第1話・神様が言っている⑤

   四


 彼女は僕の隣に座り、買ったばかりのフライドポテトをつまみ始めた。

「いも、好きなんです。ひとつどうです?」

 なぜか言い訳をしながら差し出してくる。一本もらった。

「いも好きの女の子って多い気がするね」

「うわあ。曽我さんそんなに女友達多いんですか」

 冗談めかして声をあげる小春。

「いや、そのフライドポテトの本数の方がずっと多いよ」

「じゃあ食べたらますます少なくなっちゃいますね」

 彼女の言葉に、僕はそうだねと簡単に返事をしておいた。一瞬、ポテトの本数とどのくらい差があるかと、無意識のうちに数えてしまう。秋田に来てから知り合った女性は小春に寺村早香、あと若干一名。それに地元の山形に何人かいるが、そのうちのいくつかはあまり思い出したくもない。

「それで、話ってなんです?」

 小春の質問で我に返る。僕は説明を始めた。

「はあ、そんなことがあったんですか」

 聞き終えた小春は目を丸くする。それから少しの間、思案げにポテトをつまんで、容器を空にしてからこう言った。

「友坂さんの口寄せの依頼なんですけどね」

「うん」

「とにかく、あれはお断りしています」

「そうなのか」

「はい。あの後、友坂さんは一度直接来てくれたんです。でもその時ははっきりお断りしました。それからも二回くらい電話が来たんですが、それもです。ですからあの人が詐欺師だろうがなんだろうが、うちと関係はありません」

 ならば騒ぎ立てる必要もないか。僕はほっとしたが、小春は思うところがあるのか真剣な表情でつぶやく。

「でもそういう事情なら、こちらから警察に話しておいた方がいいかも知れませんね。依頼内容が、ちょっと気になっていたんです」

「依頼内容っていうと……」

「はい。呼んでほしい相手っていうのが、ちょっと」

 彼女はそこで言葉を切った。それは、友坂が言っていた「あの人」のことだろう。彼は、口寄せで誰と会おうとしていたのか? それが全く気にならないと言えば嘘になる。だが小春の表情は真剣で、好奇心から追及するのは控えておいた。

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