二
「神は、この世界を永遠に護り続けてくれる」
と皆一様に信じていた。
信じていたからこそ何よりも大事に、大切にしていた。
そしてあの日、神は僕らを見捨てた。
と、大抵の民は思っているだろう。
大災厄で民の半数が死に、神への信仰も、願いも消え失せた。
だが、真実は違う。見捨てたのでは無い。
凶悪すぎる災厄からは、神ですら僕らを護れなかったのだ。
そうして民から望まれなくなった神は存在意義も価値もを失い、災厄で傷つけられた体を街中に打ち付けながら暴れ続けている。
僕は知っている。
僕らが神を慕っていた分、神もずっと僕らを想い護り続けていた事。
この世界に豊かさと暖かさを与え続けていた事。
だからこそ、僕はここに来た。
自分の生死で精一杯の民から願いと信仰を取り戻す事は到底不可能。
僕にできるのは、痛みに呻き続ける神を一刻も早く楽にさせ、暖かく葬る事。
足早に現場に着くと、めちゃくちゃになった街と、怨念を撒き散らす《神》が待ち受けていた。
平和の国「
___《
比喩ではなく、身体中に火を纏っていた。
肌は焼けただれ、全身を黒い
麒麟は吠えながら家々を薙ぎ倒し、その体と共に燃やしていく。
『ごめんなさい』
一言、吐き出して刀を抜いた。
麒麟の足めがけて飛んだ刃は、関節へヒットする。
「ギャアァア!!」という叫び声と共に、麒麟の体制が崩れた。
その隙に今度は首へと刀を向ける。
思いっ切り振りかぶって
裂く。
だが、その刃は微塵も届かない。
焼け焦げた外殻らしき物に阻まれ、肉体にすら響かなかった。
辺りを響かせるのは、主神の呻き声。
これでは拷問しているのと同じ。
痛みも苦しみもなく天に送る事が出来なければ意味が無い。
胸が張り裂けそうになる。
今のこの状態ではどうしようもなかった。
一旦引こう。何か策はないか、この国を回って探ってみよう。
そう決心し、耐え難い苦痛を叫び続ける神を背に、僕はその場を離れた。
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