エピローグ「タジダリ」

 今より、ほんの少しだけ昔の話。

 とある街に、仕事の上手い女の人がました。

 人は、彼女を『タスクイーン』と呼びました。



 タスクイーンは、みんなから頼りにされました。

 けれど彼女は、自分の夢を叶えようとした結果、失敗してしまい、悲しくて街を出てしまいました。



 お家に帰ろうとした彼女の前に、一人の男の人が現れました。

 悪役顔ながらも優しく熱い彼を、人は『ネッシンシ』と呼びました。



 タスクイーンとネッシンシは毎日、毎日、喧嘩をしていました。

 しかし、本当ほんとうは似たもの同士だった二人は、やがて恋に落ちました。



 やっと素直に、幸せになれた、タスクイーンとネッシンシ。

 けれど、そんな二人の前には、いくつもの壁がありました。


 

 これは、そんな二人が、時に喧嘩、寄り道や遠回りをしながらも、進んで行く物語。

 やがてパパとママになる二人の、賑やかな恋のお話です。





「はい。

 今日は、これでおしまい」



 読み聞かせをしていた女性は、膝の上に座っていた女の子にそう伝え、絵本を閉じた。

 瞬間、「え〜!?」と、女の子は落胆の意を示す。


 

なんで、なんでぇ!?

 もっと聞かせてよぉ、一希いつきちゃぁん!」

「また今度、読もっか。

 ね?

 それに、ほら。そろそろ、パパとママの帰って来る時間」

「ただいまー」

睦月むつきー。

 パパと違って、い子にしてたー?」

「帰宅早々にディスるのめね?」



 玄関で早速、繰り広げられている痴話喧嘩に、一希いつきは思わず吹き出してしまう。

 そして、二人に向かって駆け出した睦月を追いかけ、本を置いた一希いつきも続く。



 窓から入り込んだ月明かりに照らされる、一冊の絵本。

 そこに記されしは、『文、絵:つむら りく』の文字。

 そして、タイトルは。



『タジダリ 〜ネッシンシとタスクイーン〜』

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