第11話 妖怪との闘い 前編

俺は羽地を布団があるところまで運び、元いた拝殿のところまで戻った。


「神木さん、あと5分でドームシールドの効果が切れます」


「ああ、分かった」

俺はそう言って清世ちゃんの隣に座った。


「対話が失敗したらどうする?」

むしろ、失敗する可能性のほうが高いけど。やはり、『I♡美少女』の妖怪おっさんは信用できない。


「力ずくで封印するしかないんじゃないですか」


「そうなんだけどそれが、難しいんだよな~。俺は普通の高校生だし清世ちゃんも・・・透明になれるじゃないか。」

なんで失念していたのだろうか。


「そりゃあ、清世神社の外でも神力の基礎は使えますからね。だけど神力の基礎ぐらいならこの妖怪には通じませんよ。なにせ清世神社の神様である私が清世神社に入れなくなるような結界をはれるのですからね。・・・なので透明になっても妖怪おっさんには簡単に見破られますよ」

そう言って清世ちゃんは大きなため息をついた。


「そうか」

じゃあもし、対話が失敗したときどうやって妖怪を封印する。・・・清世ちゃん神力は自分の神社でしか発揮できないし・・・うん待てよ・・・神社・・・ここも神社じゃないか!


つまり神様が祭られているということだ。当銘とうめ神社だから当銘ちゃん?とかがいるんじゃないのか?


「当銘ちゃんと話すことはできるか?」


「うわあ、あったこともない神様をちゃん付けで呼べる神木さんに驚愕していますが、できますよ」


「その当銘ちゃんにこの妖怪を封印してもらうことはできるか?」


「はっ!その手がありましたか。なら対話に失敗したら当銘ちゃんに頼んでみます」



清世ちゃんがそう言ったその時だった。妖怪の周りをかこっていたドームシールドが消えた。どうやらドームシールドがつくられてから15分がったったらしい。


「でゅふふふふ、我はプリティーガールズ!美少女に愛され,美少女に愛された男っ!」

小汚いおっさんみたいな声で高々にその妖怪は言った。



「はっ!?」

俺と清世ちゃんは同時に変な声尾を上げてしまった。


「こんな妖怪だなんて知りませんでした。・・・これじゃあ秋葉原にいる妄想癖なおっさんですね。」

ぼっそっと清世ちゃんが言った。


「そんなこと言うな。てかなぜ秋葉原を知っているっ!?警察という言葉は知らなかったくせに!」


「お参りに来た人がラノベを置いて帰ったので読んだんですよ。」


「そのラノベは秋葉原にうらみがあるのかっ!」

俺はついそう突っ込んでしまった。


「でゅふふふふ、私は生粋のヲタクであるぞ!美少女ヲタクだ」


「・・・」

次は2人ともに無言になってしまった。・・・やばい、妖怪が何なのか分からなくなってきた。・・・大体妖怪って普通、ろくろっくびとかだろ。


それと、対話が無理だと直感で分かってしまった。同じ日本語を話しているが、住む世界が違うと、そう直感で分かったのだ。


「自己紹介はここまでとして、行動に移させてもらうぞ、でゅふふふふ」

そう言って妖怪おっさんことプリティーガールズは右手で清世ちゃんを指さして言った。


「超ドームシールド」

そう言った瞬間、清世ちゃんの周りに、半径1,6メートルの青色の半透明な半球ができた。さっきプリティガールズの周りにあったドームシールドより青色が濃い。超ドームシールドという名前から察するに、ドームシールドの強化版だろう。


「ちょっと、何するんですか!」

そう言って、清世ちゃんは超ドームシールドをドンドンと強くたたいた。


「あなたは神様だ。そして、ここの神様である当銘ちゃんと話せるらしい。当銘ちゃんにチクられて封印されたら、美少女のヲタ活ができなくなるのだっ!それが嫌だから、たとえ神様であろうと30分は外に出られない超ドームシールドの中に入れたのである!」


「おいおい、美少女のヲタ活ってのは美少女に憑りつくことなのか?」


「ああそうだとも、美少女に憑りついて美少女の生態系を観察し、そして実際に意識を乗っ取って美少女になってみる。それを繰り返すことによって美少女に対する理解を深めることが出来るのだ!」

プリティーガールズが力ずよく言った。


こいつ、やべー。対話は諦めるから妖怪を封印するわけだけれども、清世ちゃんは超ドームシールドの中なので助けてくれない。俺一人であいつを封印しなくてはならないのか。・・・はっ・・・こいつの考えに共感したふりをして警戒を解き、プリティーガールズに近づいてお札をはろう!


俺は右手をポケットに入れて直接、封印できる『直接封印』のお札があることを確かめた。

(よしっ!やるか)

心の中でそう言い、行動に出た。


「美少女の意識を乗っ取れるのか!そんな世界中の男が望むことを!いいな~どんな感じだったか教えてくれない?」


「おお、あきら殿は美少女ヲタクになりたいのか?もちろん聞かせてやるとも!」


「本当か!教えてくれ」



「噓でしょ、神木さんは好きなんですか?その・・・美少女の体が」

清世ちゃんが唖然とした表情で言った


「ああ、そうだとも!」

俺がどうどうと答えると、清世ちゃんはよりいっそう唖然とした表情になった。


「噓でしょ、私は今までロリコンなだけで意外といい人だと思っていたのに・・・」


(清世ちゃんが俺の演技に騙されている。意外と俺、演技うまいのかな?)

俺はそんなことを思いつつも一歩、一歩と友人に会いに行くような気楽な感じで歩くことを心掛けながらプリティーガールズに近づいて行った。


なんか歩いている最中に思ったことがあった。羽地にお札をはろうとした時と、とても状況が似ているなと。同じように羽地にお札をはろうとした時も、お札をはろうとすることを隠して、近づき、お札をはろうとしたのだ。・・・本当にほとんど一緒だな。


それならあの時と同じようにしよう。羽地と違ってプリティーガールズの下着を見てもなんとも思わないし、おへそにはらなくてはならないとかいう、縛りもないしな。


とうとう、プリティーガールズに手が届く範囲まで近づくことが出来た。


「では我が美少女の素晴らしさと崇高さを説きましょう」

そう言って話始めようとした瞬間、、俺は右のポケットから『直接封印』のお札を取り出して、プリティーガールズに向かって手を動かした。


「っっつ!」

プリティーガールズは俺のお札を持っている方の腕を握ったのだ。


「はあ、やはり晃殿はヲタク仲間になることが出来なかったか。我の話に感化されたのかもしれないとも思ったのだがな・・・諦めるか」

憂鬱ゆううつそうにプリティーガールズはつぶやいて、俺の持っている『直接封印』のお札を取り上げ、びりびりに引き裂いた。

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