第645話、ほぼ予想通り
受付嬢が持って来た紙には、メラネアの軌跡が記録されていた。
何時頃に何処に、そして最後は何処の組合を利用したのか。
組合自体は国と完全に癒着の組織だが、国内だけの組織じゃないらしい。
まあ大手企業の全国展開と似た様な物だな。
同じ店だが、その国の法に従って存在する感じだ。
でなければ記録が、他国に移動したものまで存在はしないだろう。
そして恐らくではあるが、これの存在は国も知っているんだろうな。
優秀な人間だったり、怪しげな人間を捕まえる為に活用していそうだ。
「やはり、国を越えていたか」
『遠くに居るのー?』
メラネアの目的は、狐との約束を果たす事だ。
それは様々な場所を旅する事。一緒に色んな所を見て回ろうという約束。
勿論国内を全て回った訳じゃ無いだろうが、別に国内に拘る理由も無い。
自由気ままに、気の向くままに、楽しい旅をしているんだろう。
ただその旅を始めてからの日数も浅く、そこまで遠くには居なかった。
行って隣国。という事が今回の件に繋がった訳だ。
「ふむ、国越えか・・・まあ問題があれば押し通るか」
『おー、なんか問題ありそうなのー?』
この国は領地間の個人的な移動に制限が無い。
それはきっと、この国が裕福だからなのだろう。
商売人以外に制限をかける方が損な程度には。
だが国によっては別だ。国境を厳重に警備している国も有る。
国民を出さず、入国者もしっかりと制限し、管理する国もな。
そういう国は領地間の出入りも厳しい事が多い。
隣の領地に行く事すら、名の有る人間の許可証が無いと駄目だったりな。
それを避ける為に検問を避けて、山やら川やらをこっそり通る人間も多い訳だが。
当然兵士が見回りをしているし、見つかったらその場で御用となるだろう。
「まあ、問題は無いと思うがな。メラネアがそんな所に行くとは思えんし」
『ほーん? まあ兄は妹と一緒なら何でも良いけど!』
「・・・まあ、お前はそうだろうな。だが狐は違うだろうよ」
『な、なんだってー! 兄は狐に負けたと言うのか!? いや、負けてはいない? 負けたとは言われてないもんね? じゃあ一体何なんだー!』
勝手にへこんで勝手に立ち上がるな。しかも結局何も解ってないままじゃないか。
お前と狐の違いは簡単で明快だ。気を使えるかどうかという点だ。
狐は何時でも『メラネアの為』を想って寄り添っている。
だがお前は単純に『自分が楽しい為』に俺の傍に居るだけだ。
勿論俺の命を助ける為、身の安全の為も有るのかもしれないが。
だとしても基本は自分の快楽優先だ。余りにも狐とは違うだろう。
そんな狐が、面倒な国にメラネアが行く事を許容するだろうか。
もう少し大きくなるまでは、そういった地域は避けそうに思う。
「狐はお前と違い、しっかりと保護者をしている。余計な口出しをしない厳しさもあるがな」
『なっ・・・! そ、そんな・・・あ、兄は、兄は、妹を想って・・・! なぜだー! 兄の何が一体駄目だというんだー! 兄は妹の事が大好きなのにー!』
ダンダン床を叩くな。夜中に何事かと思われるだろうが。
ただでさえ床を一部壊しているのに、更に壊れるだろうが。
お前の俺に対する好意は疑っていないが、それとは話が別なんだよ。
「とりあえず金の用意と・・・隣国でもこの国の通貨が使えるのか確認と、使えないなら魔核や宝石を持って行かないとな。他には・・・この辺りは寒いが、移動したらまた暑いだろうな」
『兄はこの身一つで問題無し!』
胸を張っている精霊は無視して、明日の予定を立てていく。
この相談は誰にするべきか。受付嬢が安定かもしれないな。
「明日もう一度組合に行くか・・・国外だし、領主に聞いた方が早いか?」
『おー! 行こう行こう! お菓子ー!』
完全に領主館を菓子の出る場所だと認識してやがる。
まあ使用人がいる限り、確実に出して来るだろうが。
とりあえず今日は寝て、明日朝一でいって見るか。
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