クビになったVtuberオタ、ライバル事務所の姉の家政夫に転職し気付けばざまぁ完了~人気爆上がりVtuber達に言い寄られてますがそういうのいいので元気にてぇてぇ配信してください~
77てぇてぇ『新しい時代が来たってぇ、古き良き時代がなくなるわけじゃないんだってぇ』
77てぇてぇ『新しい時代が来たってぇ、古き良き時代がなくなるわけじゃないんだってぇ』
※60てぇてぇ年末ワルナイト2ndのおまけ話となります。
ワルナイト2ndで二期組は二期曲を終えて、座り込んでいた。肩を寄せ合って。
「はあっはあっ……つっかれた~」
震える足をさすりながらノエさんが心底疲れたように声を漏らす。
「いや~、でも、めっちゃ盛り上がったよねえ?」
クレアさんが肩で息をしながらも満足そうに笑う。
「そうそう! 今日は特にヤバかった! ほんとうに!」
汗だくのホノカさんも思わず大きな声で返事をして手で口を覆う。
「……うん」
ワカナさんは、両側からノエさんとクレアさんの頭を肩に置かれながら体育座りで、じっと呟いた。
眼精疲労による目眩で倒れたワカナさんをフォローする為にやったことは歌の出番を遅らせた。
だけではなかった。
ワカナさんの身体への負担を考慮し、ワカナさんが最低限の動きでパフォーマンス出来るよう、他の二期の動きの見直しが行われた。
画面効果や流れ、色んなものがステージ上には計算され存在し、ただタレントの動きだけで作られているというわけではない。
全ての効果が合わさって最高のステージが生まれる。
だから、ただ、ワカナさんが動けないから、はい、全部それに合わせてくださいとは行かない。
急遽、関係者を集めてのアイディア出し、からのまとめが行われた。
振付師、演出、技術、そして、二期による壮絶な話し合いによって生まれたパフォーマンスは最初からそうだったんじゃないかと思わされる位のクオリティ。
いや、正直、俺がリハで見た時よりも良かったと思う。
振付師や演出チームは、最後には気持ち、作り手皆の気持ちが観衆に届いた結果だと言っていた。
振付師や演出、技術チームは二期の気持ちを汲み、その上で、新しいアイディアや改善策が出たのはいくつものアイディアを出しては消し、消しては生み出してきた結果だった。
そして、二期のみんなはそれぞれ全員の動きや立ち位置を覚えていた。
それぞれがそれぞれのプロフェッショナルの仕事を魅せた結果だった。
そして、ワカナさんは、与えられたポジションで、最高の歌唱と表現をしてみせた。
「みんな……ごめ」
「あーあーあー! きっこえないー! ちょっと、ワカナ、馬鹿なの! あんたが謝ったらノエたちはどんだけあんたに謝らないといけなきゃなくなるのよ!」
ノエさんは謝罪の言葉を口にしようとしていたワカナさんを遮り、喋り出す。
「そーそー! クレア達、ワカナにはおんぶでだっこなんだから」
「うんうん! それに、いっつもワカナが言ってるじゃん! そう言う時は……」
ホノカさんがクレアさんの肩に、クレアさんがワカナさんの肩に頭を置きながらワカナさんの方に視線を送る。
ワカナさんはその視線を受けて、ちいさく頷いて、
「ありがとう……本当に……」
「あーあーあー! ありがとうありがとうありがとうありがとうありがとう! とりあえず、ノエ、ある程度返済しておくわ。ワカナへのありがとうを。いつも、ありがと」
「あー! 私も私も! ワカナ! いつもありがとお!」
「ありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとー! あれ? ホノカ今何回言った?」
「いや、何回でもいいでしょ」
「いや、ノエよりは少ないはずだから!」
「なんでだよ! だったら、クレアが一番でしょ!」
「クレアの一回はみんなの二十倍だから」
「「なんでよ!」」
三人の言い合いを見て、ワカナさんは体育座りのまま、顔を伏せ身体を震わせる。
「あれ? ワカナ……?」
「ふ、く、くくく……あははははは……もう、みんな、いつも通りじゃん……」
ワカナさんが声をあげて笑いながら目元を拭う。
それを見て、三人はほっとしたようにまた身体を寄せ合う。
「いつも通りだよ、これからも」
「うん、そうそう。何かが変わってもさ」
「いつも通り。そう、いつも通りだよ。アタシたちは」
「うん、そうだね。みんなはずっと……手のかかる子達だ」
「「「ちょっとおおおおおお!」」」
そして、みんなで肩寄せ合い笑う。
「ノエがさ、二期で一歩前に出てワルハウスに行って焦ってたんだよね、私……。何やってんだろうって、ノエが頑張ってるのに、私は、鉄輪ワカナはって……」
「馬鹿ね。最初に社長に言われたことを忘れたの? ノエは覚えてる。……『貴方達は私が見つけてきた最高の原石です。それぞれ最高の。だけど、四つ揃えばもっともっと互いを輝かせることが出来る、そして、誰にも負けない最強になれる』って」
「そうそう。誰かひとり違えば、この四人じゃなかったかもとも言われたよね」
「キセキだって、言われたな……」
ノエさんは、振り返り、出来るだけ手を伸ばし三人を抱きしめようとする。
「二期は四人がそれぞれの役割があって、それで輝くの! だから、ノエが輝いてるとしたら、みんなのお陰なの! だから、だから! 一緒に頑張ろう! 一緒に! どんな形でもいいからさ、言ってよ……言いたいこと」
「うん、そうだね。うん、そうだ……もっともっと輝けるよね、私達。今日のステージで確信した」
控えめに言って、最高のステージだった。
ノエさんの小柄な体がダイナミックに動いて、クレアさんのバレエ仕込みの柔軟で美しい動きが、ホノカさんのアクロバティックな動きが、それぞれワカナさんをフォローする動きと上手く調和して、そして、ワカナさんのエモーショナルな歌唱と組み合わさって、フィナーレと同じ位コメントが沸いていた。
「いよーし! 二期! 今年は最強4期も、若い6期も、全部全部喰ってやろう!」
「「「おー!」」」
画面に映らないところにもてぇてぇはある。
それが例えアーカイブに残っていなくても、それを感じることの出来るファンはきっといる。
そして、それを感じる配信を、四人で最強の二期は見せてくれるだろう。
ステージ裏の片隅で掲げられた四つの拳は汗と涙と小さな照明でキラキラと輝いていた。
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