第12話 妖怪との闘い 後編

「なんでお札をはろうとしていることが分かった?」

 羽地にお札をはった時は、俺が羽地の下着について考えたことによって、動きが固まってしまい、はることが出来なかった。つまりそれは、俺の問題だ。


 だけど、今回は違う。俺は全く躊躇せず、それどころか全力で、札をはろうとしたのだ。普通だったら、何が起きているか分からなくて反応できないはずだ。なのにプリティーガールズは俺の腕をつかんで、お札がはられるのを防ぐということをした。これはあらかじめ、俺がお札を張ろうとしたことを分かっていたとしか思えない。


 だけど俺はプリティーガールズにお札をはろうとする素振りを見せていない。・・・俺のうそが下手だった可能性があるが。むしろその可能性のほうがはるかに高いように思えてきたが、・・・だけど、聞いといて損はないだろう。


「でゅふふふふ、そんなこと誰も分かるような簡単なことだぞ?それはだな・・・お前達の会話をすべて聞いていたからだ。」


「なにっ!遠くの音を聞こえるようにする妖力でもあるのか?」


「でゅふっ、でゅふふふふふふ」

 俺の質問を聞いたプリティーガールズは独特な笑い声をあげた。


「違う、違う。もっと簡単な話だ」

 プリティーガールズは笑いをこらえながら言った。


「我は知由ちゆちゃんに憑りついていたのだ。だから、羽地知由が聞いていたものは我にも聞こえるのである!・・・だから、そのお札が我を『直接封印』出来るお札だということは知っているのだっ!」



知由・・・ああ知由って羽地の下の名前か。ぱっと思い出せなかった。ということは・・・俺と清世ちゃんと羽地の3人で考えた策(ほぼ、清世ちゃんが考えだが)は全部、プリティーガールズに知られていたということなのか!


「それなら、お祓いをして羽地から出た時にドームシールドをつくりだしたのも、俺たちがお前の弱ったところをお札で封印するという作戦を知っていたからなのか!」


「そりゃあ、そうだとも」


 俺はプリティーガールズの言葉を聞いて、俺がプリティーガールズを封印することは絶望的だということを知る。まあ、お札をびりびりに破かれた時点で、絶望的だったが。


 ともかく考えなくてはならない・・・俺は頭が回る方ではないが、それでも考えなくてはならない。もしかしたら、この絶体絶命な妙案が思いつくかもしれないではないか!


 という訳で何か考えろ・・・何か何か・・・池松ドMだったな~・・・・てっ、何考えているんだ俺・・・ちゃんと考えろ・・・くっそっ、全然、冷静になれなくて頭が働かない。


 俺は心を落ち着けるために深く深呼吸をした。


 よしっ!もう一度考えろ・・・はっ!何か違和感に気づいたぞ。


 俺は思いついたことを言ってみることにした。


「そういえば、なんで俺をドームシールドで囲まないんだ?もし俺がお前の立場なら、ドームシールドをつくうって優雅に当銘神社から離れるぞ」


「それは・・・えーと・・・そうっ!我は晃殿を美少女ヲタクにするためにこうして対話しているのだ!」


「うそつけっ!さっき、『はあ、やはり晃殿はヲタク仲間になることが出来なかったか。我の話に感化されたのかもしれないとも思ったのだがな・・・諦めるか』って言っていたじゃないか!」

 俺がそうつっこむとプリティーガールズは黙ってしまった。


「お前・・・もしかして・・・そこから動けないのか?」


「うんっ?そんなことないぞ」

 明らかに上ずった声で答えた。


 ふーむ、試しに怒らせてみるか・・・それで動かなかったらプリティーガールズは何らかの理由で動けない、動けたら俺が死ぬ。・・・ハイリスクだがしょうがない。そうしなきゃ清世ちゃんを助けられない。


 何して怒らせよう・・・そういえばヲタクっておしていることを悪く言われると本気で怒るって聞いたことがある。・・・それでやってみよ。


「美少女ってーーーくそだよな~・・・なぜなら~・・・・やっぱくそ」

 理由を言おうとしたが、全然思いつかなくて言えなかった。


「はあーーーーー、何を言っている貴様!」


 そんな俺のわざとだと分かるような物言いで言ってしまったのにもかかわらず、プリティーガールズは簡単に引っかかってくれた。・・・どうやらヲタクがおしているものを悪く言われると怒るのは本当らしい。


 プリティーガールズはものすごい怒声をあげたが待った動かない。


「動けないんだな」


「ぐぬぬぬぬっ、そうだとも、清世ちゃんの周りに超ドームシールドをつくったせいで、妖力が底をつき動けない!・・・だが、我は10分したら動ける。そして、清世ちゃんは30分しなくては動けない。だから、我は逃げることが出来るのだ!海外にでも行って金髪美少女でも探してくるぜ!でゅっふっふっふ~」


「俺がその10分の間に封印できるかもしれないぞ?」


「でゅふふ、晃殿になにができるというのか?晃殿のお札は破いたから何もできまい」


「あっ、なんでお札を破けたんだ?動けないのに?」


「それは・・・我も分からない」

 そう言ってプリティーガールズは腕を動かした。


「動けるじゃないか!」


「知らなかった・・・それなら足も動かせるのであるか?」

 そう言って、プリティーガールズは足を見た。・・・今力を入れているらしい。


「足は動かぬか・・・」


「ものすごく、ガバガバだなっ!」

 俺は思わずつっこんでしまった。



まあ、プリティーガールズは足が動かないなら、そこから動くことはできない。つまり俺は10分以内にこいつを封印しろと・・・そういうことらしい。


「神木さん、おさい・・・」


俺は清世ちゃんの言おうとしていることに耳を傾けた。途中から聞こえなくなった。清世ちゃんの口が動いていることは分かるのだが。


「何をした!」


「清世ちゃんは我の敵であり、神様だ。起死回生の策を言うかもしれないから聞こえないようにした。でゅふふふふ」


よかった。清世ちゃん自信には何もしてないのか。


だが急がなくてはいけない、もう清世ちゃんが超ドームシールドの中にとらわれてから4分ぐらいたっている。後、6分で解決しなければ。


俺はそう思い近くの椅子に座って、考えることにした。


さっき清世ちゃんは『おさい・・・』の後、何を言おうとした?うーん、お財布?・・・なんだ?俺のお財布に何か入っているのか?


