59てぇてぇ『年末特別配信・ワルナイ2nd・【SingRingNight】』


画面の向こうでは、うてめ様とさなぎちゃん、そして、ゲストである他事務所のVtuberや個人Vが映っている。

そして、その中には、俺が担当していた元れもねーどである、るぅもいる。

鉄輪さんの復活の為にわざわざ協力してくれて、サプライズとしてトークだけしてくれるはずなんだけど……。


『というわけで、折角のコラボ。みんなで歌いましょうよ。高松うてめの【つぼみ】』


るぅがそんな事を言いながら挑発的に笑っている。

っていうか、いきなりでそんなこと出来るのか?


「どうしてもやりたいって。それをさせてくれるなら、サプライズを引き受けるって」

「うお!?」


気付くと黒川社長が傍にいた。


「うおって……あのるぅって子、ウチの勧誘断って、個人Vとしてこんなに活躍するなんてね」


もう一度画面に視線を戻すと、みんなで音を合わせている。

どういうことだ?

俺が疑問に思っていると、うてめ様が歌い出す。

そして……それに集まるようにみんなも歌い出す。これって……。


― ♪花咲く日を夢見続けて 暗い土の中もがき続ける ―

― ♪(花咲く日を夢見続けて 暗い土の中もがき続ける) ―


アカペラ!?

確かに、今回のオープニングでうてめ様とさなぎちゃんで歌っていたから、アカペラバージョンは熱いけど、いけるのか!?


そんな俺の心配をよそに、綺麗なハーモニーを聴かせ始める。

うてめ様、さなぎちゃんはうまいのは分かっていた。

けど、るぅはこんなにうまかったか!?


「……がんばってんだな」


いかん、にやにやしてしまう。

そりゃ、嬉しいだろう。俺が初めて担当したアイツがまだまだ進化してるんだから。


「多分、今、一つの流れとしてうてめとウテウトが中心になっているのがあるのよ。そこから始まるストーリーが」


大手事務所に成長したワルプルギス、そして、大手に負けない程のムーブメントを起こし始めてる個人V。

面白いしかない! これからのVの世界にワクワクしすぎるんだが!


― ♪やっと会えたね、本当のキミ ―

― ♪本当のワタシ ―


歌い終わったと同時にコメントの嵐が吹き荒れる。

これ以上ない、歌メドレーのスタート。


ありがとな、るぅ。


『お待たせしました! ワルプルギスの夜フィナーレ、【SingRingNight】お楽しみください!』


うてめ様の合図で一気に木々が生え、森が生まれる映像が入る。

そして、森の奥を進んでいくと、学園に辿り着く。

そこにいたのは五人の選ばれた女生徒たち。


『世界よ、今こそ革命の時! 我々が新時代の灯火となるのだ! ワルプルギス学園から始まる新しい時代が! 聞け! 震えよ! 讃えよ! 【Arcadia Academia】!』


6期ワル学メンバーによる歌が、バトンを受け取り歌い始める。


― ♪求めよさらば与えられん (尋ねよさらば見出せん) ((叩けよさらば開かれん)) ―

― ♪世界が変わらないのなら 変えるのだ世界を この手で ―



新しいVtuber時代の始まりを予感させる新世代の歌が響き渡る。

だからといって、古いものが捨てられるわけじゃない。


『ありがとう! 来年から本格的に我々が動き出す。そして、我々は待っている! 世界を変える同志たちよ!』


ワルプルギスの目指す新しいVtuberの世界を彼らに期待したい。


『スケールが大きいわねぇ。私達はどうしよっか、しいど?』

『そうだねぇ、るぅちゃん。しいど達は小さな幸せいっぱいつくっていこ! 聞いてください!』

『『【ひかりのたね】』』


― ♪きらきらひかる ひかりのたねよ ふわふわふわり ひろがってゆけ ―


るぅしいどの自分たちで作り上げた素朴で共感を呼ぶ歌。


個人Vで集まり新しいムーブメントを起こし始めているるぅしいどは間違いなくこれから注目されるだろうし、これからもっともっと面白い個人Vが出てくるだろう。


まだまだ、この世界は面白くなる。

だから、


「もっともっと最高の魔法を見せてくださいよ、ヒーロー」


『あんたたち! もっともっとしお分出しなさい! 汗かけ! 涙出せ! そんであたしらででっかい激流生み出すのよ! ねえ、ワカナ!』


もう惑わないといわんばかりに真っ直ぐ前を向いた土の魔女、鉄輪ワカナがぴんと伸ばした背筋で前へと進んでくる。その姿は見惚れるくらいかっこいい。


『そう、みんなを魔法で溺れさせるのは、私達! 塩ノエ! 黒羽クレア! 火売ホノカ! そして、鉄輪ワカナ! 四大魔女の魔法に魅せられなさい……! 【モニュエ・レ・メンタル】』


ゾクッとするくらい魔性の笑みと声で画面の向こうの俺達を誘惑する魔女。

積み重ねてきた経験と、新しく貪欲に吸収していく技術が合わさり、震えるほどの感動が生まれる。


終わってない。


彼女はまだ終わってない。


聞こえますか?


みんなの声が。


届いてますか?


あなたに魅せられ、あなたの虜に、そして、あなたのおかげで現実と戦える人たちがいることを。


鉄輪ワカナは輝いていた。

彼女にしか出せない最高の輝きで魅せながら、

競うように高めあうように助け合うように輝く他の三つの光と共に。


彼女はきっとこれからも光になる。


希望の、導きの、光に。


それほどに、前を向き全力疾走した彼女の笑顔は美しかった。


そして、その後も、5期のフレッシュさ、3期の荒々しい勢い、1期の歴史を感じさせるエモさ、そして、4期の王者感。

そのどれもが、そして、誰もが誰かの主役に、ヒロインにふさわしい本気だった。


満点の星空のような光に満ちたライブはまだ終わらない。


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