第1566話、呪いの道具の確認方法
「貴殿は呪いの道具に触った事は有るか?」
「水晶なら殴ったぞ。剣に腹を貫かれた事もある。他にも幾つか殴った事はあるな」
『お腹の時は生きた心地がしなかったね! 全くもう、妹は無茶ばっかり! プンプン! 今回の事だって兄はちょっと怒ってるんだよ! 肩に大怪我しちゃってもう!』
煩いな。アレは俺にとっても反省点なので、反論し難いんだよ。
女王の性格を把握したつもりだったのに、完全に虚を突かれた一撃だった。
精霊ですら割って入れない程の、ほんの一瞬の最後の一撃。全くやってくれる。
「・・・その歳で随分壮絶な人生を歩んでいるな、貴殿は。とはいえ、それはもう力を放っている状態の話だろう。そうではなく、力を放っていない、不使用状態の物を触った事は?」
不使用状態・・・杖は牛が壊し、剣は小人が壊し、使い手共の道具はそのままだ。
呪いの侵された人体は、そもそも力を発するまで近づかなかった。
そういえば無いな。不使用の道具に触った事は。
「精霊付きだから特殊なのかと思ったが、どうやら経験が無い様だな。呪いの道具はな、持った時点でそうだと解るんだ。これは良くない物だと。危険な物だと。悍ましい力の塊なのだと」
「ソレもか?」
「ああ。とはいえこれはかなり特殊で、私達王族にしかその感覚は無いがな。他の人間が持った所で、少々綺麗でやたら頑丈な水晶に過ぎない。我が王家の女のみを・・・呪う水晶だ」
一瞬どういうべきか悩んだ様に見えたが、結局は誤魔化す事はしなかったか。
何処まで行ってもその水晶は、禍々しい力を持った呪いの水晶だ。
命を喰らい、その命を糧として力に変える、王家の女を食う為の存在だ。
今は女王が中に居る事で、これまでとは状況が変わるかもしれん。
だがそれでも、この水晶の力の源が人の命である事に変わりはない。
呪いの道具は確かに強大だ。だがその強大さの発揮には人の命が居る。
それはこれまでの道具が証明していた。道具単品で暴れる様子は一度も見ていない。
勿論使い捨て連中が後先考えずに使った場合は、道具に呑まれている様に見えはした。
だがそれも結局は、持って力を使った人間が居てこそだ。道具単品に脅威は無い。
そういう意味ではやはり、呪いの道具は所詮道具だ。持つ人間次第の道具だな。
存在するだけで周囲を滅ぼす様な、そんな道具も知っている俺にはそう感じる。
勿論道具としては下の下だと思うがな。使い勝手が悪すぎる。
「それで街の出入りの検問で荷物の検査が厳しくなり、奪われまいと検問で暴れたという所か」
『全く往生際の悪い。兄みたいに潔くないとね! そう、兄の様に!』
何故俺を見詰めて決め顔をしているのか知らんが、貴様が潔くは無いだろう。
前言を一瞬で撤回するし、しつこく自分の好みを進めて来るし、言い訳も良くする。
とりあえずドヤ顔がむかつくので踏んでおこう。ついでに踏みにじっておこう。
「そうだな。検問も街の傍ではなく、街から少し離れた所や、街道の途中で始めた国もあった。おかげで街は無事という国も多く、我が国はそれなりに感謝状が届いたな。まあ、取りあえず感謝状だけでも贈っておけ、という意図が若干見え隠れするが」
『ぐえーっ、兄は妹の足の裏で朽ち果てるのかー! それも悪くないという僕が居るのはどうすれば良いのだろう! ねえ、どう思う!?』
『良いんじゃない?』『えー、兄は妹と一生一緒が良いけどなー』『つまり妹の足の裏として一生を生きていく?』『成程新しい』『こちょこちょしたくなるね』
「煩い少し黙れ」
『『『『『黙るっ!』』』』』
「え、な、何か貴殿が気に食わなくなる事を言ったか?」
ああくそ頭が痛くなる。本当に会話の邪魔すぎるコイツは。
一体だけなら投げ捨てたんだが、増えるとそれすら出来なくなる。
というか、唐突に増えるな。本当に何の脈絡もなく増えるな。
俺とシオ以外に見えていないせいで、唐突に俺が切れたみたいになっただろうが。
それと黙るなら素直に黙れ。一回叫んでから口を押さえるな。
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