48てぇてぇ『年末特別配信・ワルナイ2nd・0時・オープニング』

※年末チャレンジという事でリアルタイム24時間更新していきます。宜しくお願いします。




「きた!」


待機画面が終わり、派手なアニメーションが入って、ツノ様とノエ様が現れ、俺は画面を見ながら小さく叫ぶ。


『おぉおおお晦日だよ!』

『『ワルプルギスの夜2nd~24時間ワルメンかわるがワルナイト~!!』』

〈はじまた〉

〈キター!〉

〈88888888〉


テロップが入り、二人が楽しそうに腕をぶんぶんして踊っている。

モンキーダンスだっけ? かわいい。



『皆さん、年末のツノ立ってますか~!? 神野ツノ降臨!』

『こんしお~、塩ノエで~す』

〈ツノたっております!〉

〈こんしお~〉

〈こんわるぷる~〉


今日の二人は年末仕様だ。

赤と金のド派手な着物のツノ様と、ちょっとフリルとか洋風入った紺と白銀のお洒落な着物のノエさん。



『ということで、ノエ様、始まりましたね~、年末特別配信』

『そうね、今年は24時間という事で、かわるがわる色んなワルプルギスのVtuber達が登場しますので、みなさん、お楽しみに!』

〈88888888〉

〈たのしみすぐる〉

〈かわるがわるタカ〉


視聴者数も去年に比べて、どんどん増えていっている。

今年一年は本当に怒涛だったしな。


『さて、ツノさん。今年ももう終わってしまいますが、ツノさんの今年を一文字で表すとなんですか?』

『あー、あの、これ、配信で言ってたのとは別なんですけど【しま】ですかね?』

『しま? アイランドの島ってことぉ~?』

『あー、違います。あの今年、アタシの中で縞パンブームが来て』

『しらねーワ! アンタのパンツ事情とか!』

『ちなみにノエ様は今どんなパンツ履いてるんですか?』

『し……言わねーわ! バカか!』

『し……? 妙だな。こんな大一番で白なんてシンプルなおパンツでノエ様が乗り込んでくるはずがない……! そうか! わかったぞ! 真実は一つ! さっきのし……は、勝負下着のし! そして、ノエ様の勝負下着といえば、好きな色である水……!』

『うるせー! 全部いってんじゃねーよ! ばぁーーーか!』

〈名探偵ツノン〉

〈名推理やでえ〉

〈8888888〉


『こほん、ちなみに、ノエ知ってるんですけどお、ツノは配信では【並】だったそうでーす。うてめという最高のライバルに並んだ。肩並べて走ってた親友の復活とかって意味だそうでーす!』

