第10話 厄払い
というわけで俺たち3人は学校をでて電車に乗り、
「では、厄払いをしますか!」
「あーあれね、七五三のときに社の中に入って巫女さんが踊ったりするやつ。」
羽地が言った。楽しそうだ。
「まあ、そんな感じですね。」
「えーと、厄払いの値段は・・・一万円!・・・マジかよ」
高すぎじゃないだろうか。お宮参りってそんなに金かかるのかよ。てか俺一万円も持っていないぞ!
「お金は大丈夫です。私の神社でお賽銭してくれたお金で払うので。」
「いいのか?お賽銭をそんなことに使って。」
「お賽銭って神社の運営に使うんですよ。そして、妖怪を封印して私が神社に帰ることは運営する上で非常に大切です。だってそうしなきゃ、清世神社は神様がいない『なんちゃって神社』になっちゃいます!」
「まあ確かにそうだな。『なんちゃって神社』になるのは良くないよな」
そして俺たちは受付でお宮参りのお金を払った。そしてしばらくすると、巫女さんが俺たちのところに来て、
拝殿の中に入ると、俺たちは長椅子に座らされた。俺と羽地は物珍しくてあたりを見渡した。そこから前を見ると、太鼓とかがあって、儀式を行うようなところがあった。
しばらく待っていると、装束(多分)を着た男の人がやってきた。そして、巫女さんが「頭を下げてください」と言われたので頭を下げた。そしたら、頭を下げているので見えないが多分、装束を着た男の人がお経を読み上げた。
お経を読み終わったら、巫女さんが「顔を上げてください」と言われた。そしたらまたすぐに、「頭を下げてください」と言われたので俺は「なんで頭上げたんだ?」と思いながら頭を下げた。
そしたら、装束を着た男の人(多分、神主)が棒にほそ長い白い紙をたくさんつけたしゃらしゃら?を左右に振った。
「あの人何やってんの?」
羽地が清世ちゃんに小声で聞いた。俺も気になったので耳を傾けた。
「今、お祓いしてるんですよ。さっきのお経みたいなのは
「そして、今、神主さんが持っているものは大麻といって・・・」
「えっ!
羽地が驚いたような声を出した。
「違います、違います。あれは大麻と書いて『おおぬさ』って読むんですよ。」
「へ~」
羽地は感嘆した声を出した。俺もさすが神様だと思った。やはり、神様なので神道については詳しいらしい。
「話を戻しますね。
清世ちゃんは話すのをやめ羽地の背中らへんを凝視した。俺も異変を感じて下げていた頭を上げた。神主さんも大麻を振るのをやめて、驚いた顔で羽地を見ている。
羽地の背中から黒いもやもやしたものが出てきていたのだ。
「大麻を振るのをやめないでください。」
清世ちゃんが冷静な声で言った。装束を着た男の人はそれを聞いて、少し驚いた表情をした後、大麻を左右に振り始めた。
「羽地、大丈夫か・・・聞こえる?」
やばい、反応してくれない。助けるためには・・・さっき清世ちゃんからもらった『直接封印』のお札をこの黒いもやもやに貼ったらいんじゃないか。
俺がそう思いズボンのポケットに入れたお札を取り出した。
「このもやもやは固体ではないのでお札は、はれませんよ。妖怪が出てくるのを待ってください。」
「ああ・・・そうだけどっ!羽地は大丈夫なのか!」
「息はしているので気を失っているだけです。」
清世ちゃんは羽地のところに行き、そう言った。
「冷静になってください!」
「ああ、分かった」
クラスメイトが意識を失ったことや、この黒いもやもやを見て、パニックになってしまった。こういう時こそ冷静に対処しなくてはならない。
そんな俺の小さな決心をよそに、どんどん羽地の背中から黒いもやもやしたものが出てきた。そのもやもやしたものはなにかを作ろうと一か所に集まっていった。だんだんなにを作ろうとしているか分かってきた。・・・人間だ、人間を作っている。
しばらくすると、羽地から出ていたもやもやがピタリと止った。残りのもやもやによって手や足などの細部までも作られていった。そして黒いもやもやが完全に消えた時、前にいたのは・・・小太りのおっさんだった。
その小太りおっさんは黒いズボンに黒いTシャツを着ていて。Tシャツには『I ♡美少女』とでかでかと書かれていた。
完全にお札をはる機会を逃してしまった。もやもやが消えたタイミングではろうと思ったのだが、俺の思っていた妖怪の姿とあまりにも違っているのと、そのTシャツに書かれた物凄い言葉に頭がフリーズしてしまった。
「うをおおおおおおおおーーーーー」
そんな使い物にならなくなった俺をよそに、清世ちゃんは筋肉もりもりの男がいいそうなおたけびの女子小学生版をさけびながら、お札を片手に妖怪(小太りのおっさん)のところに走っていった。
あと、2メートルで妖怪(小太りのおっさん)にたどり着きそうなところで突如、妖怪の半径1.6センチメートルに青色の半透明な半球が展開された。清世ちゃんは走っていた勢いを抑えられなくて、青色の半球に激突し
「いてて・・・これはドームシールドですか。」
「ドームシールドってなんだ?」
俺はこの展開されたドームシールド?をつんつんとつつきながら言った。
「これは15分間ドームシールドの中と外を隔離するものです。・・・これじゃあ、弱っているうちにお札を貼って封印するという作戦が実行できません。」
「マジか・・・」
俺が
「あのお・・・この人は何ですか?」
お祓いをしてくれた神主さんと巫女さんが気まずそうに俺に声をかけてきた。・・・そうだよ、神主さんたちにも説明しなくてはならない。
「ちょっと待ってください。」
神主さんたちにそう答えて、小声で清世ちゃんに話しかけた。
「おい、この
「対話してみましょう」
清世ちゃんも小声で返してくれた。
「こんな
「・・・」
『I♡美少女』の文字を前には何も言えないらしい。二人ともしばらく沈黙した。俺はどうやったらこの妖怪を封印できるか考える。
どうする、どうするっ!・・・やはり一度対話してみるべきなのか。他の方法が思いつかないし、それなら・・・
「やっぱり、対話してみるか・・・失敗したら終わりだけど」
俺は苦々しく言った。
「じゃあ対話ということで」
「ああ・・・それはそれとして、本当に羽地は大丈夫なんだよな?」
「大丈夫です、もう
「そうか、よかったあ」
俺はそう心からの安堵の声を出した。その後、神主さんと巫女さんにこの
「あと、別室でこの人を休ませてあげたいのですがいいでしょうか?」
そう言って俺は羽地を指さした。妖怪と戦うときに意識を失っている羽地がいたら危険だ。なのでここから離れたところで休ませてあげたい。
「いいですよ。受付の奥にお布団があるのでそこで休ませますね。」
「はい、お願いします。」
「だけど・・・運ぶのを手伝ってくれませんか?」
「あ・・・俺一人で運ぶので大丈夫です。」
一瞬きょとんとなったが、羽地をそこまで誰かが運ばなくてはならないのだった。神主さんたちにやってもらうのは忍びないし俺がやろう。
俺はそ言って羽地を背負った。思ったより重くはなかった。・・・てかそれよりもその・・・俺の背中にあるものすごく柔らかい感触に意識を持っていかれてしまいそうだ。
俺は極力、その柔らかさを意識しないようにして神主さんに案内された布団のところまで運んだ。
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