第4話 清世神社の妖怪
俺は健康階段を駆け下りて、があったところに戻清世ちゃんに鳥居の奥に何もなかったことを報告した。
「そうですか。一応聞きますが、金の装飾が付いた箱になにか問題はありませんでしたよね。」
「ああ、特に問題なかったと思うぜ、中央に置かれてた。・・・だけど開いていたな。」
「問題おおありじゃないですか!箱の中に何か入っていましたか?」
俺はそれを聞いて思い出す。他のところも見ていたのでそこまで詳しく見ていないのだ。
「多分・・・なかったと思うぜ。」
それを言うと清世ちゃんの顔は絶望的な色に染まった。目は死んだ魚のような目である。
「あはははは、それは本当なんですか?」
清世ちゃんにそう言われると俺は少し不安になった。なので一応の保険をかけといた。
「いや・・・そこまで詳しく見てないから、あったかもしれない。」
そしたら清世ちゃんは目に光を戻した。
「これは命令です!確認していってください。」
「わ・・・分かったよ」
清世ちゃんの目が本当にやばかったので確認することにした。これは情緒不安定だ。それにちゃんと見なかった俺の責任だしな。
というわけで俺がまた健康階段を息を切らしながらも頑張って登り切って拝殿に入った。金の装飾が付いた箱の中を見ると・・・なにも入っていなかった。
俺はそれを確認するとすぐさま下に降りて行った。
「なかったよ」
俺が気を遣う声色で清世ちゃんに言うと
「ガーーン」
清世ちゃんそんな効果音が聞こえてくるような表情をした。
「何か大切なものでもあったのか?」
俺が心配になって聞くと、清世ちゃんはぼそぼそと喋り始めた。
「うすうす気づいてたんですよ。鳥居が破壊された時点で・・・神木さんは鳥居がある理由を知っていますか?」
「えっと・・・まず神社は神様の神域で、 鳥居はその「聖域」と、私たちが暮らす「俗界」を隔てるものだろ。だから 鳥居から先は神様のいる場所なので敬意をはらって参拝しましょう、ということでだろ?」
俺はすぐにスマホを取り出してググって答えた。そして清世ちゃんの顔を見たのだが突っ込まれなかった。いつもの清世ちゃんならググったことを突っ込んでくるのに・・・どうやら相当箱の中身がなくなったことにショックを感じているらしい。
「80点ってところですね・・・実は、神木さんが言う「聖域」には神様もいるけど妖怪もいるんですよ。」
そんなことインターネットには書いてないぞ。神社に妖怪がいるって・・・神社って名前を変更したほうが良いんじゃないか。たとえば、神様の「神」と妖怪の「妖」をとって神妖社、とか。・・・だけどそんな名前のところに賽銭はしたくないな。
「その妖怪を「聖域」から出さないようにするために鳥居があるんですよ。そしてこの清世神社にいる妖怪は強力で人間に・・・特に若い女性に害を及ぼすので聖域の中にある金の装飾が付いた箱(金の箱)に閉じ込めていたんですよ。」
そこで清世ちゃんは深く考えるようなしぐさをしてから言った。
「んー、そう簡単に金の箱を開けられないはずなんですかね~。やっぱり400年ぐらい封印してからたったら金の箱の力も弱まっちゃいますか。そろそろ違う箱にしようかな~とか思ってたんですけど、次の日にしよう→やる気がでない→次の日にしよう→やる気が出ない→次の日にしよう、という感じでここまで来ちゃいました。」
そう言って清世ちゃんは肩を落とした。
それはダメだな。だけど滅茶苦茶わかる!俺も宿題を次の日しようと思ったのにその日も勉強せずに次の日にしようってなって結局、宿題をさぼることがあるもん!