『うきゃあああ! やめろやめろー! 酔っぱらい配信で言った事だあああ!』

〈うてつのてぇてぇ〉

〈ナツノてぇてぇ〉

〈よっぱ鬼はよく漏らす〉


『ちなみに、ノエ様はなんですか?』

『そうねえ、ちょっと痩せたから【細】い』

『はいはーい』

『おいぃいい! 雑にしお流すなよ!』

『いやあ、だって、ノエ様普通に細いのにずっと気にしてんだもん。ずっとずっとノエ様はかわいいですよ♪』

『そ、そう』

『んぎゃわあああああああ! デレノエがボディーに入ったんだが!? もうお腹の奥がきゅんきゅんしちゃってるんだが!? ノエ様産みてぇええええ!』

『きもいきもいきもい!』

『きもちいいきもちいきもちいい! ノエ様の塩はご褒美じおー!!!!』

『やだー! もうやだー!』

〈最終ラインの守護神が!?〉

〈ツノ様のつのが突き破ってしまう〉

〈嘘みたいだろ? これ、まだオープニングなんだぜ?〉



ハイテンションで縦横無尽に動き回る二人にオープニングからワクワクが止まらない。ドタバタを繰り広げながら楽しそうに騒いでいる様子を見てると笑みが零れてくる。


『ツノ、これ以上脱線したら、へラッたツノの弱音を本邦初公開すっぞ』

『でででででは、オープニングソング参りましょう! ねえ、ノエ様!』

『はいはーい、オープニングを飾るのは、ワルプルギス登録者トップで最強の声と名高い女神と、歌唱力トップクラスの小さな天使に歌って頂きます!』

『『【つぼみ】!!』』


曲フリが入り画面が切り替わる。


ゲームのフィールド画面みたいな風景が映り、ふわりと風が草木を揺らす。

その風が流れていく。

風は、様々な所に吹いて、旅をし、人と出会う。

人々が発した声が小さな光となって、その光を風が運んでいく。

色んな音を奏でる小さな光を持って風は流れていく。

風に揺れる度に、光達は音を鳴らし、声のような音楽のような何かに変わっていく。

そして、それは一つの暗い部屋でぽつんと輝くPCの画面に流れ込み……。

その画面と俺達の見る画面がリンクする。


そして、その画面の向こうに集まった音と光が二人を作り出す。

まるで、世界の人々の思いの結晶が彼女達であるかのように。


― ♪花咲く日を夢見続けて 暗い土の中もがき続ける ―

― ♪(花咲く日を夢見続けて 暗い土の中もがき続ける) ―


女神、高松うてめがそこにいる。

いつもの緑のドレスに身を包み、優しく微笑みながら歌っている。

そして、追いかけるように歌うさなぎちゃんもオレンジ系のアイドルっぽいドレス衣装で両手でマイクをしっかり握って歌っている。


― ♪晴れ続く日がないっていうなら ―

― ♪止まない雨もないってことでしょ ―


うてめ様の歌声が花びらとなり、さなぎちゃんの歌声が蝶になり、花びらに惹かれる蝶という映像演出がめちゃくちゃ綺麗だ。


総合的に歌という評価であればさなぎちゃんの方が上だろう。

だけど、うてめ様のオーラと言うべきか、雰囲気なのか、圧倒的な何かがさなぎちゃんを上回っているように感じさせる。


そして、間奏。


うてめ様がさなぎちゃんに近づく。

そして、急に離れるさなぎちゃん。

見つめ合う二人。

そして、


ラスサビ前の静かなアカペラ部分。

さなぎちゃんが前に出る。そして、うてめ様が背を向け手を上げると、大きな一本のつぼみとさなぎを付けた映像が背景に映る。


― ♪アナタという光、アナタという雨が ―

― ♪ワタシをもっともっと 輝かせてくれるから ―


さなぎちゃんの澄んだ声。だけど、ただ、澄んでいるだけじゃなくて。

色んな経験を経て、色んな人と出会って、生みだしたさなぎちゃんの色だ。

それはうてめ様とは違う魅力にあふれていて。


― ♪咲き誇れ ―


うてめ様が戦った一年。


― ♪誇り咲かせ ―


さなぎちゃんが戦った一年。


― ♪さあ、今開くよ ―


大きな虹色の花と蝶が生まれ、美しい花粉を、鱗粉を舞わせ幻想的な世界を作り出していく。

そして、さなぎちゃんが光に包まれ、うてめ様とペアのような緑の女神ドレスで現れる。


最高かよ!


圧倒的多幸感に包まれながら放たれるラスサビの音と光の嵐におかしくなりそうだ!


