第7話
先ほどと同じように、頭の中で光の輪を思い描く。今度はその輪を三日月型に変えると、矢の形をしたユエの光がリリアの手に握られた。三日月型の光の弓に形が変わり、リリアは矢を引く。右腕がじわじわと痛みが広がっていくが、歯を食いしばって耐えながら亀裂にめがけて放った。矢は勢いよく亀裂に刺さり、光が分散されて飛び散った。
「やった!?」
眩い光が収まり、結界を確認すると亀裂が少し大きくなっているだけだった。
「嘘……、どうして」
《恐らく、何重にも重ねられているのかもしれません》
「ど、どうすれば」
ふと、リリアは六神龍の力を全て使えば、結界を破れるのではないかと思いつく。
自分の手を見つめる。先程、矢を放ったことで少し左腕も皮膚が爛れていた。まだ、力は完全に身体に馴染んでいるわけではないようだ。しかし、まだ方法はある。もう少しだけなら頑張れるだろう。
リリアは顔を上げ、ユエを見つめる。ユエは一瞬だけ眉をひそめたが、何も言わずゆっくりと首を縦に振った。それを合図にリリアは、再び目を閉じる。
(フライ、カル、ハク、グリ、クウ、聞こえる? 私に力を貸してほしいの)
心の中で彼らに呼びかけると、すぐに頭の中に五匹の声が響いた。
《リリアのためなら!》
《おうよ》
《呼ばれるのをお待ちしてましたよ》
《ぼく、……がんばる!》
《やれやれ、あまり無理をするでないぞ》
「ありがとう、みんな」
リリアはそっと微笑む。そして、両腕を空に向けて突き出す。ユエが龍に姿を変えて、右腕に巻き付く。結界によって姿は見えないが、他の五匹の気配も左右の腕に重みとともに感じる。
至近距離であれば、例え結界が張られていてもリリアは、六神の力を使うことが出来るらしい。物は試しにやってみようと思って彼らに呼びかけてみたが、本当にできるとは思いもよらなかった。どうやら、結界に亀裂が入っていて力が弱まっているのも助けとなったのだろう。
再度、リリアは光の輪を描く。そこに炎が巻き付き、風が吹き込む。炎がさらに燃え盛り、さらに蔓が巻き付いていき、水が降り注がれる。それを天へゆっくりと浮上させて、最後に空と融合した。
「行くよ、みんな!
同時に両腕を亀裂に向けて振り下ろす。六神の力で大きくなった輪が、速いスピードで回転しながら勢いよく放たれた。
「行けーーーーーー!!!」
両腕に残ってる力全てを込めると、回転速度が上がり、亀裂が一気に広がった。視界が徐々に明るくなっていく。辺りに砂埃が舞う。
「リリアっ!」
レイウェンの姿がさっきよりハッキリと見えた。
「はぁ……。は……、レイ……」
肩で息をしながら、リリアは今にも倒れそうになるのを堪える。レイウェンがすぐに駆け寄り、身体を支えてくれた。
「もう大丈夫。お疲れ、リリア。よく頑張ったね」
彼の優しく頭を撫でる温もりに心地よさを覚えながら、リリアはゆっくりと目を閉じた。
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