第1532話、決着をつける為には
アレは不味い。食らえばただでは済まない。こんな細かい攻撃の比では無い。
躱すか防ぐかしなければならないが、残念ながらもう逃げる暇が無い。
細かい攻撃をしつつ大きな攻撃を準備し、大きな攻撃を打ちつつ本命を隠す。
溜めている事に全く気が付かなかったからな。発射直前に初めて解った。
実に戦闘巧者だ。小娘とはまるで違う。力をひけらかしていた小娘とは。
コイツは本人の言う通り、戦う為に水晶を手に取った人間の戦略だ。
力を最大限に使いこなす為に、出来る限りをやる戦士の業だ。
「はっ、何だいそりゃぁ!」
だが、こちらとて何時までも食らっているばかりでは無い。
本命の一撃が来る前に、既に防御の魔術を構築しているので十分間に合った。
岩の魔術に全力を注ぎ、全方位に展開して全ての攻撃を防ぐ。
その上で前面に多重展開して、本命の一撃も受けずに耐える。
未だ攻撃は止んでいないが、岩が壊れるより次を展開する方が早い。
持久戦なら絶対に負けん。俺の魔力は消費より回復の方が早いからな。
「普通の魔術障壁じゃ、絶対に防げないはずなんだけどねぇ!」
「これは普通の魔術障壁じゃないからな。完全に防御だけに特化した、俺ですら壊すのに時間のかかった代物だ。魔術も物理も共に耐性は高いぞ。例え呪いの魔力とてな」
呪いの魔力を自身の魔力で弾ける、防げる事は既に実験済みだ。
ヨイチが居たからな。アイツの特殊過ぎる魔力は実験に最適だった。
勿論アイツの吸収を完全に防ぐのは無理だが、吸われるのは結局表面の魔力だ。
つまり、魔力に魔力で干渉できる理屈は、呪いの魔力であっても変わらない。
性質の違う魔力だからと、理不尽にぶち抜かれる事は無い。
勿論こちらの強度が低ければ、当たり前の様にぶち抜かれはするがな。
「けど、その状態じゃ反撃―—————づあっ!! がああっ・・・!」
「それは、少々甘く見過ぎだな」
これまで奴はずっと防御していた。散弾の時も、砲撃の時もだ。
だがこの一撃は力を込めたからか、自身の防御を解いている。
故にぶち込めた。熱波の魔術を、顔面狙ってぶち込んでやった。
攻撃に全振りしていた女王は、途中で気が付いても防ぐのが間に合わなかった様だ。
「クッソ、何だ今の。魔術構築の速度が馬鹿げてやがる。防御が間に合わなかったじゃねえか。あっつ・・・しかも防御にそれだけ魔力を注いで、何で反撃に使えるんだ。ふざけんなよ」
だが遅れたとはいえ攻撃を止めて防御に切り替え、熱波を完全に防いでしまっている。
吹雪の時もそうだが、魔術的な要因の遮断ではなく、純粋に保全の防御なのだろう。
俺の熱波も吹雪も、気温の低下や熱は覆しようがない。
魔術をぶち当てて相殺させたり、効果範囲から逃げない限りは絶対に影響が出る。
だが女王が纏う呪いの魔力は、本来防御不可な自然現象すら防げるようだ。
いや、この世界の魔獣の魔術を考えれば、不可能では無いか。
単純に考えれば、結界内だけ快適に過ごせる空調が付いている、という感じだしな。
魔力さえあれば不思議現象が起こせる世界なら、それぐらいの防御は出来ておかしくない。
「相手の力量を見誤ったお前が悪いだろう、そんなもの」
俺は総魔力量の割に出力が低い事で、全力の魔術の並行使用を可能にする。
まともに正面から打ち合えば、恐らくあちらの方が出力は上だ。
岩の魔術で防いでそれが良く解った。単一で防ぎ切れる威力じゃない。
だが防げて時間さえ稼げるならば、他の魔術で攻める事も出来る。
「はっ、解ってても文句は言いたくなるもんだろ、人間だからな」
「確かに、俺も貴様の先程の攻撃には舌打ちをした。その回復力もな。目を潰したつもりだったんだが、何の問題も無い様だな」
「まあな。けど潰れても大体解るぜ?」
「だろうな。だがそれでも、視界がなくなる影響を多少は受けるだろう」
あの魔力、治癒の効果も有るらしい。焼けていた肌が治っていく。
目を潰す為に顔を中心に狙ったが、完全に全快して何の意味も成していない。
回復力も俺並みか。これは致命の一撃が入っても決着がつくかどうか。
どちらかがバラバラに吹き飛ぶ威力の一撃でなければ、永遠に決着がつかんぞ。
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