第3話 清世神社
「こっちです。」
清世ちゃんの道案内に従ってこいつの家に向かっている。最初はがっちりと、まるで親と怖がる子供が手つなぐようにつないでいた。だけどだんだん怖くなくなってきたのか、今はカップルが手をやさしつつなぐようなつなぎ方だ。・・・カップルじゃないけどな。
それにしても、どんどん住宅街から離れていっているぞ。この先に家はないはず。たしかこの先にあるのは・・・
んっ、まてよ。清世ちゃんと名前一緒じゃないか!それなら本当に神様なのか!?考えてみれば、白髪なのがおかしいし、いくら小学生でも警察っていう言葉を知らないのもおかしい。
「もしかして、お前って本当に神様?」
「本当に神様ですよ。」
「じゃあ、神様の力みたいなもの見せてくれよ」
「いいでしょう。」
清世ちゃんはそう仰々しく言った後、突如と消えた。
「え・・・消えた!」
俺が驚いた声を出すと、俺の隣に清世ちゃんが現れた。
「これは簡単な神力でできます。すごいでしょ。」
清世ちゃんの言葉が耳に入らなかった。
ほっぺたをつんつんしたり、お姫様抱っこすることとかしたな。いやっ、もし巨乳セクシー美女にそれをやったらアウトかもしれないが女子小学生に対してやったからセーフだよな・・・いや神様だからアウトか。・・・あ~神様にセクハラをたくさんしてしまった~
「あの~神木さん、大丈夫ですか?」
俺が無口になっていたからだろう。清世様が声をかけてくださった。
「はい!清世様、もちろん大丈夫です。」
俺はできる限り敬語で答えた。
「なんか、気持ち悪いです。清世ちゃんでいいですよ。」
俺がせっかく敬ったのに清世様はそうおっしゃって、俺の手を離し、距離を取った。
「セクハラしてすみませんっ!誠心誠意これからは下僕として仕えますので!どうかゆるしてください」
俺は、土下座するような勢いで頭を下げた。
「神木さんはセクハラをするために生まれてきた生き物なので仕方がないので許します。」
「なんか・・・ディスられている気が・・・」
俺がぼそりと清世ちゃんに聞こえないぐらいの声でつぶやいた。
「まあ、神木さんが変態なことについてはおいといて、いつも通り話してください。」
「清世ちゃんがそう言うなら・・・分かった」
「はい!そっちの方が楽しいので」
清世ちゃんが笑顔で言った。
「そろそろですね。あの角を曲がったら私の家、清世神社です。」
清世ちゃんと色々話していたらもう、清世神社についたのか。それにしても、本当に清世ちゃんが神様だとは思わなかった。
「いや~今日は楽しかったです。ありがとうございました。またポテチとかコーラとかくださいね。・・・映画は見ませんけど。」
清世ちゃんは礼儀正しくお礼をしてくれた。
「うん、俺も楽しかったな。家族がいない時なら家に来てもいいぜ。」
そんな別れの挨拶をしながら歩いた。本当に今日は楽しかった。次に会った時もたくさん話したいと思った。
こんな感じで、フラグを立てたからだろうか。俺たちの気分はこの角を曲がったら急降下することになる。
俺たちは角を曲がって清世神社を見ると、鳥居が破壊されていた。粉々に砕け散っている。
「えっ。やばい、やばい。」
清世ちゃんはそう言って、さっきまでの楽しそうな表情からは一変し、焦ったような表情で神社に向かって走り出した。
だけど、元々鳥居があったところ・・・鳥居の残骸のところで急停止した。
「これ以上は、私は入れませんね。だけど神木さんならこの奥にも入れると思うので入ってくれませんか?」
俺は、清世ちゃんにそう言われたので、しかたなく鳥居の残骸をこえた。清世ちゃんは俺が鳥居の残骸より奥に行けたことを確認すると言った。
「この奥に本殿があるので、そこがどうなっているか教えてください。」
一方的に清世ちゃんが話を進めていった。
「ちょっと待てよ!」
俺は清世ちゃんの手をつかんだ。
「なんで神社に入れないんだ。そんなことあるわけないだろ!」
多分これは一人で鳥居が粉々に破壊された神社に入りたくなかったからだと思う。正直に言おう、怖い。多分さっきのホラー映画のせいだ。神社に妖怪が出る映画でこの壊された鳥居とその奥にある夜の暗い階段を見ると、それを思い出してしまう。
だけど、鳥居の残骸のところまで行って、俺は簡単に奥に行けた。だけど清世ちゃんはいくら引っ張てみても無理だった。・・・どうやら清世ちゃんの言っていることは本当らしい。
「これは、神様を入れなくする結界です。なぜこんな結界があるか知りませんが・・・ともかく神様である私は入れません。だから、様子を見に行ってくれませんか?」
そう言って清世ちゃんは俺の顔を見た。目がうるうるしている。・・・くっそっ、かわいいじゃないか。それに見た目が女子小学生であるこいつに「怖いから入れません」なんて言えるわけない。
「それなら俺は勇気を出して見に行くけど、お前は大丈夫?暗いところを一人で」
清世ちゃんが一人で帰るのが嫌だと言ったのでついてきたのだ。それを心配するのは当たり前である。
「大丈夫なわけないじゃないですか。今も足が、がくがくです。」
確かに、清世ちゃんの足は小さく震えている。そこまで頑張っているのならなおさら怖いなんて言えるわけない。
「分かったよ。じゃ行ってくるな。ここで待っていてくれ。」
俺はそう言って階段を上り始めようとしたら、清世ちゃんが待ったをかけた。
「待ってください。そういえばこの先に明かりはそんなにないのでスマホのライトをつけたほうがいいですよ」
俺は言われた通りにスマホでライトをつけた。
「これでいいな。」
「はいっ!がんばってください!」
清世ちゃんの応援を聞きつつ、俺はこの妖怪が出そうな暗い階段を登り始めた。
「はあ、はあ、はあ」
階段を登り始めてすぐの俺は息切れになった。正直言ってきつい。普段、運動していないからよりきつく感じる。
隣にこの階段の名前が書いてある。なになに・・・「健康階段」・・・ざっけんなよ。俺は怖いことを我慢して本殿にむかっているのに「健康階段」って。まあ確かにこれを毎日登ったら健康になるのだろうけど・・・それでもこの名前は良くないのではなかろうか。運動不足の俺には嫌味に感じる。
そんな訳で、「健康階段」を一歩、一歩、と登っているとやっと階段の終わりが見えてきた。そして最後の一段を登り終えた。俺は息を整えつつ前にスマホのライトを当てた。
特にそこまで変わっているところはない。普通に小さな拝殿があるだけだ。賽銭箱とシャラシャラふるやつがある。だけど中は暗くてあまり見えない。もしかしたら中になにか異常なものがあるかもしれないと思い中に入ることにした。
中に入って一番に目についたものは、「清世様最高」と達筆な字で書いてあった。ちょっと・・・いやかなり趣味が悪いなと思ってしまった。
そして、奥にライトを向けるとそこには金の装飾がなされた開けられた箱と、なんか高そうな和風の装飾品が置かれていた。この後もこの周辺を探してみたが、特に変わったところはなかった。
ふーむ、鳥居が破壊されていたらから、お化けがいたり、拝殿が半壊したりしているかもしれないと思ったんだけどな。だが、何もないことはとても良いことだ。素晴らしい・・・だから早く清世ちゃんに何もなかったから心配をする必要はないと報告しよう!
という訳で俺はさっさと破壊された鳥居のところに戻って何もなかったことを清世ちゃんに報告することにした。
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