア教で二番目に偉い位…つまり大司教だ。メシア教では

一番偉い位は女神であるとされているため、実質、人間の中では一番偉い位である。


「女神より偉い人物なんていませんよ、位というのは飾り、持っているからと言って偉いとは限りませんよ?」

「いや、でも、その…」


しどろもどろになるリュミリスに微笑みながら、フェリデンスは話をする。


「貴方の御親友の話ですが、傭兵さんや部下達が現在必死に居場所を突き止めています。御親友が何故攫さらわれたかに関しては未だ不明ですが…」

「そう、か…」


しょん、と肩を落とすリュミリスに、

フェリデンスは「気を落とさないで」と呟いた。


「貴方の御親友は我々が必ず助け出します。だから貴方は安心して、教会で待っていて下さい」


ねっ、と言うフェリデンスをリュミリスはじっと見つめる。

しばらくの後、やがて口を開いた。


「一つ、我儘を言ってもいい?」






★★★






「レンもうやめてよ、死んじゃうよぉ…」


武器だけがかかる石壁の部屋で、少年の泣きそうな声が響いた。

少年の目に映る目の前の青年は、途切れ途切れに息を吐く。


「いや…まだだ、じゃないと君が、逆に死んでしまう……!」


蓮はゼェゼェと息を吐きながら、手を伸ばす。そして中に火が浮かぶ。

傍らに置かれた魔法書に書かれている魔法の度をあげなければ、

ラフノアの小さな首は瞬く間に締まるだろう。


「オリヴィスから聞いたことがあるんだ、火を浮かばせるのは十分難しい、出来てるんだよ!だからもうやめて、休んで……!」


段々と涙をためていくラフノアを見ながら、レンは悲しそうに首を振った。

ルークの求める魔法は想像以上に高く、魔法のない世界で育った、

思いっきりの素人である蓮ですら、その難易度は一目瞭然で。


「(魔力が大きいのか、この魔法を使っても魔力切れがおきない…喜べばいいのか、複雑だなぁ)」


そんなことをぼんやり思いながら、火を見つめる。ラフノアはレンを止められないか

と両手を首から引こうとするものの、ルークにかけられた精神魔法は解けず。

いくら力を込めてもその努力は無駄に終わった。


「レン…」


再び火を浮かせる蓮を見ながら、ラフノアは悲しそうに呟いた。






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

来週~2月の下旬まで多忙のため更新がゆっくりになります。

(しばらく更新していなかったのも少し忙しかったので…)

多分忙しいのは春あたりまで続くので、更新が途絶えたら多忙だと思ってください。


「蓮が助けられるのはあと5話以内…であればいいなぁ」と思っているので、

更新を待って下さるととても嬉しいです。



ところで皆さん、好きな言葉はありますか?

四字熟語でも名言でも、物語の台詞でも。

私が一番好きなのは


「あなたが生まれたとき、周りの人は笑って、あなたは泣いていたでしょう。だからあなたが死ぬときは、あなたが笑って、周りの人が泣くような人生をおくりなさい。」


まぁなんでこんな話をするのかというと、話の続きがないので(笑)

本編はここで区切る!と決めてしまった以上残った500文字をどうしようかと…

(基本話は1800文字で区切るよう頑張っています)



文字埋めがてら多分本編に出さないであろう蓮の家族構成をば。

母親は病気で他界、父親はクズ。

母親の妹である叔母は姉の死後交通事故で亡くなりました。


母親の方は祖父母がまだ生きていますが北海道に居る。

しかし父親が蓮と対面させるのを許さず会えていません。


父親の方は両親共に寿命で他界済み、兄は人身事故、弟は海外。

(裏設定ですが、兄は父親が事故に見せかけて殺しました。理由は嫉妬。

なんでも出来るお兄さんだったのです。)


もしかしたら弟は番外編として出るかも(蓮が居なくなったその後みたいな。

この物語で最終手系に蓮君が元の世界に戻る結末というのはありません。

そういう終わり方にするつもり一切ないです。)

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