第677話、三人目
「・・・メラネア、気が付いてるよな?」
「・・・うん、付けられてるね」
「・・・全然解らねぇ」
『妹のファンかな!?』
『ぜってーちげーだろ』
食事をした帰り、誰かに付けられているのを感じた。
メラネアは気が付いていたが、ブッズは解っていなかったらしい。
俺も尾行してる奴が、技術だけでついて来たら解らなかっただろう。
けど俺の目にはしっかりと見えている。尾行者の魔力が。
魔術師ににしてみれば、尾行する気が在るのかと言いたい感じだ。
そもそも無駄に魔力を垂れ流しているのが訳が分からない。
「こっちで良いのか」
「うん、この時間なら、あの辺りは人が少ないから」
『まっくらー! だが兄は見える!』
そして尾行者に気が付いてからは、メラネアに行き先を任せている。
段々と人気のない場所へと向かっており、薄暗い路地を通り抜けて。
道中俺達に目をつける奴もいたが、大体はブッズを見ると逃げていく。
「良い虫よけだな、お前」
「見た目だけで逃げてく雑魚避けにはなるからな」
「自分で言うのか」
「虫よけって言ったのは嬢ちゃんじゃねえか」
ククッと笑いながら告げるブッズは、メラネアとも旅でも同じだったんだろう。
それを特に何とも思ってない辺りが、やはりブッズらしいと言うべきか。
「でもブッズさん、あの頃より強くなってるんだよ」
「メラネアにしょっちゅうしごかれてっからな」
「コイツのしごきは俺よりきついだろう」
「そ、そんな事無いよ。私そんなに厳しくないよ」
ブッズの奴が目を逸らした。応えなかっただけで答えだろうそれ。
でもまあ、当然だろう。メラネアは技量の塊だからな。
技術も磨き始めているとはいえ、元が身体能力頼りのお前にはきついだろう。
そんな無駄話をしながら歩く事暫く、少し開けた所に出た。
だが相変らず人気は無い。随分と都合が良い場所だ。
「そろそろ出てきたらどうだ。バレてる事には気が付いているだろう」
『でてこーい!』
メラネアが足を止めた所で、振り返って声をかける。
暗闇に潜んではいるが、相変らず魔力は垂れ流しだ。
いや、もしかすると最初から潜む気など無いのかもしれない。
解り易く尾行して、狙っているぞと教えていたのかもしれないな。
もしそうなら随分と自信のある事だ。化け物二人相手に。
「来ないならこちらから行くぞ」
流石に尾行しておきながら、何もする気は無かったなどと言わんだろう。
たとえそうだとしても、出て来いと言った時点で出て来るべきだ。
もしこれでも出て来ないのであれば、本当にこちらから踏み込む。
「む・・・出て来たか・・・子供?」
現れたのは子供だ。身に纏っている服はぼろい。
というか、布一枚を纏って、中は裸だな。
そして何よりも気になるのは、目が何も捉えていない事だ。
勿論俺を見てはいる。視線はこちらに向いている。だが見ているだけ。
視界に俺達を収めているだけで、その焦点が合っていない。
「何の用だ。何故俺達をつけて———――」
突然、眼の前の子供の様子が切り替わった。
ぼんやりとした表情から、どう猛な野獣の様に。
眉間に皺が寄り、喉を鳴らし、歯をむき出しにして。
そして何よりも、垂れ流しだった魔力の圧力が上がった。
「ミクちゃん、これって」
「ああ、だろうな」
偶然と考えるには出来過ぎだ。これはきっと必然だろう。
どう考えてもこいつは俺達と同じだ。同じ実験体だ。
クソが。そんなに子供が実験に使いやすいか、外道共が。
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