12話目 証言と特徴
『レンが!?』
泣きながら事情を説明したリュミリスに、パテピルスの顔が強張る。
『なんということでしょう、神聖な場でそんなことが…』
そう呟きながらパテピルスはよろよろと自室の隅へ行く。
そこには白く淡い光を放つ球体があった。
シグマと呼ばれる等級二の星体、その複製品。それは自分と相手の声を
繋げられる物で、蓮の居た世界でいう“電話”だった。
(※シグマは二つの球体があり、二つで一つの星体。
二つあるため声を届けられることが分かった。)
『ええ、はい、はい……そうです、場所は―――』
パテピルスが焦った様子で誰かへ電話をしている間に、リュミリスは目をこすった。
攫われる直前、必死でこちらに手をのばす親友の姿が、目に焼き付いて離れない。
★★★
「まさか教会で…」
「あれだろ、あの黒い髪の……」
「でも聖職者及び修道士の誘拐は重罪と聞いたぞ」
しばらくして教会にやって来たのはヴィトゥナークの首都、
つまり教会本部の衛兵だった。
傭兵は唯一の目撃者であるリュミリスに何度も事情聴取をする。
親友が攫われたというときに同じ質問を繰り返す衛兵の姿は、
確かにイライラとするものだろう。
それを遠目から見ていた他の修道士や聖職者たちがおろおろと動き、
こそこそと話をする。
「ふむ…まさか修道士を狙う輩がいるとは。近年減少傾向にあったために油断しておりました」
やがて衛兵の長であろう者が、部下から伝えられたリュミリスの証言を聞き、
深刻そうに呟く。黒いヒゲを生やした、いかにもイカツい衛兵だった。
「あの方が就任してからはその手腕から次々にその輩は撲滅されていったハズなのですがね」
「修道士および聖職者を攫う者は重罪です、その危険を犯してまで攫うとは……?君、もう一度攫われた子の特徴を教えてくれないか?」
長の横でふと何か思い出したかのように部下がリュミリスに詰め寄る。
赤く目を腫らしたリュミリスは驚いたように目を見開いた後、
自分の親友の特徴を伝えた。
「黒い髪に、黒い目…この国の、そして周辺の国にもない特徴だ……。確かにそれなら狙われるのもわかる。この周辺の国でない、さらに遠くの国の子であれば高くつく……しかし、それでも重罪とは釣り合わないな………」
「ふむ、一度帰って調べるしかあるまい」
首都に戻るぞ、という長の言葉で衛兵たちは次々に教会を出て行く。
「お、おい!どこ行くんだよ!!!???」
それに続いて引き上げようとする長の腕を、慌ててリュミリスが掴んだ。
しかしそれを見た長は優しく微笑み、頭を撫でる。
「案ずるな。一度首都に戻って調べるだけだ。目的がわからなければ場所も分からぬ。心配することはない、絶対に君の親友を助けてみせよう」
そして軽く肩を叩くと、今度こそ長は教会から出て行った。
「は…」
そのことに呆然としていたリュミリスだが、ハッと我に返ると、
「オレは子供じゃねぇ――――――――――!!!!!!!!!!」
「うわ、あの子デカイな~声」
「はっはっは、子供は元気が一番だ」
★★★
「そこの君、資料No.12を取ってくれ」
「この国はどうだ?」
「いや…一致しないな」
ヴィトゥナークの首都、ルークス。その中心にある大きな大聖堂の中で、衛兵たちは
リュミリスの目撃証言と共に居場所の割り出しと、その動機を調べていた。
しかし衛兵には…お世辞にも賢い者が多いとは言えない。そのため衛兵が聞き出した
証言とその特徴を、衛兵だけでなく一部の聖職者も手伝っていた。
考えるのは聖職者、それに基づく資料を運んだり、証言を教えるのが衛兵。
といった具合に上手く役割分担をし、それぞれで探し回っていた。
「失礼します!」
「なんだ、急用以外なら断るぞ」
「いえ、そうではございませぬ、黒い目黒髪、その特徴を持つ国が発見されました!」
「何!?どこだ!!!!」
そういう衛兵達に、伝えに来た別の衛兵は「それが…」と言いよどむ。
「なんだ、はやく言え!!!!」
「あの…見つかったと言えば見つかったのですが……」
もごもごと口を動かしながら、新米であろうまだひょろい体をした衛兵はおずおずと
一枚の紙を差し出した。それを丁寧に聖職者は受け取り、中に目を通した。
「!これは………」
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