第2話 変な幼馴染
そして俺は高校生になっていた。
今のところ、大きな争いに関わることなく平穏無事に生きるという目標はほぼ達成されている。
ただやっぱり同級生との会話が合わないせいで友達ができず、いわゆる“ぼっち”になっていた。
まあ、仲間は欲しいが、それで争いが起こったりするのもなんなんで、現状はこれでいい。
そんな俺の趣味はプラモデル製作。
その名も高き「駆動戦士ギャンダム」のプラモデルを作ること。
ギャンプラ製作だ。
高価なものはあまり買えないが、厳選したクオリティの高い商品はだいたい購入している。
最近は転売ヤーやら転売問屋やらの暗躍が酷くて、一昨日も新発売の予約を逃してしまった。
転売ヤーは死すべし。
争いのない日常を望んでいる俺ではあるが、もしも以前のように魔術が使えるのなら、この世の転売ヤーだけは滅却してしまうかもしれない。
もちろんなにが転売屋、なにがリサイクルショップで、なにが古物商なのかなんてのが、非常に難しいことはわかっている。
だがこの気持ち、抑えられない……。
争いを嫌っても予約戦争には参加してしまう俺なんだから、その辺りはなかなかに人間って難しい。
教室でも、家に帰ってから作成するプラモのことばかり考えていた。
そこに同じクラスになっていた舞奈が話しかけてきた。
幼児の頃から美人さんとの評価が高かった舞奈だが、十代半ばに差し掛かってもその評価が変わることはなかった。
美人というか可愛い感じかなとは思うが、俺にはどうにも頭のネジが緩んでいるところが気になってしょうがない。
それに髪をまとめてみたり、結ってみたり、背中にかかるくらいに伸ばしてみたり、俺に髪型の感想とか聞いてきたりするけど、いいとか悪いとかよくわからんし、それって俺の嗜好でしかないし、なんというか客観的に見るとアザとくないですかね。男子に媚びてる。
ああいう行動って同性に嫌われないものかね。心配。
といっても、女子にも人望あるんだからすごい。
こういう言いかたはなんだが、女子の学校内カーストでも上位のほうだと思う。
人間力がすごい。
魔力がすごかった勇者時代の俺でも、人間力のすごいやつには敵わなかった。強い。
「ゆーくん、なにニヤニヤしてるの? 気持ち悪い。そんなんだから友達できないんじゃない?」
「ニヤニヤはしてないだろ。むしろ難しい顔をしていたはずだ。というか俺が友達を必要としている前提で話しかけてこないでくれ」
「人は一人では生きてはいけないんだよ?」
そんなことはないだろー。
「これだけ利便性が向上した現代社会で一人で生きていけない理由がない。料理ができなかったら外食すればいいし、掃除ができなかったら人を雇ってやってもらえばいいし。一人で生きられない理由がむしろ皆無だ」
まあその場合、元手というか資金が必要になるけども。
「じゃあえっと……二人羽織はできないでしょ? 一人では二人羽織ができない! ほら、一人だと困るじゃない」
「大事なことを教えてやる。二人羽織をできなくても、人生においてまったく困らない」
「はうっ、それは盲点だった……。えーっと、でもでも、ブラック企業の忘年会で余興を強要されたときとか……」
「俺にはブラック企業に入社する予定はないっ。それと忘年会の余興とか、昭和か!」
「ええ~、余興ってたぶん縄文時代からあるよ。卑弥呼ちゃんとか好きだったと思うなぁ、余興」
「ちゃん付けって、友達かよ……」
「いやぁ、友達にはちゃん付けしないかなぁ。卑弥呼っちとか?」
「知らねぇよ、昨今の女子の友達事情とか……」
やっぱり「容姿はいいけど、だいぶ変わった思考回路の持ち主」だ……。まったくもって頭の回転は速いんだが、たぶん回転中に重要な部品が弾け飛んでいる。
しかし、なんでこう相変わらず俺に絡んでくるんだろうか。
むしろ年を追うごとに絡んでくる頻度が高くなってきた気さえする。さすがに気のせいかもしれないけど……。
そんなとき、教室の後ろのほうで大きな音がした。
「体重が平均よりもかなり重い村田くん? 太った家畜はなんて鳴くんだっけ?」
「ブ、ブ、ブーブーブー」
ざっくり言うと、不良の杉山たち3人組が村田をいじめていた。
「ぎゃははは! やっぱりブタになるよなぁ? 俺たちはウシでもよかったんだけどぉ?」
「自分がブタだって自覚があんだろ?」
「「「ぎゃははははは!!」」」
ご丁寧に首輪をつけて教室を引きずり回している。
というかなんで「お前はブタだ」ってバカにする想定なのに、犬用の首輪を持ってきてんだよ。ポリコレに配慮してる感じも意味が分からん。
俺は気分を害しながらも視線を逸らした。
この国はかつていた世界に比べればだいぶ平和だ。
しかし争いがないといったらウソになる。
いつだって力のある悪人は弱者をいたぶる。
それはもうどうしようもない現実だ。
ああいう手合いに関わってはいけない。俺はもう戦わないと決めたし、現に戦う力もないのだから。
しかし……。
「ひどい……」
舞奈がクラスメイトを心から哀れんだような目を向けたかと思うと、突如不良三人組に向かって歩き出した。
いやいや、待て待て。
なにをするつもりだよ。
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