クビになったVtuberオタ、ライバル事務所の姉の家政夫に転職し気付けばざまぁ完了~人気爆上がりVtuber達に言い寄られてますがそういうのいいので元気にてぇてぇ配信してください~
50てぇてぇ『年末特別配信・ワルナイ2nd・4時・うてめそーだの【夜のお茶会】』
50てぇてぇ『年末特別配信・ワルナイ2nd・4時・うてめそーだの【夜のお茶会】』
三時のイケイケチームの配信。【ワルプルギスナイトプール】を終えての、四時からのうてそートーク配信が始まる。
『さあ、うてめお姉さま。ここからの時間はそーだとうてめお姉さまのトーク配信、【夜のお茶会】です』
『よろしくね、そーだ。そして、ゲストは、このコ』
『帝国騎士達よ! Vの夜明けは近いぞ! 私はこの世界を変えてみせる! ワル学生徒会長! 【傲慢の帝王】帝えぺら!』
凛々しい声で現れたのは、マントをつけ軍服っぽいアレンジの入ったワル学制服を着こなした金髪碧眼の美少女。
帝えぺら。
そーだの下の世代でワルプルギス学園、通称、ワル学と言う学園で活動している設定の子達のリーダー的存在であり、ワル学の姉妹制度という制度によって、高松うてめを『お姉さま』と呼ぶVtuberだ。
〈えぺら様に敬礼!〉
〈うてめ様にウテウト!〉
〈そーだ様にもウテウト!〉
コメントでは、他の上位二人に負けない程のえぺら。
だが、今日のこの時間は彼女にとって不憫でしかない。何故なら。
『では、今日の夜のお茶会のテーマは! 【ウテウトについて語ろう】です! うてめ義姉様!』
『ふふ……ついにこの時が来たわね』
『…………』
そーだとうてめ様は盛り上がっている。
ウテウト、そう、つまりは、俺の事だ。
度々姉であるうてめ様とそーだが話に出すウテウトについて語るという謎配信。
それをえぺらが学ぶらしい。
いや、誰得。
と思っているのだが、うてめ様やそーだの配信でもお馴染みになっているし、色々やらかしているので、ウテウトの注目度は高く、よく飼いならされたてめーらは、
〈キター!〉
〈ウテウト様―!〉
〈待ってました!〉
餌が投げ込まれたかのように歓喜する。何故?
『ちなみに、えぺらさんはウテウトについては』
『は、はい! えぺらは、うてめ姉さまの弟ということで、基本については学んでいるつもりです!』
『流石ね。では、問題よ』
『え?』
〈問題?〉
〈クイズが始まったぞ〉
〈自由か〉
『ウテウトの好きなものと言えば』
〈良問〉
〈いや、愚問〉
〈マ? てめーらは分かるんか〉
『え、えーと……あ! オムライス!』
『ですがあ』
ウザい。我が姉ながらウザい。
そして、俺もなんとなく答えに察しがついている。
『それは食べ物ですがあ、本当に一番好きなのはなんでしょう? が問題よ』
『せ、正解は?』
『そーだは分かる?』
『はい、勿論♪ うてめお姉さまですよね?』
『正解』
茶番なんよ。
『えーと、それは、公式に情報出てましたっけ? すみません、えぺらの勉強不足で……』
『えぺら、自分を信じるって大事なことよ』
『もしかして、うてめ様の妄想ですか!?』
『妄想じゃないわ! 絶対現実にしてみせる』
『強い意志は感じますっ!』
〈てめーらどうなってるんや〉
〈年末も通常営業や〉
〈24時間365日ウテウト中や〉
『うてめお義姉様、まだ、ちょっとえぺらが付いてこれていないようです』
『い、いえ! そんなことは! だ、大丈夫です!』
『大丈夫よ、えぺら、あなたの教育係は私よ、貴方の気持ちは分かっているわ』
『う、うてめお姉さま……!』
『古今東西ウテウトのいいところがしたいってことよね?』
『……! はい!』
いやいやいやいや! 絶対違うだろ!
俺は、ウテウトとして否定したい気持ち、だが、一ファンとしてこの狂気の時間の可能性を感じ、震える。
その隙に、ウテウトにとっての悪夢の時間は始まってしまう。
しかも、うてめ様とそーだだから、テンション高くても知れている。
ああ、ツノ様やガガがいてくれたら、ぜめてテンションで狂えるのに……!
『古今東西』
『いえー♪』
『い、いえー!』
えぺらが、がんばってる……!
『お題は、ウテウトのいいところ』
『いえー♪』
『いえぇえええええ!』
あのクールな生徒会長帝えぺらが、猫が好きな絶叫芸人さんみたいになっている。
『ぱんぱん、姉が好き』
姉さん……!
『ぱんぱん、次にそーだが好き』
そーだぁ……!
『ぱ、ぱんぱん! Vtuberが好き!』
えぺらさん! キミだけはそのままでいて!
『ぱんぱん、姉とデートに行きたがる……』
姉さんんんんんんんんんん!
だが、面白い! ファンとしては面白いよ! 姉さん!
