14話目 アイパラス革命

「リュミリス、リュミリス大変よ!!!!!」



自室でボーッと空間に舞う埃を一つ二つ数えていたリュミリスの元へ、慌ただしく

幼い女の子が駆け寄る。バンッ!と勢い任せて開かれた扉と大声、そして唐突な

人物の登場にリュミリスは目をぱちくりとさせそちらを見た。


「な…なんだよ急に」

「いいから早く!大ニュースなの!!!」

「それ蓮に関すること?」

「ちがうと言えばちがうかも…」

「オレは寝る、じゃあな」

「まってぇ――――」


グッグッと自身の腕を引っ張る女の子を容易くのけ、すたこらとベッドへ行こうと

するリュミリスを、慌てて女の子が引き留める。


「かんけーあるかわからないけど、もしかしたらあるかも…!」

「どっちだよ」


とにかく息を切らして走って来た女の子に肩をすくめ、

息を一つ吐いて仕方なく着いていくことにした。


「!リュミリス、ちょうどいいところに…!」


女の子に手を引かれ連れて行かれた先は教会の前。そこには見慣れた顔ぶれの

修道士が大勢、その中にはもちろんパテピルスも居た。

何より目を惹くのは、パテピルスの前。


「貴方がリュミリス様でしょうか?」


白に白金があしらわれたパテピルスの服よりも、いっそう目立つ純白の衣。

それを纏いパテピルスと話していたのはパテピルスよりも幾分若い青年だった。


「…アンタだrムグッ」


問おうとしたところで近くにいた修道士に口を塞がれる。


「ムグググ…ぷは、ちょっと何すんの、男に口塞がれる趣味はないんですけど!?」

「でもお前今絶対不躾ぶしつけなこと言おうとしただろ!」

「え…普通に"アンタ誰"って言おうとしただけd「それが大問題なんだよ!」」


ギャーギャーと言い合う二人にやれやれと軽く息を吐きだしたパテピルスが、

リュミリスを青年の前へと連れて行かせる。


「おっしゃる通り、この子がリュミリスでございます。」

「……そのようですね、間違いありません」


連れて来させられたリュミリスをジッと見た後、青年はゆっくり頷いた。


「今日は貴方にお話があって来たのです。」

「それは…「もちろん」」


貴方の御親友に関わるお話ですよ






★★★






「…さて」


パテピルスにより教会へ案内された青年は、現在リュミリスと"祈りの間"にいた。

祈りの間にはこの世界を創ったとされる女神様の大理石で出来た像の前に、


木造の大きな講堂机、そしてそこから門まで真っ直ぐ伸びた赤いレッドカーペットが

特徴的で一際大きな部屋だった。天井近くの壁からは、色とりどりのステンドグラス

を通る陽の光がその部屋を照らす。


ここは毎日修道士や聖職者が神へ祈りを捧げる場。そこに今、二人だけだった。


「…オレはリュミリスだけど…知ってるだろ、さっき言ってた」

「はい。それ以前に、知っていました」

「以前?」


その言葉に、リュミリスは顔をしかめる。しかし青年は微笑んだまま。


「数年前、貴方の住んでいた国に、革命が起きましたね。」

「!」

「アイパラス…それが貴方の国。アイパラス革命の起きた国。」


動揺するリュミリスに、ゆっくりと青年は話す。


「その国の国王も妃も国民によって処刑され、貴族である貴方もその対象でした。その時私の元へ来たのが、貴方の両親です。」

「オレの…?」


その言葉に、青年は静かに頷く。


「貴方の御両親…リリーと、フランシスでしたか。リリーがこの国出身なのはご存じですね?一時期私の側近も務めていました。だからそのつてを使って、私の所まで来たのです。私が家族全員を逃がすことを提案したとき、貴方の御父上…フランシスは首を振りました。」


『オレまで逃がしてもらったら、きっと国民は血眼になって探すだろう。だからオレは戻るよ。オレが死ねば、さすがにリリーもリュミリスも追うことはない』


「貴方の御両親はとても立派な人で、国民に慕われていました。だから探すことはないし、きっと逃がしてくれる…でも、そうでない人も居るのです。過激派、と言いましょうか。善悪に関わらず王族貴族の血は絶つべきと考える者もいる。その者達に応え、代わりに妻と息子を逃がしてもらう。そうして貴方と御母上はこちらまで来た。」


その言葉に何か思い当たる節があったのか、リュミリスは考え込む。


『母さん…どうやって逃げるんだよ?父さんは殺されちまった、一体どう…』

『――大丈夫よ、母さんには"協力者"が居るから。絶対、逃げれる。必ず逃がしてあげるからね』


「……あ!もしかしてオレの母親が言ってた"協力者"って………」

「はい、私です。そういえば名乗っていませんでしたね。――改めまして、私はフェリデンスと言います。」

「………はっ!?!?!?!?」

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