第7話 マジか
なぜあの紋章の刻まれた箱が壁の中にあるんだ?
誰かが隠した? まさか。
そもそもなぜ、この世界に?
なにかの偶然なんてことでも、おそらくないだろう。
――じゃあ、なんで?
しかし俺には確信めいたなにかが芽生えていた。
箱が、紋章が、俺を呼んでいる。
箱を包むオーラのようなものが、俺と繋がる。
わかる。
これは魔力だ。
十中八九、今、まさに俺が必要としているものがそこにある。
俺は箱に飛びつき、開けた。
そこに入っていたものは、指輪。
鈍く光るミスリル銀製の指輪だ。
あの魔力豊かな世界で、ずっとともに戦った俺の仲間。
争いは二度と御免だと思っていた。
だが今この時だけは、もう一度力を貸してほしい。
俺は指輪を左手の中指にはめた。
今回の世界に前回のように魔力は存在しない。
俺にも魔力はない。
しかし、繋がった。
俺は指輪をはめた瞬間に理解できた。
体中に迸る魔力の存在を――。
《不現の鎖》が“向こう側”から魔力を連れてきた。
俺はかつてそうしていたように、魔力を指輪に編み込む。
指輪から光が放たれる。
その光は紐のようにうねって俺の周りを囲む。
そして光は鎖となった。
『不現の鎖(アンリアルチェイン)』。
これこそが俺と戦いをともにした相棒だ。
これがあれば充分。
倉持がバットを振り上げる。
俺が左手を振ると、鎖は金属バットをコマ切れにした。
倉持は手に持っていたものが急に軽くなって目を白黒させている。
「いくぞ相棒。復帰戦だ!」
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