第673話、ここで過ごす間は

 取りあえずの結論を出した後、話も終わったので部屋を出る事に。

 一日二日ゆっくりしていくと決めたらなら、先ずは宿をとる必要が有る。


「宿は私と同じ所にこない? 空き部屋、有るはずだよ? 何なら一緒の部屋でも良いよ?」

「空きが有るならそこに行こう、探すのも面倒だしな」

『妹ちゃん、相変らず素直じゃねえな』

『友達と一緒が嬉しいって言えば良いのにねー』


 精霊共煩い。そんな理由で決めた訳じゃない。

 熱心メラネアが誘うので、どこでも良いかなと思い同じ所へ行くだけだ。

 とはいえ向かう宿が決まったとしても、もう一つ問題がある。


「おい婆さん、これはココでも使えるのか」

「ん、組合証かい。勿論使えるよ」

「なら金を下ろしたい。この辺りの金は持ってない」

「はいはい、どれぐらい引き出すんだい。宿代は当然として、他にも使うだろ?」

「そうだな・・・」


 別に土産だ何だのと言った出費は無いが、食事代は必要だろう。

 二日分ではあるが、少し多めに出しておくか。金はあるしな。


「メラネア、俺が二日全力で食ったらどれぐらいかかる」

「え、えっと、ミクちゃんが全力、そ、そうだね・・・」

「結構かかるだろうな・・・」

『まあ、あの食いっぷりじゃなぁ。こいつも食うし』

『いっぱい食べるよ!』


 額が解らなかったのでメラネアに聞き、ブッズも考える様子を見せる。

 二人はしばらく悩んだ後、相談して大体の額を割り出した。


「えぇ、そんなの要るのかい?」


 すると当然と言うべきか、額を聞かされた老婆が驚いていた。

 だが二人はその驚きに対し、当然という表情を向けている。


「絶対要ります」

「間違いなく要る」

「高級食志向なのかい、ミクちゃんは」

「いえ、美味しかったら良い人ですよ。ただ凄く量を食べるんです」

「俺より遥かに食う。どこに入るんだってぐらい滅茶苦茶食う」

「えぇ・・・信じられないねぇ」


 全力で力説する二人だが、老婆の方はそれでも信じられないらしい。

 俺の体をじろじろと観察し、怪訝な顔で受付作業へと向かう。

 信じられはしないが、作業自体はするらしい。当たり前か。


「宿はココから遠いのか?」

「ううん、そんなに遠くないよ。少し歩けば有る所」

「それだと立地が良いだろう。高くないのか」

「少し高いかな。けどあんまり安いと面倒事も有るから」


 メラネアをブッズが顔を見合わせたあと、苦笑してから俺に視線を戻す。

 おそらくここまでの道中で、安宿で何かのトラブルがあったんだろう。

 パッと見は小さい子供連れだしな。何かあってもおかしくはないか。


「まあそのおかげで、人攫いしてた連中を潰せたんだけどな。メラネアを人質に取ろうとしてた奴が居て、笑いを堪えるのに必死だったぜ。俺に向かって来た方が勝ち目あんのにな」

「またそういう事言う。あれぐらいならブッズさんでも大丈夫でしょ」

「勝ち目の問題だって。メラネアには絶対勝てねえし」

「それは、そうかもしれないけど」


 むーッと頬を膨らませるメラネアと、それに笑顔で接するブッズ。

 何だろうな。俺はのろけを聞かされている気がする。

 無意識かお前等。無意識だろうな。


 待て、よく考えたらこれが1,2日続くのか?


「やっぱ帰ろうかな」

『何で!? 急にどしたの妹!』

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