番外編 世界の新年
「新年あけましておめでっと~う!!!!」
エルングランドのある家で、少年の楽しそうな声が聞こえる。その声が綺麗に耳を
通過したところで、新聞を持った青年と傍に居た少女が痛そうに耳を抑えた。
「ラフノア、お前もうちょっとボリュームを下げる努力を…」
「ドリョクってなんだい?」
「……」
すっとぼけた顔をするラフノアに青年は手を頭に当てる。
「ラフノア、努力っていうのが頑張るってことだよ。声が大きすぎると皆耳痛いよ」
「Wow!じゃあオレには必要ないね!」
「あるよ!もう兄弟…」
★★★
「こらリュミリス!!!新年早々ナンパとはどういう了見ですか!!!」
「いや新年早々だからこそやるんd痛い痛い痛い痛い」
相も変わらず新年早々ナンパをし、女性の修道士に耳をつねられる。
キレイに爪が皮を挟んでいるのでとても痛そうだ。
…だからって手助けしないけど。
「リュミリスこれ食べちゃうよ」
「あーオレが楽しみにしてた"
この世界では、どうやら新年に麗しの
見た目はどう見ても石だが、元の世界で言う"岩石チョコ"のようなものだ。
この中には特別な力が秘められており、それを食すことでその年一年その力を
上げるそう。金運や、恋愛運などがその特別な力で、年に一度、どれか一つだけ。
ちなみにどんな力かは食べて、その年一年を過ごさなければわからないそう。運=力
ならばもちろん"幸運""強運"もあるわけで。でもそれは余程のレアだとリュミリスは
言っていた。そんな石だからとても魅力的。だから名前に"麗し"とついている
らしい。
「リュミリスは何がいい?君のことだし恋愛運?「ん~オレもう18だし、そろそろ冒険について考えたいかな。冒険者になるための知識はある程度あるし、資金が欲しいから金運!レンは?」
「僕…僕かぁ」
この世界に来て初めての大晦日、そして年越し、新年。嫌なことが何もなくて、
とても幸せだった。だから幸運や強運でなくていい。
「僕はこの世界の記憶がないから…勉強運かな。いっぱい知って、リュミリスの支えにもなりたいし」
「レン……!」
「しみじみしてるとこ悪いけどリュミリス、食べたなら腕どけてよ、皿下げるわよ」
涙目になっているリュミリスへ、感情を噛みしめさせる時間はないと言わんばかりに
女性の修道士が手を出す。彼女はよくリュミリスにナンパされ、そして折檻している
修道士だ。
「アンタなんか"
判別が大変困難なため、よく混じってしまうらしい。
ちなみにそれをうっかり食べてしまった場合、その年一年はその人にとって
"
それは大体教会に行ってお祈りしてもらったり祓ってもらえば大抵どうにかなるが、
気付かなかったり、ワザとだったりで放置してしまうと、やがて厄災がその年一気に
降り注ぐとか。
「オレ美しいもんね!
そう言いながら机に置かれた
かぶりついた。
ちなみにこの石、見た目に似合わず果実のような食感で、
味は…あまりよろしくない。鉄だったり、銅だったり、金属の味がするらしい。
鉄なら血液とかで味わったことあるからわかるけど、他の金属はもちろん味わっ
たことないし、自分としては食べた時、何とも言えない味がした。
「何も起きないぞどうだ!オレには
それって確かフラグというのでは???
一週間ぐらい後。―――とりあえず、フラグ回収していないことを祈ろう。
「んじゃ、今年もよろしくねレン!!!」
「…うん、明けましておめでとう」
2023.1.1 Happy New Year!!!
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