第2話 神様との出会い 後編

「でっ、名前はなんて言うんだ?」

俺は自分の家に向かう途中に女の子に聞いた。名前も知らない人を家に上げるわけにはいかない。


「まず自分の名前から名乗ったらどうですか?社会に出たら、これは常識ですよ。」

女子小学生に社会について教わる道理はないが、確かにそうだ。それは、俺が悪かったかもしれない。


「俺の名前は神木かなぎひかるごくごくごー--く普通の高校生だ!」

俺は堂々と名乗った。すると、女の子も俺と同じように胸を張った。・・・まっ平だが。


「ふっふっふっ、聞いて驚け、私は清世きよ、そして私の正体は・・・神様です!本当なら話すことさえできないんでんすよ!」

女の子はドヤ顔で言った。


「・・・」

なんだろう。今の小学生では神を名乗るのがはやっているのだろうか。それとも、こいつはちょっと早めの、中二病なのだろうか。


俺が哀れみの目で静かに見つめていると、

「私はただ本当のことを言っただけじゃないですか。」

ムクーとほおを、膨らませていった。

「いや、お前さっき自分のことを、女子小学生って言ってたじゃんか。」


「えっ、いつですか?」


「お前さっき、女子小学生が頼んでるんだからいいじゃないですか。めちゃくちゃお腹すいたんです。・・・て言ってたじゃん。」

俺がぼっそと言うと、女の子改め清世ちゃんは「あっ」という顔をした。


「あれは忘れてください。私のお願いを聞いてもらうために言った嘘です!」

清世ちゃんは胸を張って嘘をついたことを告白した。・・・もちろん、まな板みたいな胸で、


「そうか~それならごめんな。神様の清世ちゃん。」

俺が(もう、どーでもいーや)みたいな感じでなげやりに言った。


「なんですか!その仕方がない、そういう設定にしてやるから感謝しろよ、みたいな受け答えは!これは本当なんですよ。ほ・ん・と・う」


「そうだな~清世きよちゃんは神様なんだよね~。」

俺は誰が見ても嘘だと分かる笑顔で言った。


「だいたい、神様に対してちゃん付けも良くないでしょ!<清世様>って呼んでください!神様に対して無礼ですよ。」


「お前どう見ても神に見えないし、白髪であることをのぞいたら、普通の女子小学生じゃん。」


「むっきー---」

清世ちゃんほっぺたを最大まで膨らませた。なんかそこまで膨らんだほっぺたを見ると触りたくなる。よっし、さわろう!


俺は自分の指で清世ちゃんのほっぺをつっついた。・・・おお、意外といいぞ。普通にこの柔らかいほっぺが左右に動くのもとても面白いのだが、ほっぺがひんやりしていて気持ちい。


そして、強くほっぺたを押すと話したときに反動で元の戻るのもなんか良い。そしてつっついたときの清世ちゃんの驚いた顔がまたいい。俺は魔法にかかったかのようにつっついた。・・・つんつんつんつん・・・


ぷっしゅー、急に口から息が出てきた。俺が強くつっついて耐えられなかったのだろう。

「うわっ!」

俺は急いで指を離した。・・・新しい性癖に目覚めるところだった。この性癖に目覚めてしまったら刑務所行になりそうだ。


俺が清世ちゃんに目をやると顔を真っ赤にして息を大きく吸ったところだった。


「女子小学生にほっぺたをこの高校生がなめました~~助けてくださいーー--」


なめてねーよ。つんつんしただけだよ。周りを見渡すと、近くにいた50代ぐらいのおばちゃんが携帯電話を取り出した。


「すみません、警察ですか?ここに、女子小学生に対してわいせつ行為(ロリコン)を男子高校生がしていたので、こっちに急いで来てくれませんか?」


やばい。女子小学生のほっぺたつっついただけで通報された。逃げなくては。そうしなきゃ、捕まってしまう。だが俺はここで痛恨の失敗をしてしまう。俺は焦っていて、清世ちゃんをお姫様抱っこしてしまったのだ。