俺はそう思い財布を開いてみた。中を見てみるととても強力なお札が・・・はいっていなかった。


(そりゃあそうだよな。それで入ってたら怖い・・・お財布が違うなら他には・・・)


俺はあたりを見渡してみた。拝殿にいるので、お祓いとかに使う道具がある。これで封印できるのかもしれないが、俺には使い方が分からないから無理だ。前、横と視線を移し、後ろを見た。


そうかっ!お賽銭さいせん!それがあった。そこにお金を入れて、願いをかなえてもらうのか?・・・ほかに方法がないし・・・入れてみるか。


俺がそう思い、賽銭箱に行こうとすると清世ちゃんが俺に何かを伝えようとしているのが目に入った。清世ちゃんが指さしている方向を見るとそこには清世ちゃんが持っていた斜め掛けのカバンがあった。その中を見ろということらしい。


カバンの中を見るとまあ普通だった。女子小学生が外に出歩くときにもっていくものしか入っていない。


俺が清世ちゃんを見ると、お金を示すジェスチャをーしていた。俺が中に入っているお財布を取り出し、中を開けてみると・・・女子小学生では絶対に持っていないものが入っていた。


まずはおふだがたくさん入っていた。赤、青、黄、本当にいろいろなお札があった。もう一つはおさつだ。一万円札が・・・30枚近く入っている。これは、女子小学生が持ち歩いていい金額ではない、大人でもあまり持ち歩くことはないだろう。・・・まあ、清世ちゃんは神様なので持ち歩くのかもしれないが。


清世ちゃんはその後お祈りのポーズをしていたので、多分、このお金を賽銭箱に入れてお祈りしろということらしい。


「でゅっふっふ~、大金使って神頼みするのか?我ならヲタ活にその大金を使うがな!・・・そんな大金使ってっも神様は現れないぞ?」


プリティーガールズの言っていることを無視して俺は賽銭箱のところに向かった。そして賽銭箱に30万を一気にいれた。


「本当にやっただと!?馬鹿なのか?」

俺はまたもプリティーガールズの言葉を無視して、鐘を鳴らした。シャラシャラと音が鳴る。俺は金の下にある綱から手を放して、二回、腰を90度まげて礼をした。顔を上げて次は二回、大きな音が聞こえるぐらい強さで拍手をした。


そして俺は大声で叫んだ。


「この妖怪変態を封印してくださいっ!」


「なっ・・・何を言うか!我が美少女を愛することを変態というなんて・・・」


俺はまたも、プリティーガールズの言っていることを無視し、大きく、深々と、頭を下げた。


そして、俺が顔を上げた瞬間、目を思わずつぶってしまいそうな、強い光が俺を襲った。


俺が恐る恐る目を開けると、目の前には赤髪の美少女(もしかしたら、美女という表現のほうが正しいかもしれない)がたっていた。目も赤色で、自分の意思が強いことをビシビシと感じる。


「いや~お賽銭に30万円も入れるとか、神じゃん。まあ僕が神様なんだけどさあ~」


「なんで・・・当銘ちゃんが出てきたのだ?」

プリティーガールズが唖然とした声で言った。


「んっ?30万円も入れてくれたなら、さすがにその人の願いを聞かなきゃって思ったんだよ、これでかなえなかったら私の神社に参拝者が来なくなっちゃうかもだしっ!・・・それで晃くんだっけ?そこの妖怪を封印するのが晃くんのねがいだね?」


俺はものすごい急展開に唖然としていたが、俺は当銘ちゃんの言葉を聞いて意識を取り戻した。


「そうです!お願いできますか?・・・当銘様」

俺は心の中では当銘ちゃんと言っていたが、実際に見て、当銘ちゃんというには勇気がわかなくて、当銘様と答えた。


「分かった!・・・あと、当銘ちゃんって呼んでいいからね」

当銘ちゃんはそう言って、お札を取り出した。『直接封印』と書かれているお札を取り出した。清世ちゃんの『直接封印』のお札と柄がすごし違う。


当銘ちゃんはお札をもってものすごい速度でプリティーガールズがいるところに移動した。


そして、人間ではありえない速度でお札をプリティーガールズにはろうとした。だけどプリティーガールズは人間には到底できない早業でそれを防いだ。


「もーーめんどくさいな!神力を使ってさっさと封印するか!」


「神力を使うのは反則であるぞ!・・・やめてくれ、我には美少女が待っているのだ


当銘ちゃんはプリティーガールズの言っていることを無視して、言った。


「妖怪はこの世に悪、故に我らが神が妖怪を管理せん」

当銘ちゃんの周りになにか神々しい光が集まっていく。


「信仰力をいしずえに貴様を封印せん」

神々しい光がどんどん輝いていく。


「絶対封印!」

当銘ちゃんが叫んだ瞬間、当銘ちゃんの周りにあった光が、プリティーガールズめがけて、ものすごい速度で飛んで行った。


「我には美少女が待っているのい~~~」

プリティーガールズは最後まで、変態発言をしながらその光に飲まれていった。


光がなくなると、プリティガールズがいたところには一枚のお札が落ちていた。

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