第6話
リリアが六神に呼びかけると、すぐに頭の中で声が響いた。
≪お呼びですか、主≫
≪やっと呼んだか、リリア≫
≪リリア様、ご無事で≫
≪リリアー、大丈夫ー?≫
≪おまたせっ!≫
≪全く、無茶ばかりするんじゃないよ≫
皆がほっとしている様子がそれぞれの言葉や声音から伝わる。リリアは、自然と笑みをこぼした。
彼ら六神の姿は見えないが、暗闇の中にいてもすぐ傍にいることが肌で感じられる。不思議と安心感があり、リリアは無意識のうちに息を止めていたことに気付いて、深く息を吐いた。
「みんな、ありがとう。あのね、みんなにお願いがあるの」
≪リリアの頼みなら、何でもやってやるさ。な?≫
カルが他の神龍に同意を求めると、口々に返事が返ってきた。その言葉に嬉しい気持ちで胸がいっぱいになる。
「本当にありがとう……。みんな、わたしに力を貸してください」
≪もちろん!≫
六神の声が揃う。その声にリリアは背中を押され、揺らいでいた思いが固まる。もう迷いはなかった。
「バイオレットの思い通りにはさせない。光と闇が一つになった世界をきっと、生み出してみせる!! みんなっ!」
リリアの掛け声と共に今まで真っ暗だった辺りがほんのりと明るくなっていく。リリアは目を閉じ、ボロボロになっている両腕を上に突き上げる。
『リリア、愛してるぞ』
微かにダンの声が聞こえ、リリアの手に重ねるようにダンの温もりを一瞬だけ感じたような気がした。だが、すぐに六神の力を腕に感じ、彼の気配はかき消される。その代わり、頭上からしゃがれた声がした。
「小癪な真似を……!」
どこからともなく笛の音が聞こえ、ずんっと一気にリリアの身体が重くなる。音に圧されているのだ。
「くっ……」
リリアは歯を食いしばった。腕がどんどん重くなっていくのを感じ、焦りを覚える。けれど、うまく腕を動かせずにいると、クウの声が思いの外、すぐ近くで聞こえた。
≪やれやれ。本当に世話の焼ける子だねぇ、あんたって子は≫
腰の辺りに温もりを感じる。
≪フライ、ユエ。リリアを上に引っ張っておやり≫
≪わかったー!≫
≪御意≫
二匹が返事をした途端、ふわっと身体が浮かび上がる感覚がした。
≪グリ、蔓でリリアを固定するんじゃ≫
≪はぁい≫
続いて、いくつもの蔓が伸びてきて、リリアの身体に巻き付く。程よい締め付けで固定されて、自分の力で立つ時より幾分楽になった。
「みんな……、ありがとう」
リリアの言葉にクウの尾が頬を掠めた————ように感じた。
リリアは涙が零れそうになるのをぐっと堪え、上を見上げる。
「バイオレット! あなたにこの世界を支配することはできないわっ。諦めなさい!!」
「はぁ? あんたに何が分かるっていうのよ……!」
さっきより一層高い音が雨のようにリリアに降り注ぐ。だが、リリアの周りには何の変化も起きない。それもその筈。リリアの頭上にはフライとユエがいて、二匹が攻撃から結界で守ってくれているのだ。さらに、両側にはハクとカルがいる。
攻撃から免れている隙に、再度両腕を突き上げてリリアは唱えた。
「
リリアの声と同時に六匹の龍の咆哮が闇の中で響き渡る。
やがて、光の矢が無数に飛び散り、風が水と炎を巻き込んで竜巻を起こし、蔓や葉とともに上へと伸びていく。光の矢によって闇の力が徐々に薄れていき、星空が微かに見えた時、上空に雲が集まり竜巻が吸い込まれていく。
さらに、そこに紛れて漆黒の矢が一本、竜巻の中で真っ直ぐに飛んでいくのが見えた。リリアはその矢にダンの力を感じつつ、上空に向かって叫ぶ。
「バイオレット! もうあなたの好きなようにはさせないわっ! ゆけっ、
雲に吸い込まれていたはずの竜巻が巨大な龍の姿となって再び現れ、バイオレットの頭上へ放たれた。ものすごい勢いの風が吹き荒れ、リリアの周りに纏わりついていた闇と化していた影も吹き飛んでいく。
「い、いやっ、いやぁぁぁぁぁぁ!」
魔物に姿を変えていたバイオレットの姿が人の姿に戻りつつあった時、一本の漆黒の矢が辺りの風を斬りながら姿を現して、バイオレットの胸に突き刺さった。
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