第1586話、避けたのに
「みーちゃ、どうするの?」
『どうするんだい!』
「どうするかな・・・」
俺達は山の中から見下ろしており、向こうは割と開けた所を通っている。
というか、街道だな。回り込む様に街道を走っている。
このまま街道に出てしまえば、確実に連中とかち合うだろう。
ある程度までは街道を使い、目的地に近い所で山に入る感じか
それに獣に乗って速度を上げる為にも、足場の悪い所は避けているんだろう。
乗っているのは猫でも犬でも馬でも爬虫類でも無い。鳥だ。
ただし二足では無い上に、太い足で走っているので多分と付け加えておこう。
一応羽らしきものはある。意味が有るのかは知らないが羽を広げているのが居る。
陸を走る上では邪魔でしかないと思うんだが。何とも合理性の無い生物だな。
いや、そんな事は今どうでも良い。兵士達をどうするかだ。
幸いこちらは山の中なので、隠れさえすれば見つかる事は無いだろう。
山を突っ切れば絶対にかち合わないし、そもそも連中の目的地はもっと奥だ。
おそらくは異変の調査に駆り出された兵士であり、ならば下手に絡む必要も無い。
「順当に避けるか」
「そっかー・・・」
『えー・・・』
兵士達を避ける事を決めると、シオと精霊が物凄く残念そうな顔を見せた。
反対をする訳では無い様だが、どうやら接触したかったらしい。
何か思う所でもあったんだろうか。どう考えても面倒だと思うんだが。
「モフモフ・・・」
『羽・・・』
よし、山を突っ切る。無視だ。下らん。真面目に考えた時間を返せ。
そうと決まれば暫く兵士達を観察し、まだ山に入って来ない事を確認してから走り出す。
「・・・ちっ、じゃまだ」
「ギャンッ!?」
途中で魔獣に遭遇したので、雑にぶん殴って魔核だけ拾っておく。
逃げるなら見逃がしたが、向こうから襲って来たからな。
こういう犬というか、オオカミというか、この手の魔獣は何処にでも居るな。
繁殖しやすいんだろうか。何処の土地でも順応しやすいのかもしれないな。
等とどうでも良い事を考えつつ、山を抜け、平坦な森も抜け、街道らしき所まで出た。
「・・・もう街が近いのに、随分と人通りが少ない様な」
『僕たちで独占だー!』
街に入る者も、出る者も殆ど居ない。遥か彼方には見えるが、街の傍には皆無だ。
そして彼方に居る人間達も、街から離れている様に見える。
「逃げている、のか?」
幾らなんでも港町で、しかも明るい内にここまで出入りが無い事は普通じゃないだろう。
となれば先の調査隊の件を考えると、アレは逃げている途中と考えるのが自然だ。
既に街中に入っている人間は、危険だから出ない様に指示が出ているか?
「余り騒動を起こす気は無かったんだがな・・・」
『もー、妹ってばおっちょこちょいさん!』
諸悪の根源が何か言っているので、取りあえず全力で空へと投げ捨てる。
本当は地面に叩きつけたかったが、そうなると更に騒ぎになりかねないからな。
「さて、門は閉まっている様だが・・・素直に入れてくれるだろうか」
余り大きくない門を見詰めながら呟き、街道をポテポテとのんびり進む。
走っても良いんだが、加減を間違えると面倒臭い事になるだろうからな。
とはいえもう若干諦めている。既に無理矢理通る思考になっている。
とはいえ勿論素直に通してくれるなら、それに越した事は無い訳だが―————。
「貴様等、街道を使っていないな。少々話を聞かせて貰おうか」
街に付いたら、兵士に武器を向けられてしまった。
どうして街道を使ってない事がバレたのか。
出た位置自体は、街から結構離れていたと思うんだが。
面倒を避けたのに結局意味が無かった。もう色々考えるの面倒になって来たな。
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