第1584話、高速の魔力
「ん?」
今高速で魔力が走り抜けていくのを感じた。
俺の移動よりも遥かに速く、だがか細い魔力の流れを。
攻撃をされたのかと一瞬構えたが、特にそういう気配は無い。
「う? どしたの、みーちゃ」
『小さい方? 大きい方? 流石に大きい方を空から落とすのはどうかと思う―———』
どうかと思うのは真っ先にそれが出てくるお前だ。
反射的に精霊を地面に向けて投げ捨ててから、一度移動を止める。
「シオは何も感じなかったのか?」
「う? シオ? なにかあった?」
「・・・ヨイチは?」
「ヨイチも、わからない。ねーちゃ、なにか、かんじた?」
シオとヨイチは何も解らなかったのか。今のを感じたのは俺だけか。
これは単純に魔力操作の練度の違いか、それとも俺とシオ達の生態の違いか。
どちらかは解らんが、流石に気のせいという事は無いだろう。
ただ今のが何なのかは気になる所だ。気にしても仕方ないのかもしれないが。
「向こうに流れていったな」
既に魔力の流れは見失っている。かなりの高速で飛んで行ったからな。
だが方向は解るので、そちらを辿れば魔力の向かう先が解るのだろうか。
特に気にする必要は無いんだが、気が付いてしまったせいで結構気になる。
何より俺だけにしか感じ取れなかった、という点がかなり気になっている。
もし感知されない事が前提であれば、連中の仕掛けの可能性もある訳だしな。
「シオ、少し寄り道をする。良いか?」
「いいよ。シオは、みーちゃについてってるだけだもん。ヨイチもいいよね?」
「きゅっ、ヨイチも、いい」
聞いておいて何だが、反対されるとは最初から思っていなかった。
そもそもシオの言う通り、目的地に向かう理由が二人には無い訳だからな。
多少より道をした所で特に文句も無いだろうし、何より既に寄り道をしているしな。
関係の無い国で数日滞在など、もし目的意識が強ければ気に食わないだろう。
まあ、それは置いておこう。今は魔力が流れた方向に向かってみるか。
「それじゃ、行くぞ。少し飛ばすぞ。倒れないように気を付けておけよ」
「うっ!」
「きゅっ!」
寄り道をするのは確定とはいえ、出来れば日が暮れる前に何処かの街に泊まりたい。
なので殆ど興味本位の移動に時間をかける気は無く、出せる限りの速度まで上げる。
勿論急ブレーキが出来るラインだ。止まれない速度には流石に上げない
「・・・やはり追いつけはせんな」
暫く追いかければ先程の魔力を感じるかと思ったが、やはり一切感じない。
完全に俺を追い抜き、遥か先まで向かってしまっている様だ。
となるとめぼしい何かが無い限り、魔力の向かった先は解らない。
一応眼下に怪しげな場所が無いか探しているが、目視では少々難しいだろう。
俺が生まれた場所だって、蓋を壊してなければ見つけられたかどうか。
「・・・うん?」
だがそうして飛ばす事少しして、前方に変化が現れた。
具体的には船が見える。後は港も見えて来た。
つまり俺の目的地に辿り着いた、という事なんだが・・・。
「あの魔力は、ここに流された、のか?」
道中怪しげな所は無かった。見つけられなかっただけの可能性も勿論大きい。
ただ本当にあの街に魔力が流れたのであれば、連中が街中に潜んでいる可能性も有りか。
まあ行ってみれば解る事か。もし潜んでいるなら、何か仕掛けて来るだろうよ。
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