Task.7「守真伊 懐月は馴染まない」
「はぁ……」
そんな彼は今、別の件で、休憩室にて頭を悩ませていた。
一つ。理由は不明だが最近、店で妙なトラブルが多過ぎる
返金やイタ電など、多岐に渡ったイレギュラーが同時、連日に押し寄せ、その対応に追われた結果、ベテランの
中でも取り分け手痛いのは、過不足。恐らく授受ミス、つまりお金の渡し
そして、二つ目に。
「アッちゃん、お疲っ……れー。
あれ?
「ああ……」
自分同様に休憩に来た同僚、
「これで何度目……いや。
「知らん。
もう数えるのさえ億劫だ」
「そっかぁ……。
どうしてだろ……。
お……れ、
「他の誰であっても、同じなのが現状だ。
お前が気にするこっちゃねぇよ」
そう口では言いつつも、本心では依然として気掛かりな
仕事上では滞り
きちんと時間は守ってくれているので、業務に支障を
だが、こんな習慣が付けられては、『壁を作られていると取るな』という方が、無理な相談である。
だからといって、プライベートと言えなくもない休憩時間について無闇矢鱈に詮索するのも、
これでは、ネガティブな
速攻で自分達より上に行かれた都合上、立場上、同性スタッフ達も、手を焼いている始末。
ましてや、出会ったばかりの頃に、それっぽい状態になっていた
無力感に打ち
そんな彼の心境を察してか、ここでは一番の仲良しである
「元気出して、アッちゃん。
こういう時は、ほ……ら。えと……。
……どうしょっか?」
「……いや、
てか、励まそうとしてる本人に、聞く?」
「だって、思い付かないんだもん……」
ショボン……とする
そんな頼りない姿を見て、考え
今度は反対に、
「しゃあねぇな。
景気付けに明日、カラオケ行くか。
カミュ。お前も明日、オフだったろ?」
「う、うん!
行く!」
「決まりだ。
んじゃあ明日、後ろめたさも
「りょ……うかい!」
「てか、あれだ。
お前、
予定とかじゃなく、体調とか……さ」
「大丈夫!
最近は、セーブ
いつも通りカミカミながらも、
空元気ではあるものの、どうにか今日、あと五時間は越えられそうな
願わくば、このまま、平穏無事に過ごせます様に……。
※
などと切り替えてみたものの。
どうやら、自分は甘かったらしい。
「また過不足か……」
「すみません……」
バックヤードにて新入り、
しかし、何度やっても、別のスタッフに頼んでも、帳尻が合わないらしく。
「すみません……。
私が、ミスったかもしれません……」
その言葉を受け、
自分が今すべきは、落ち込む
「……別に、あんただけが悪いんじゃないし、あんたが原因だとも限らない。
同じ職場で働いている以上、連帯責任。誰かの失敗は、店全体、全スタッフの問題だ。
細心の注意を払おうとも、誰にでもミスは起こり
それでも良心の
な?」
「
ただ、
もしキツいようなら、ここなり休憩室なりでリラックスしてても
別に、戦力外通告とかじゃなく、あくまでもコンディションを考慮して言ってるんだが」
「……平気です!
仕事ですし、大人なので!
それに……
「そ、そうか……。
別に、大した
「とんでもない!
「いや……だから、俺は……」
純朴な現役女子大生を見ると、勘違いしてしまいそうになる
無論、社会人である以上、そんな
「お楽しみ中の所、悪いのだけれど」
「おわっ!?」
「きゃっ」
いつから
彼女は、いつも通りクールな佇まいで、右の親指をレジの方に向けた。
「
お金」
「は?」
「……
でも、どうして……?」
「そこは、
それより、先に仕事に戻るわね。
二人も、そうして
それだけ告げると、
大人の余裕に満ちた
まるで、
「悪い。
ちょっと、確認してくるわ」
「は、はいっ!
じゃあ、私も!」
「
「は、はい……
「……」
マジで
そういう、思わせ
などと
画面を見ると、確かに金額が合っていた。
「一体、どういう
「分かんないわ。
「
点検担当だった主婦の一言を受け、
「……どんな
「いいえ。
そもそも、『時間が勿体無いから、他の業務に当たってて
「……その間、カウンターには?」
「
「そうか……」
おいおい……勘弁してくれよ……。
と、
そんな
そんな
けど、それしか……そうとしか、考えられない。
「
どうかしたの?」
業を煮やしそうになっていた
「ちょっと野暮用よ。
その間、店をお願い」
「え、ええ……」
やはり要件は言わずに、性懲りも店を出て行く
その後ろ姿を見送った
そして。
「……」
思った通り。
探していた物……真実を裏付ける、証拠が眠っていた。
それを見た
「
まさか、それ……!」
「……ああ。
どうやら、どうにも、そうらしい……」
確信を得た
そして、覚悟を決める。
「……すんません。
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