十二月二十一日(水曜)こくいち
朝、ごはんをもらいに行ったら、
「こっくー、くろ、大丈夫かなあ? 怪我していたから心配で。くろも連れて来てね」
とニンゲンが心配そうに言ったので、みけ姉ちゃんといっしょにくろ父さんを連れて来たら、ニンゲンがいない。
あたしはじーっと待った。ニンゲン、早く来ないかなあ。
くろ父さん、ごめんね。
猫の時間はニンゲンとは違う時間軸にあって、機械にしばられていないから日向ぼっこしながらここにいればいいんだよ。
くろ父さん、いいこと言う!
みけ姉ちゃんはそう言うと、ソファにぴょんと飛び乗った。
こくいちもおいでよ!
あたしもソファに乗って丸まった。
くろ父さんをちらっと見ると、ガラス戸の前に悠然と座って、目を閉じている。
冬の風がくろ父さんを撫でる。くろ父さんはそんなのなんでもないって感じで、ただ、じーっとしている。
……お父さん、かっこいいな。
あたしは思う。くろ父さんは、あたしたちの誰よりもおっきくて、しかも毛がふわふわしている。お腹のところだけちょっと白い毛が生えていて、ちょっといいな。しっぽも太くて、強そうなんだ。
くろ父さんがいると、安心する。
このおうちも、くろ父さんがくろ一家のナワバリにしてくれたから、安心して通うことが出来た。あたし、怖がりだから、他の猫がいたらごはん食べたりできなくて、通えなかったと思う。
冬のお昼のあたたかさにうとうとした。
小さい頃の夢を見ていた気がする。
「あ、来ていたの~」
という能天気な声が聞こえて、ガラス戸が開いた。
くろ父さんは命の水がすぐに欲しくて注いでいる途中から飲もうとして、頭に命の水がちょっとかかった。でも気にせず飲んでいる。あ、くろ父さん、今日はかりかり食べてる。しかも、がつがつ食べる! よかった。食べられるなら、怪我もすぐに治るよね。
隣でみけ姉ちゃんがのびをして、「食べるわよ~」って顔をしていた。でも、あたしの方を見て、今日はこくいちから食べてね、と言った。ありがと、とあたしは言う。
みけ姉ちゃんは最近、いつも順番を譲ってくれる。優しいんだ。
ねえ、みけ姉ちゃん。今日はどこに遊びに行く? こくに兄ちゃんにはどこで会えるかなあ。
あたしたちは何ものにもしばられない。
冒険に行こう。
しっぽをぴんと立て、元気よく冬の陽だまりの中へ飛び込んでいく。
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