「はあー、妖怪を管理することは神様の仕事なんですよ。なので出来るだけ早めに捕まえなきゃ神様ではなくなっしていまいます。それ以前にこの神社の神なのに神社に入れないし。その時点で神様失格ですね。」
神様にクビっていう制度あるんだ。それなら社長は 仏様なのかな・・・違うか、神社は日本だけだから
「清世ちゃん!なんでお前神社に入れないんだ?」
俺は清世ちゃんに言われて思い出したので、尋ねた。
「多分、私が管理していた妖怪が神力・・・いや妖力か。妖力を使ったんだと思います。私が神社の中では強力な神力を発動できるということを知っていたのでしょうね。だから私は神社外ではただの小学生ですね・・・まあ外でも少しだけなら神力を使えますが。」
そう言って清世ちゃんはため息をついた。
「あーあ、妖怪を捕まえることを手伝ってくれる人はいないかなー。女子小学生が困ってるよ~。小説だったらこういう時、年上の男の人が助けてくれるところなんだけどな~。」
清世ちゃんはそう言って俺をチラ、チラッ、チラッ、と見た。
(俺に手伝ってほしいんだな。こんなところでツンデレになるなよ。それに最後っ、助けない年上の男もたくさんいると思うぞ!大半が助けないぞ!)
俺は心の中でそうつぶやきつつ言った。
「俺が手伝ってやってもいいぜ。」
元々清世ちゃんを家に送ると約束したな、約束はちゃんと果たそう。
すると清世ちゃんは目を輝かせて、
「本当ですか!ありがとうございまーす。」
と、笑顔で言った。
「でっ、何を手伝ったらいいんだ。」
俺が聞くと清世ちゃんは待っていましたとばかりに言った。
「神木さんなら簡単ですよ。手伝ってほしいことは、若くて可愛い女性に封印お札を貼ることです!!」
「・・・」
無理に決まっているだろ!忘れているかもしれないが俺は女子と話すことが苦手なんだよっ!羽地のことを思い出してみろよ。一言もしゃべれていなかっただろ!
それに封印のお札を貼るってことはその女子に触らなくてはいけないということだろ。そんなのゼッタイッ、ムリ!・・・まあ相手が小学生なら簡単にできるが。なぜ小学生なら話せたり触れたりできるか俺にも分からないけど。
「ごめん。俺、多分手伝えないわ。」
俺は小さい声で言った。
「なぜ!やってくれるって言いましたよねっ!」
「いや・・・俺、女子とあまりしゃべれないし。・・・他のことなら手伝うから。」
俺がぼそっと言った。
「どうしてもしてくれませんか?」
と涙目で聞いた。そんなかわいい目で言われたので俺の心は大きく揺らいだ。だが、美少女と話すことなんて無理だし、挑戦してみて失敗したら面目がつかない。
「やりたいけど・・・ムリなことは約束できない。」
俺が言うと、清世ちゃんは急に泣き出した。
「えーーーーーーーーーーん。このままだったら私、神様クビだよっ。住むところも、仕事も、神様の基本的人権も、なくなっちゃうっ。」
俺はおろおろする。女子が泣いたときにどう対処したらよいのか分からない。小学生だとしてもだ。
「ごめんごめん。・・・分かった。分かった。俺が頑張ってみるから。ねっ泣き止んで。」
俺が場の流れで言った。すると清世ちゃんは俺の顔を見てにやりと笑った。・・・どうやらさっきのはウソ泣きだったらしい。
「ありがとうございますっ!」
だまされた。
「で・・・私は今日どこで寝たらよいと思いますか?」
清世ちゃんがぼそっと言った。少し声がかれている。
「・・・」
はてさてどうしようか。神社には入れないから寝れない。そうなると俺の家か。だがさすがに両親も妹も帰ってきているぞ。もしばれたら
かといって放り出すわけにもいかない。見た目が女子小学生なこいつを路地で寝かすのは危険すぎる。・・・まあ清世ちゃんは路地で今日、寝ていたが。
「透明になれたりできない?」
神社にいなくても少しなら神力を使えるので、もし透明になれるのなら親にばれずに家に泊めることが出来る。
「できますよ。だって神様ですもん。」
できるんだ。神様スゲー!ていうか、この時点で普通の小学生じゃない気がするのだが・・・スルーしよう。
「じゃあ透明になって俺の家の部屋に来る?今日そこで寝たらよいから。」
「なんか・・・自分の体に不安を感じないと言ったらウソになりますが、私は神木さんを信じてそうします!」
という訳で俺と清世ちゃんは同じ家で寝ることになった。そう、ひとつ屋根の中で・・・おかしい、元々清世神社に来たのは俺の家に清世ちゃんを止めないために、こいつの家に送り届けるはずだったのに!
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