3話目 星体
「さぁて、やっぱ世界と言ったら冒険だよね!」
その晩、リュミリスの部屋へ行けばろうそくの明かりだけが灯る中、
ベッドの上でリュミリスがはりきって言った。
「…フランさんは冒険に興味が?」
「リュミリスで良いよリュミリス。んで、やっぱ冒険!冒険と言えばダンジョン、ダンジョンと言えば星体!…あ、星体は分かる?」
「パテピルスさんから教えてもらいました」
「うんうん、なら話は早いよね」
リュミリスは何やら満足そうに頷く。
「星体には等級があってね。等級は細かくわけて六つあるんだ。六級、五級、四級…。これは誰でも扱えるから競売に出されたりしてる。ただ一級以上の物もあるんだ。それが
「次の段階?」
首を傾げると、リュミリスはニヤーッと得意げに笑った。
「そう、それが星座!等級と光座は組み合わせるとそれぞれ一つの物になってね、正座になるんだ。そしてその中には特別な力を持つ48の星体があって。プトレインの星座…だったかな?更にその中の12つ、それが黄道だよ。ただこの黄道だけは組み合わせが分かってなくてね~」
「確かパテピルスさんは、二年前に一人の少女が黄道の一つを見つけたって……。」
そう告げると、リュミリスはビシッと指を立てた。
「そうなんだよ!いや~今でも覚えてるな。毎日毎日どんちゃん騒ぎでさ…皆どんな組み合わせだったとかこぞってその子に聞きたがったんだって。…でも彼女、何て言ったと思う?」
「“教えない”…とか?」
この言葉から察するに、言った言葉はきっと良からぬものだったのだろう。そこから
推測して答えたものの、しかしリュミリスからの回答は「惜しい!」だった。
『教えたら、今まで築き上げられた伝説・幻という概念が消え去ってしまいますよ』
「…って、彼女は答えたらしいよ。結局黄道も見せてくれなかったみたいでさ、彼女の持つ黄道がどんなものだったかを知っているのは一部の人間のみらしいよ」
「黄道には、何か名前でもついているのですか?」
「そりゃね、文献でいっぱい出てるよ?確か彼女は名前だけ公表してくれて…彼女の持つ黄道は“ピスケス”って名前。ピスケスはエルングランドって国の文献に書かれてたんだ。」
“その女王、とても美しく愛に溢れていた。富を運ぶとされる川の岸辺で子と戯れれば100の頭を持つ怪物来たり。女王、川に飛び込み子と縁を結ぶ。その縁は二人を離さず守り続ける。ピスケスの加護あらば、その縁、川すら切り離せはしない。その縁持てばピスケスは手に収まり、美しくも広大な景色が目に舞うだろう”
「ロマンあるよねぇ~」
「詩?っぽくてちょっと…内容が全然つかめないし」
困惑しながらそう言えば、リュミリスは「わかってないなぁ」と頬を膨らませた。
本人曰く、「詩的なのがいい」らしい。
「記憶喪失のお前に聞いてもアレだけどさ、夢とかある?」
「夢?」
「そう夢。…オレ、元は貴族だったんだ、隣のまた隣の国の」
突如、リュミリスがそう話し始めた。
「母親はこの国の人だったけど、父親はそこの国の貴族だった。オレの名前、“ド”が入ってただろ?その国では貴族とか偉いヤツだけが賜るものなんだ。」
「それが…なんで
リュミリスはふっと少しだけ顔を伏せる。
「ちょっと前に革命が起きてさ。王様もお妃様も国民によって処刑されて、オレ達貴族もその対象だったんだ。オレは両親に逃がしてもらって……父親はそこで処刑、母親は一緒に逃げて来たけどその後ストレスでぽっくり逝っちまった」
そして泣き崩れ悲しむところをパテピルス達に誘われたという。
「行くあてが見つかるまで教会で暮らさないか」。ようは蓮と同じだ。
「リュミリス…」
突然の暗い話にどう声をかけようか戸惑っていると、リュミリスはバッと顔をあげた。
「ま、オレ貴族辞められて嬉しいんだけどね!」
「えっ」
「両親が死んだのはもちろん悲しい。二人共良い人で、いつか親孝行したいって思ってた。果たせなかったけど…でも貴族は嫌だったんだ、オレ。服だってきっつきつだし、常に上品な言葉遣いとか……寒気がするね!」
だから、とリュミリスは続ける。
「オレ大人になったらこの教会を出て冒険者になろうと思うんだ!」
「…リュミリスって今何歳?」
「17歳!お前は?」
「じゅ、15歳…」
「マジで!?てっきり12歳ぐらいかと…」
自分は165cmぐらいの身長で、学校ではそれなりに高かった。
…が、目の前にいるリュミリスはもっと高くて。
「身長は?」
「175cm!お前は?」
「ひゃ、165cm…」
「道理で12歳ぐらいに見えるんだよなー!」
越えられない壁だ…
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