138てぇてぇ『禁止ってぇ、逆効果な時もあるんだってぇ』

『……ということなのよ。これが大化の改新!』

〈ほえ~〉

〈なるほど〉

〈ルカさんの声だと頭に入ってくるわ~〉



破邪ルカ。ワルプルギス学園の風紀委員長で、他のワルメンにはない『一緒にお勉強配信』なんかをするVtuberだ。



『ふふ、ありがとう。また君と一緒にお勉強したいな』

〈俺もー!〉

〈こんな学生時代を過ごしたかった……〉

〈次は保健体育をw〉


『ばっ……か! いかがわしい! いかがわしいのはない! 風紀委員長として認めないからね! いかがわしい禁止! ちゃんとお勉強します!』

〈は~い〉

〈いいんちょ、厳しいねえ〉

〈真面目だからwww〉



そして、とても真面目。ゲーム配信なんかもするが、あまり長時間にはならない。雑談配信は視聴者の悩み事を聴いて真面目に考え答える。

そんな破邪ルカさんの魂は……。


「ツノお姉さま! るいじさんを困らせてはいけません! あと、なんですかその恰好! いかがわしい! ぱ、パンツも見えそうじゃないですか!」

「見せてんのよ」

「見せないでください!」

「アンタにじゃない! ルイジによ!」

「余計見せるなー! いかがわしい!」


魂もとっても真面目。

俺の右隣でわーわーやっている。ルカさんがワルハウスにやってきて3日目だがもう慣れた。ちなみに、左隣で姉は静かに俺に寄り添っている。恐らく10分は過ぎているが、右側の騒動でよく分かんなくなったし、アレが落ち着くまでくっついていられると思っているのだろう。


「ちょっとお二人落ち着いてください」

「無理! ツノさんはムラムラがデフォだから!」

「ムラムラ禁止!」

「じゃあ、はぁはぁ!」

「はぁはぁも禁止ー!」


とっても元気。ワルプルギス学園のシステム、姉妹制度で組まれた姉妹の中でも最も元気なこのコンビ。うてめ様とえぺらがかなり落ち着いた雰囲気だったので高低差で耳キーンとなりそうだ。


「それよりアンタは準備大変なんでしょ。こんなところで禁止禁止いうてないで、準備したら~? それとも、ルイジと添い寝する~?」


勝手に提案せんといてもろて。


「~~~! しません! ですが、ちょっとるいじさんにもご意見いただきたいのでここで色々やらせてください! パソコン持ってきます!」


そういってルカさんは下へ駆け下りていく。


「真面目だねぇ~」


ツノさんはそんなルカさんの様子を見ながら片頬あげて笑う。

ちょっと呆れ気味な様子に俺は苦笑いを浮かべる。


「ルカさんと、うまくやれてますか?」

「いや~! どうなんだろ、あの子、クソ真面目だからさあ! ツノとは正反対じゃない?」


ルカさんは本当にクソ真面目だ。

面接時から彼女はとにかくクソ真面目だった。


「だって、あの子元々はセンセイになりたかったんでしょ?」


そう、元々教師志望だったルカさんだが、Vtuberになって勉強を教えたり子供を導くことが出来ないかと考えて、ワルプルギスに応募したらしい。一際ぴっちりした格好と受け答えで面接にのぞんでいた姿はよく覚えている。


「ツノ、センセイってきらいだからな~」


少し悲しそうな表情で俯くツノさん。


「ツノさん……そんなこと言いながら俺の指を謎に咥えようとするのやめてもろて」

「いいじゃん! 減るもんじゃあるまいし! ちょっと今ツノさんバブリーモードだから、おしゃぶりが欲しいのよ! ばぶばぶ!」

「ばぶばぶじゃねー! バブリーってそういう意味じゃねーから!」



ツノさんが俺の指を口に咥えようと強引に引っ張っていく!

流石に俺の方が腕力があり持っていかれることはないがこの人は本当にもう!

そして、逆方向!


「ツノさんにならわないで! 姉さん!」

「ばぶ?」

「急に赤ちゃんになって分からないフリするなー!」

「うてめもボクもゆびハムしたいのだ!」

「とっとこやめてもろて! ゆびハム禁止! 禁止!」

「はぁはぁ……ル、ルイジに禁止って言われるとやりたくなるのがツノのさが……!」

「そして、うてめのさが」

「なんでやねん! もぉおおおおおおおおお!」

「あ」

「「「あ」」」


俺の指を守るべく暴れていると、ルカさんが二階にパソコンを抱えて戻ってくる。

そして、俺達を見るや否や。


「い、い、いかがわしー! いかがわしい禁止ぃいいいい! ……あ、はなひ」


鼻血を出してゆっくりと崩れ落ちていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る