真相は……?
久しぶりの再会に、2人は話に花を咲かせていた。
路地には楽しげな笑い声が響き、それを見守るように優しい風が頬を撫でる。
「ところで!お前に聞きたい事があったんだよ」
「何だい?」
アイザックは真剣そうな顔で言った。
「俺たちが初めて出会ったときの事件を覚えているか?あの闇市の…」
ルディは目を細め、微笑んだ。
「もちろんだ。あの事件はよく覚えている」
「なら良かった」とアイザックは呟き、ルディの瞳を見て言った。
「お前は何故、犯人がわかったんだ?何故一瞬で闇市と関係があると見抜いた?」
それを聞き、ルディは小さく頷いた。
「……君も知っているだろうが、闇市の住人は身につけるものに印を刻む。烏の印だ。犯人の男。彼がどんな男だったか、覚えているかい?」
アイザックは少しの沈黙の後、ハッとしたように言った。
「確か……義足の男だったか?」
「その通り」とルディは笑って言った。
「犯人の義足の正面にも、烏の印は彫られていた。そのせいで、犯人は気が付かなかったのだろうね。もう一つの印に」
「もう一つの印?」
アイザックは話の先が読めないと言った様子で彼を見つめる。
ふっと目を細め、続けた。
「靴底さ。依頼者の部屋の床に、靴底のような傷があっただろう?微かだが、そこに烏の形になっていた。それに、歩く度傷がつくような、ひどい義足を作るのなんて、誾市くらいさ。そういう痕跡たちを、私が見つけたと言う訳だ」
ルディの言葉に、アイザックはパチン、と指を鳴らした。
「そこなんだよ。街に来たばかりの探偵が、何故闇市と烏の関係を知っていた?」
しばしの沈黙。ルディは困ったように笑い、つぶやいた。
「君は案外、鋭いところがあるよね、ザック。……詳しくは言えないけれど、私に闇市の情報を売った情報屋がいてね。その人のおかげで、私は初めての街で探偵をすることができた」
アイザックは、小さく眉を顰め、情報屋か……」と小さくつぶやいた。しばらく考えて、何か納得する結論が出たのか、アイザックはルディの肩を軽く叩いた。
「ともかく、お前の観察眼は化け物だな。お前を敵に回す犯人も可哀想だ」
揶揄うように言うアイザックに、ルディは笑って答える。
「私を敵に回さないためにも、悪事は働かないことだね、ザック」
2人の笑い声が、風に乗って小さく響いた────。
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