クビになったVtuberオタ、ライバル事務所の姉の家政夫に転職し気付けばざまぁ完了~人気爆上がりVtuber達に言い寄られてますがそういうのいいので元気にてぇてぇ配信してください~
137てぇてぇ『禁止ってぇ、しちゃいけないことなんだってぇ』
137てぇてぇ『禁止ってぇ、しちゃいけないことなんだってぇ』
『んあ~! え! く! す! た! すぃ~~~! かあ!』
画面の向こうでツノ様がどエロい声でパズルゲームで連鎖を起こし叫んでいる。
最近、企画の進行続きでお疲れだったツノさんだったので、久しぶりのツノ様背徳ラーメン定食を用意し、ツノさんの大好きな香りのするバスボムやらなにやらを詰め込んだツノ様ケア用フルセットをプレゼントしたがかなり元気になったようだ。
俺は画面の向こうの彼女を見ながらほっとする。
「ツノ、ゲンキニ、ナッテ、ヨカッタネ」
俺は画面のこっち側、隣の姉の声を聞きながらぞっとする。
片言やんけ。
口の端だけ頑張ってちょっぴり上げて笑っている姉さんだが目が笑っていない。
最近姉さんも忙しいというのもあるし、お試し期間が終わったえぺらがワルハウスから出て行って寂しいというのもあるだろうし、なんだけど、まあ、姉さん曰く、
「ルイジ分ガ、タリナイ」
らしい。
まあ、俺も次の入居者の為の準備に忙しかったし、そろそろ本格的にみんなの活動が始まっていくので、そのお手伝いもあり、ワルハウスを離れる事や、ワルハウスに戻ってもみんなのケアにバタバタしていた。姉さんの時間もとっているんだが、それでも足りないらしく。
「姉さん、Tシャツのびるからやめて」
時間がある時は俺のTシャツの裾をずっと掴んでついて回っている。
「ノビタラ新しいのカッテアゲル、ソシタラ古いのワタシニアゲル」
激ヤバ原始人ラッパー爆誕。
じゃねーんだわ。
「姉さん」
「ルイジ」
まあ、姉さんの瞳が揺れている。本当に疲れているようだ。最近では有名人が姉さんの名前を挙げるようになったりしている。その位Vtuberの認知度が上がってきている。姉さんの登録者数も右肩上がりでどんどん増えてるし、取材や案件、テレビ番組やネット番組の出演も増え続けている。
色んな人に会い続けるのは疲れるだろう。
ここでTシャツ購入禁止を命じれば、ガチ泣きの可能性がある。
俺は、我ながら甘いと思いながらも口を開く。
「姉さん、何かしてほしいこと、ある?」
「……! うん!」
姉さんは少女のように笑い、自分の手をTシャツの裾から俺の手に移動させ掴んだまま、2階のリビングのソファーに俺を連れて行き座らせる。
そして、自分の頭を俺の肩に乗せニコニコと笑っている。
「姉さん、10分ね?」
「うてめ時間で10分は、地球での60時間」
「いや、精神と●の部屋やん」
「ふふふ、10分ね。ありがと」
姉さんの声はやはり相当疲れている。大体こういう時、姉さんは悪い方向に思考のスパイラルが働いている。なんだかんだで自分の為に俺が10分の時間を使っていることに申し訳なさを感じながらも甘えているっぽい。こうなると、俺に出来る事はあまりない……どうしたものか……。
「あー! うてめ! 何してんのよ!」
俺が暫くの間、姉さんに肩を貸しつつ悩んでいると、配信を終え一階から上がってきたツノさんがこっちに気付き叫ぶ。
「ツノ、今、私のルイジタイムなの。大切な10分、邪魔しないで」
姉さんのその言葉にツノさんは少し考えた様子を見せると、
「なるほど~、でも、もう片方あいてるよね~」
そう言って、姉さんとは逆、空いている俺の隣に来ると姉さんと同じように俺の肩に頭を置いてくる。ちょっと?
「ツノ、ちょっと何してるの? ツノは駄目よ」
姉さんの声が低い。低音イケボ圧ぅ……。
じゃなかった! 姉さんがちょっと怒りをにじませるがツノさんは気にせず。
「え~、だって、逆側空いてたんだもーん。だから、アタシもルイジターイム。ここから10分ね。うてめもアタシのが終わるまでは堪能して良いからさー。どうせルイジ君動けないし」
「……! なんと」
なんと、じゃねーんだワ。
だが、まあ、なんというか、この人らしい。
状況をすぐに察して、姉さんの申し訳なさを自分の我儘にすり替えて、さらに甘える時間を増やしてあげる。
これが神野ツノなのだ。
「……ツノさん、ありがとうございます」
俺はそっと姉さんには出来るだけ聞こえないよう小さく囁くと、ツノさんはびくりと跳ねる。
「んあ? あは、あはははは……」
ふと見ると、ツノさんも真っ赤だった。
初心かよ。
そして、姉さん、俺の手を握る力が強い強い強い。ゴリラゴリラゴリラかよ。
だけど、この二人は間違いなくワルプルギスのトップで、トップだから、今は少しでも労ってあげたい。
石鹸と甘い香りでくらくらするけど! 耐えろ俺!
「ああー! またあなたは! 何をやっているんですか!?」
くらくらな頭に突き刺さる声。
気付けば、二階に上がってきていた女の子がこっちを指さして怒っている。
「げ」
「るいじさんに迷惑をかけない! そ、それに、いかがわしい真似禁止と言ったでしょう! ツノお姉さま!」
ツノさんが彼女を見ながら眉をハの字にしていやそうな表情になる。
昨日からのお試し入居の神野ツノの妹分、そして、ワル学の風紀委員長、破邪ルカが俺の前を通り過ぎツノさんの目の前でぷりぷりと怒っていた。
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