「ぎゃーーーー、変態ロリコン痴漢《ロリコン》!!助けて~」

その声を聞いたおばちゃんは電話に向かって言った。


「あっ、今お姫様抱っこして逃げようとしてます。早く来てください。・・・あの高校生・・・クズだ。」


俺は、その両方の声を無視して家に全力疾走した。





俺は家につくとリビングに清世ちゃんを座らせ話すことにした。

「たしかに、さっきのは俺が悪かったけどさ。警察に言うのは良くないんじゃないかな。」

俺が言うと清世ちゃんは予想外の反応をした。

「警察って何ですか?」


「えっ、警察を知らないの。」

俺は驚きつつも、警察について大まかに説明した。

「あ~町奉行のことですか。」


なんだろう、清世ちゃんは江戸時代の人なのだろうか。町奉行って江戸時代の警察じゃん。

「ゴーゴー」

清世ちゃんのお腹の中から台風の風のような音が鳴った。さっきも聞いたがこれはすごいな。俺はため息をついた。


「もういいよ。ほら、約束通り食べ物やるよ。」

そう言って映画を見るためにたくさん買った、ポテチとコーラを持ってきた。


「わー-い、ポテチとコーラだ。」

清世ちゃんはポテチを一袋とって食べ始めた。警察はしらないのにポテチは知っているって・・・そんなことある!?


「ポテチは知っているんだ。」

つい声に出していってしまった。

「当たり前でしょ!ポテチを知らない人なんてこの世にいます?」


「ポテチはどこで知ったのか教えてくれない?」

俺は優しく言った。警察とポテチなら絶対に警察のほうが知っていると思う。


「えっ、なんか私の神社に参拝しに来た人がくれたんです。」

清世ちゃんはポテチを食べながら、昔を懐かしむ表情で


「いや~初めて食べた時は感動しましたよ。こんなおいしいものがあるのかって。私、そのポテチくれた人の願いを本気でかなえました。」


もし清世ちゃんが神様だとしても、神様にポテチを渡すのは頭が狂っている。そんな狂っている人の願いが気になってきた。


「ポテチくれた人の願いって何だ?」

俺が聞くと清世ちゃんは思い出す仕草をした後に


「えーと、確か<おかあさんがはやくわるいおにいさんとわかれてほしいです>って汚い字で書いていましたね。」


「・・・。」


ちょっとまって!めっさ重いやん。それならポテをあげるのも仕方がないと思うよ。それにその子、漢字を使ってないから幼稚園か小学校低学年だろうし。


「ちなみに、どうやって解決たんだ?」

俺は興味本位で聞いてしまった。だが、すぐに後悔することになる。


「その悪いお兄さんに、違う美人な女とつき合わせましたね。」

被害が拡大てますやん。てか、もっと違う方法があっただろ。・・・いや、別の方法を言ってみろと言われても俺には言えないが。


ヤバイ。俺が一方的に重くしているだけだがめちゃくちゃ空気が重い。


「ポテチ食べながら映画を見よう!」

俺はこの空気に耐えられなくてそう言い、テレビにDVDをセットするために椅子から立った。


「映画~見る見る。」


そう言って新しいポテチの袋に手を伸ばした。・・・えっ、ちょっとまって、ポテチどれだけ食べてるんだよ。1、2、3、4,5・・・・13袋食べてるぞ!いつそんなに食べる時間があった。・・・なんかあんな重い話をしたのに俺だけが気を使ったり、ポテチをめちゃくちゃ食べたりして、なんかムカついてきた。

このムカつきを晴らすために一番怖い映画にしよ!


<2時間後>


「怖いよ~。神木さん」


清世ちゃんは半泣きでだきつてきた。さすがに小学生にくそ怖いホラーは見せられないと思い、そこまで怖くないやつにしたのだが半泣きだった。

最初は、

「ホラーを見るんですか。神様なんですから楽勝ですよ。」

とか言って、ポテチを食べながら見ていたのに、話が進むにつれてちょっとづつ、俺のほうに近づいていき最後は抱き着いてきて半泣きになったという訳だ。


「日が暮れてきたしそろそろ帰ったら?」

「絶対に無理いいいいい~」

俺のズボンにしがみついている。暗いのも怖いようだ。


清世ちゃんはしばらくすると上目遣いて俺を見つめて、

「今日ここに泊まっちゃだめですか?」

と、めちゃくちゃ可愛く聞いてきた。


もちろん、いいyo・・・いや、女子小学生を男子高校生の家に泊めるなど言語道断!絶対だめだ。俺は、ありったけの理性を振り絞って、


「ダメだ、俺が送ってやるからそれでいいだろ?・・・一緒に手をつないてもいいぜ!いや、お姫様抱っこしてもいいだぞ!」

俺がそう言うと、清世ちゃんはさっきのことを思い出したのか顔を赤くした。


「お願いします。・・・だけど、お姫様抱っこは遠慮しときます。」

清世ちゃんは俺に対して引き気味で言った。 悲しい。何も悪いことしていないのに!


「おっけー。いますぐいこ行こ!そうしないと日が沈むし。」

俺はスマホと財布だけとって、家を出た。

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