クビになったVtuberオタ、ライバル事務所の姉の家政夫に転職し気付けばざまぁ完了~人気爆上がりVtuber達に言い寄られてますがそういうのいいので元気にてぇてぇ配信してください~
141てぇてぇ『禁止ってぇ、どこにでもあるもんなんだってぇ』
141てぇてぇ『禁止ってぇ、どこにでもあるもんなんだってぇ』
【破邪ルカ視点】
「心は、良い子だな」
私の家は、両親が教師だった。
母はやさしかったし、父もルールには厳しかったが五月蠅い人ではなかった。
だから、私は両親を尊敬していたし、両親のような先生になりたかった。
小学校のテストでは大体上位だったし、クラスでも仲のいい子はいっぱいいた。
大好きな先生もいたし、やっぱり先生になりたいなと思った。
中学校でもテストは上位、クラスは別のクラスではいじめがあったらしいけど、私のいるクラスは特に問題なく仲良くいろんな行事を過ごせていた。部活は吹奏楽で、生徒会にも入り沢山の思い出が出来た。
その頃は、ちょっとかっこいい数学の先生に対してみんなきゃーきゃー言ってた。けど、先生が好きと言っても先生が困るだけだしと思って、二次元で恋愛してた。
高校では進学校に入ってそこそこの成績。部活は家庭科部。生徒会には友達に誘われて立候補し、副会長を務めた。
みんなは彼氏を作り始めていて、私も一瞬だけお付き合いをした。けど、相手の男の子がなんかあんまり楽しそうじゃないなと思って結構早くお別れした。正直恋愛シミュレーションの方が気楽でいいなと思ってしまった。
大学には一発合格で楽しい大学生活を送った。合コンに行ってみたい気持ちはあったけど、やっぱり怖くて女子会だけに参加していた。
つまんねー女だ。私は。
特に大きなドラマもなく、面白いエピソードもなく、なんとなく日々を過ごしていた。
小学校の頃のヤンチャな子とも、中学校で大恋愛して大失恋した子とも、高校で生徒会長を務めインターハイでも活躍した子とも、みんなが数えきれないほどの男の人とお付き合いしたと噂している派手なギャルの子とも違う。
普通の子。それが私だった。
特に何か才能があるわけでもないし、変わった性格でもない。
それでも、ずっと先生になりたくて頑張った。
そして、その夢は教育実習で壊れた。
『先生の授業、つまんないね』
教育実習先で言われたその言葉。
付属高校であるそこは生徒も教育実習に慣れているせいか、生徒が実習生を評価してくるなんてことはざらだった。
実習先の指導教員が厳しくて、ふらふらになりながら作った指導案で行った授業で言われたその一言で私は泣いてしまった。
生徒の子もそんなになると思ってなかったのだろう。おろおろして最後にはその子が泣いて謝ってきた。
指導教員の先生は、こんなことで泣くようじゃ先生なんて無理だぞと私を怒鳴った。
私もその通りだと思った。
私は先生を諦めた。
そのことを父に伝えると。
『まあ、先生ってのは大変だからな。お前の進みたい道を進みなさい』
そう言った。
それからしばらくの間、いくつかバイトをしてみたけど、人間関係の板挟みにあったり、大量の仕事を任され体調を崩したりしてやめてしまった。
つまんねー女だ、私は。
Vtuberになったのもすごい理由があるわけじゃない。
なんとなく友達に進められて、Vtuberにはまって、受けてみたら受かってしまっただけだ。
そして、また、挫折している。
目の前のお姉さまは真っすぐに私を見て言った。
『学校が嫌いな奴の気持ちを考えたことあるかね?』
と。
掴まれた肩は痛くないし強くもない。
なのに、身体は震える。
考えたことは、多分、ない。
でも、それは、一緒だと思う。
だから、私の口は動いてた。
「じゃ、じゃあおもしれー人は、つまんねー人の事を考えたことあるんですか? ど、どんなに頑張ってもおもしれーになれない女の事を」
そうだ、おもしれー人には分かんない。おもしろく出来ない人間のことを。
ああ、涙が零れる。
私は本当に泣き虫だ。
それでも、ここで引きたくなかったからふんばると、お姉さまは私を見上げながら、
「そんな奴いるかー! 自分で自分を決めつけて、自分の人生つまんなくしてんじゃねーよ! そんなこと言うならなあ! このツノさまがあんたのこれから、面白おかしくしてやるよ!」
そう、叫んだ。
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