クビになったVtuberオタ、ライバル事務所の姉の家政夫に転職し気付けばざまぁ完了~人気爆上がりVtuber達に言い寄られてますがそういうのいいので元気にてぇてぇ配信してください~
149てぇてぇ『十川さなぎってぇ、俺達と同じVtuberなんだってぇ』
149てぇてぇ『十川さなぎってぇ、俺達と同じVtuberなんだってぇ』
「あの時、いっぱいみんなが来てくれて、まどかさんがいて、るいじさんがいて、うれしかった」
あの時。
その言葉に、昔の事を思い出していた俺ははっと意識を戻され、明日の全国ツアー初日のライブ会場を見つめ続けるさなぎちゃんの背中を見る。
さなぎちゃんもファーストソロライブのことを思い出していたのだろうか。
「自分を信じてくれる人がいて、成功だけを目指して肩を並べて……うれしかった。うん、とってもうれしかったんです」
あのあと、さなぎちゃんは見違えるようにとは流石になれなかったけど、演出や音楽、気になることに震えながらも意見を言うようになった。隣にはガガやマリネ、そーだが居て、保護者面してサポートしてたけど。
「学生の頃は、成功とかそういうの、夢を見るのも難しくって……ただただ、見つからないように、獲物がいるって思われないように生きることに必死でとにかく安地探して逃げ回っていて……」
姉さんも、そうだった。俺と違って美人の姉さんは目立つから逃げることもままならなくて、すんとなんでもないような顔してたけど、いつも声は不安でいっぱいだった。ただただ無事を願い乞うように生きていた。
「今日、エゴサしたらいっぱいいっぱい悪口書かれてました。『声と顔のギャップがエグい』とか『ガチでキモいな』とか…………『ファン辞めます』とか……」
世界には悪意が満ちている。
獲物を見つければ集まって、よってたかって、指摘でも何でもないただの悪口を気のすむまでぶつけ続ける。
攻撃する、傷つける、貶める。そして、嗤う。
「でも」
それでも、彼女は此処にいる。彼女の明日の戦場に。
たくさんの心無き理不尽の嵐をぶつけられても、立っている。
「……覚えてますか? 初めてるいじさんと会った時、わたしが初配信で泣いちゃって、そのあとの歓迎会で、るいじさんが話しかけてくれて。いっぱいいっぱいうてめ様の話をして、てめーらだって分かち合って、そして、次の配信に怯える私に言ってくれたじゃないですか『俺を見つけてください』って」
勿論覚えている。
あの時の俯きがちな彼女はどこにいったんだろう。
今の彼女はとても頼もしくて。
「それで、配信ではるいじさんのコメント探していろんなコメント読んで楽しくなって、結局るいじさんのコメントは見つけられなかったけど、るいじさんは『それでいい』って。俺はファンだからって。Vtuberのファンだから、みんなと同じなんだって、だから、Vtuberのファンのコメントが読んでもらえたなら俺も嬉しいって」
透き通った声は今も変わらない。
人を惹きつけてやまないその声。
「わたし、思ったんです。わたしも、みんなだなあって。Vtuberが好きな人なんだなあって」
Vの顔とは違うかもしれないけれど、それでも最高にかわいい笑顔でこっちを振り返る彼女は……。
「だから、わたしには、わたしと同じVtuberが好きな人がいて、Vtuberがもっともっと輝くことを願って、輝かせたいから」
美しい魂で。
「わたしは、だいじょうぶっ! ありがとう、『Vtuberが好きな貴方』。わたしを見てくれて」
真っ直ぐこっちを見てそう言ってくれた。
……おい、聞いてるか。
聞こえてはないか、すまんみんな、俺だけ聞いちゃって。
届いてるか、Vtuber好き共。
俺達の大好きなVtuberは最高にかわいくて最高にかっこよくて。
俺達を見てくれているぞ。
あとは、すまん。
もうはちゃめちゃに泣けてきて、そのあとはよく覚えてない。
だけど、大丈夫。
泣き止んだらまたガチで応援するから。
だって、彼女は俺たちだから。
Vtuberが大好きで、Vtuberに夢を貰って、一緒に頑張る仲間だから。
がんばろうぜ。
大好きなVtuberの為に。
彼女のライブが成功する為に。
そして、十川さなぎのライブが始まる。
『みんなぁあああああああああ! 今日は来てくれてありがとう! 今日も一緒に高く!』
「「「「「「「「「「「『とぶぞぉおおおおおおおおおおお!』」」」」」」」」」」
始まる。
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