その後も、うてめ様のガチトーン回答でコメントは盛り上がりつづける。
『ぱんぱん、あれは私が女神専門学校の生徒だった頃、ウテウトは、私の声は宝だと言って、徹底的にケアしてくれていたの。あの子、自分の誕生日プレゼントに、私の部屋の加湿器を買ってくれたのよ。今では使ってはいないけれど、あれは私の宝物なの……ぱんぱん』
『いや、ぱんぱんじゃないんですよ! うてめお姉さま! もうだいぶ前からリズムをぶった切ってウテウト自慢してるんです! もう、なんなんですか!? この時間!』
えぺらが正論パンチをぶちかます。
コメント欄はもう諦めて、逆に盛り上がっていたが、えぺらだけは諦めていなかった。
俺は早々に諦めて、一ファンになり切ってコメントを送り続けていた。
『えぺら、よく聞きなさい。私達は、日々色んな案件を頂いているわ。でも、その中には、良いイメージを持ってないモノだってある。それでも、ちゃんと向き合わなきゃいけないの。それに、ハプニングだったり、ゲストがルールを分かっていない事だってある。だけど、私達はそれを成功に導かなきゃいけないのよ』
『……は! ま、まさか、これはその為のトレーニングだったと……?』
『いえ、これはただ言いたかっただけ』
『なぁんなんですかぁああああ!?』
〈これは違ったw〉
〈ただ、精神は鍛えられたわ〉
〈てめーらにとってはご褒美タイムやったけどな〉
『ええい! 分かりました! では、この配信を、【傲慢の帝王】の名にかけて、成功へと導いてみせますよ!』
『じゃあ、続きね、ウテウトのいいところ、ぱんぱん』
『まだ古今東西続くんですか!?』
『……帝えぺらは、本気でワルプルギスのトップを狙っていて、喋りのスピードや量も試行錯誤しながら試し続けているし、他のメンバーの良い所を自分なりにアレンジしてチェックした次の配信では実践してみたりしていると気づくくらいVtuber愛がすごい』
『……』
『ふふ、流石ウテウトさん、そして、流石えぺらちゃんですね』
『そんなの、分かるわけ……』
『『分かるのがウテウトなのよ(さんなんですよ)』』
まあ、分かる。
えぺらは、アナウンサーのように、スピードをコントロールしているし、情報と感情の量をある程度調整しているようだった。それに、他のメンバーの配信なんかも取り上げつつ、更にそれを自分なりにやろうとしている凄いVtuberだ。
『で、ですが、えぺらのそれは誰でもやろうと思えばやれる……』
『それを真面目に愚直に出来るのが貴方の凄い所なのよ、えぺら……それは誇るべきことだし、そんな貴方の指導係になれて、私は嬉しいわ』
『う、うてめお姉さま……』
『あらら、うふふ』
〈うてえぺてぇてぇ〉
〈姉妹制度の本領発揮やな〉
〈優しい心を手に入れたぞ〉
えぺらは感極まっているようで声を震わせ俯いた。
だが、その後、顔を上げ、
『ですが、やはり、納得はいきません! うてめお姉さまに相応しいのは私です!』
『え?』
『あらあら、うふふ』
〈お?〉
〈マ?〉
〈これ、ガチのやつじゃね?〉
『あ……わ、私は! 必ず貴女を振り向かせてみせますから! ウテウトよりも! 絶対に!』
まさかのカミングアウト。
えぺら、うてめをオトす宣言。トップを狙うの意味が違ってた。
そっちの狙うってことぉ?
いや、こいつは、面白くなってきた。
こんな展開面白過ぎるし、俺はそういうのは全然アリ派だ。
姉さんが幸せならそれでいい。
俺は、戸惑う乙女な姉さんを期待し、全国のファンと共に画面を見つめる。
『絶対に、それはないわ。私、弟一筋だから』
悔しい事にそれでこそうてめ様だと思ってしまった。
究極の弟溺愛Vtuber、それが高松うてめなのだ。
今年も変わらず、そして、きっと来年も変わらない気がする。
『う、ぐゅ……ふぐ! あ、諦めません! えぺらは必ずお姉さまにふさわしいVtuberになります! 登録者数だって人気だってお姉さまと並んでみせます! だ、だから、う、ウテウト! 負けないからな!』
突然の半泣き負けない宣言。
だけど、これだから面白い。
変わらないワルプルギスのトップVtuberと、新しい風を吹かせる新人Vtuber。
てぇてぇ二人にまた新しい年がやってくる。
『あらあら、うふふ。でも、えぺらちゃん。お義姉様に追いつく前に、そーだに追いつかないとね』
闇のオーラを纏った声で、そーだがえぺらに声を掛ける。
闇そーだは勿論本気ではないのだろうが芝居がうますぎて震えてしまう。
だけど、えぺらも引くつもりはないようだ。
『我々、ワル学特進クラスは! お姉さま達を尊敬し、そして、越えることが目標です! だから、負けません。勝負です、そーだ先輩』
『ですって、ウテウトさん、そーだがえぺらちゃんに勝つために、力を貸してくださいね』
そーだは画面の向こうのウテウトに甘い声でお願いしてくる。
『あー! あー! なんですか!? それは、卑怯な……!』
『しゅわわ?』
『急にぽわぽわしだすなー!』
まだまだ、ワルプルギスのVtuberは変わり続ける。
変わらないてぇてぇを抱えながら。
互いのいいところを探し、見つけ、高めながら。
彼女達のお陰でまた未来が楽しみになった。
Vの未来はまだまだ明るい。
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