第6話 嫉妬って気持ちイイ!
休日の今日、珍しく義妹にせがまれ、彼女の買い物に付き添うことになった。
一日かけて洋服、雑貨、カフェ……ありとあらゆるお店を出たり入ったり。そして最後に連れてこられたのがこの下着屋だ。
挑発的な下着を身に着けたボディを前に、目のやり場に困った俺は、店の入口で義妹の買い物が終わるのを待つことにした。
こんなところを会社のヤツに見られたら気まずいなぁと思っていると、道の向こうから俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
よく見ると、俺が働く会社に最近入社してきた女子社員だ。……ヤ、ヤバイ! こんな店の前に一人で立っているなんて、変態かと思われてしまう!
「あっ! タクヤ先輩!」
「お、おぉ! こんなとこでどうした?」
焦る俺をよそに、後輩は笑顔で近づいてくる。彼女は教育担当だった俺のことをとても慕ってくれている。研修期間を終えた今でも、分からないことがあると俺のデスクへ質問をしに来るほどだ。
「友人と買い物に来てて。タクヤ先輩は一人でお買い物ですか?」
「え……あ、うん……」
正直に答えるべきか迷っていると、店の中から義妹の甘えた声が聞こえてきた。
「たっく〜ん、これはどう? 似合――」
「リ、リナ……」
俺と後輩が立ち話をしている姿を見た義妹は、一瞬真顔になったように見えたが、すぐにニコリと天使の笑顔を見せた。
「せ、先輩……、お隣の方は……?」
「あぁ、コイツは――」
「たっくんの彼女でーす!」
「……!?」
驚く俺と後輩をよそに、義妹は俺の腕に自分の腕を絡めた。そして上目遣いで選んだ下着を見せてきた。
「それよりもさぁ、たっくん、この下着の色好きでしょ?」
「…………!?!?」
ま、まぁ確かに好きですけれども、それ今言わなくても良くない!? てか、俺の好みを聞いてくれるの? そんな権利を与えられると、嫌でも、俺が選んだ下着を着ている義妹の姿を想像してしまうんですけど!
「あ、あの……」
その声で、俺と義妹の他にまだ人がいたことを思い出した。慌てて後輩を見ると、明らかに先程より顔色が青ざめている。
「大丈夫か?」
「あ、はい。で、では私はこれで……。また月曜日……」
ガックリと肩を落とし、うなだれて歩く後輩の後ろ姿を見送ると、義妹は腕をアッサリと離した。
「……な、なんだよさっきの。あの子に誤解されたじゃないか」
「あの人、誰?」
「会社の後輩だけど?」
「ふ〜ん……」
女という生き物がよく分からない。その後の義妹は、疲れのせいか、家に帰り着くまで不機嫌なままだった。
その夜ベッドで寝ていると、腹部に重みを感じ目が覚めた。
何が起こっているのか状況を理解できない。だって、意味不明なことに義妹が俺の上で馬乗りになっているのだ。
「な、なにやってんの!?」
「……ねぇ、たっくん? 今日街で会ったあの子のこと好きなの?」
「へ? い、いや別に?」
「ほんとに〜?」
そう言うと、義妹は馬乗りになったままユラユラと腰を動かし始めた。
「リ、リナ……その動き色々とヤバいから止めて」
「え〜? 気持ちいいでしょ? でもまぁ、たっくんが『これから先、彼女を作らない』って約束してくれたら止めてあげる〜」
「はっ? 何言って……くっ……」
「ねぇ、どうする?」
「わ、わかった! か、彼女は作らない!」
マジで色んな意味でギリだ。
俺の答えを聞くと、義妹はようやく腰を動かすのをやめた。
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