― ♪花咲く日を夢見続けて 暗い土の中もがき続けて ―

― ♪今咲き誇るの、この私は 諦めなかった私なんだから ―


恵まれた容姿だけどずっと悩み続けていた姉さんと、

ひとりぼっちで逃げるしか出来なかったさなぎちゃん。


― ♪届いていたんだよ君の声 届いてたかな私の声 ―

― ♪信じていたんだよ花咲く日 諦めなかった夢叶える日 ―


それでも、彼女達は自分を信じて、漸く辿り着けた自分らしく輝ける場所に。


― ♪はじめまして 新しいキミ 新しいワタシ ―


本当の自分を見られたい女の子とその女の子を目指す女の子。


― ♪やっと会えたね、本当のキミ ―

― ♪本当のワタシ ―


二人は出会い、ここで同じ時を過ごしてる。本当の心で。


『来年ツアーが予定されています。十川さなぎちゃんと、200万人達成した高松うてめで【つぼみ】でした!』

〈88888888〉

〈88888888〉

〈88888888〉


歌い終わった二人がやってくる。

俺は準備しておいたドリンクを二人に渡す。

俺の今日の仕事はみんなが駆け抜けられるよう最大限のサポートをすることだ。


「姉さん、おつかれ、最高だった。さなぎちゃんも最高」


俺がそういうと姉さんは顔を真っ赤にして俺に抱きついてきた。

汗をかいてちょっとしっとりしている姉さんからいい匂いがして、何故女の子は汗をかいてもいい匂いがするのか本当に不思議だと思った。


「今日、がんばるから。ちょっとだけチャージさせて」


ペイ●イか何かかな?

そしたら、さなぎちゃんがうしろからぽふっと抱きついてくる。


「ちがうんですちがうんです。わ、わたしは、うてめ様みたいになりたいので同じことするんです。けっして、チャンスだとかそういうことは思ってないし、るいじさんの匂いなんて嗅いでませんから」


思いっきりさな漏れをぶちかますさなぎちゃんに苦笑いしながら、俺はただただ脳内除夜の鐘を突き続けて、煩悩を消すことに徹した。


「そ、そういやさ。間奏中、姉さんさなぎちゃんになんて言ったの?」

姉さんは俺の胸に顔を埋めながら上目づかいで俺を見てくぐもった声で答えた。

「『貴方の声好きだから、年末一緒に歌えて嬉しい』って」


は?


てぇてぇんだが?


さなぎちゃんもう泣きだしてるんだが?


嘘みたいだろ……これ、まだオープニングなん、だぜっ……。


「累児……ちょっと、幸せそうな顔で天に召されないで、累児!? 累児ー!?」


姉さんの叫び声が聞こえる。綺麗だな。


「大変だわ。服を脱がせて楽に、じゅるり、楽にしてあげないと!」

「いや、ガチで脱がせるんはやめといてもろて」


さなぎちゃん、両手で目を覆ってるけど、隙間から見えてるのが見えてるの。

さあ、冗談はさておき。


「じゃあ、姉さんは一旦4時までおやすみだね。胃に優しい夜食作ってるからそれ食べてちょっと仮眠とっておこうか。さなぎちゃんは次早朝だからこのまま寝ちゃう? あ、マネさん。ツノ様は、オープニングメドレー後は一旦帰って寝るんで一緒に付いていてあげてくださいね。ノエさんは別です。このあと、榛名さんは出番ないですよね? ああ、向こうのキッチンに何種類かスープと、おむすびとサンドイッチと簡単なおかずあるんで榛名さんも食べてください。あと、ちゃんと寝てくださいね。さてと、じゃあ、俺はドリンク作るかな」

「ちょ、ちょっと待った! 全部スケジュール覚えてるんスか!? っていうか、アンタは寝ないんスか!?」


マネさんが、今歌ってる3期生さん達の為にドリンクを作ろうとした俺の腕を取り聞いてくる。


え? 何言ってるの?


「Vが頑張ってるのに、俺が休むわけないじゃないですか。その為にコンディション整えてきてますから。24時間V漬けな上にそれをがんばるサポートまで出来るって最高の24時間ですわあ……!」


マネさんが信じられないものを見るような目で見てた。


え? 俺なんかやっちゃいました?


ま、いいや。さあさあ、最高の大晦日を迎えましょうか!


画面の向こうのツノ様、ノエさんが今日のスケジュールを説明し終えて、顔を見合わせ、声を揃えて宣言する。


『『ワルプルギスの夜2ndスタートです!』』

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