支度部屋・午後五時十五分

 吉川よしかわ。なあ、吉川泰牙よ。おれの、生涯最強の宿敵さんよ。


 お前は、きょう、おれに勝てると思ってるよな。


 おれの事を舐めているからじゃなくて、おれの実力と弱点と得意と不得意とその他もろもろ、全部分かっていて、分かっているから、自分は勝てるって、そう思っているよな。


 そう、お前はおれが最弱の大関崩れだからって、絶対に油断なんかしない。絶対に。吉川、お前がそんな安い奴じゃないってことは、おれが誰よりもよく知っている。


 だから、横綱、お前を止めてやるよ。


 俺が。

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