Task.5「恋人候補を突き止めろ」
「
翌朝の食卓にて。
オフにも
「……別に」
「別にって
ほらほら、頼もしさ満点のお姉さんに、洗い浚い話してごらんよー。
あるいは、ひょっとしたら、ともすれば、万が一にも、解決するかもだよー?」
「誰が。
てか、面白がってるだけだろ?」
「ご
それはさておい、
んー? どしたー、
もひかして、恋の悩みかなー?
いやー、若いねー、青いねー、微笑ましいねー」
「人をおちょくるのも大概にせぇよ……」
割とマジで手が出そうになった、その時。
「「……あ……」」
「おっ。
ナッちゃん、お出掛けー?
もしや、デートかなー?
青春だねー♪」
そんな空気を物ともせず、囃し立てる
その空気の読めなさに、二人は内心、感謝した。
「え、ええ、まぁ……。
そんな所、かしら……」
「ぐふふー。否定しないんだねー。
行ってらー。土産話、楽しみにしてるかんねー♪
」
「
挨拶の代わりに毒舌を放ち、
自分には一言も
「……もしかして……修羅場?」
ここに来て
ムシャクシャした
「あー……。
当たらずとも、遠からずかー……」
※
そう思い、当て
昨晩、仕事帰りに突如として現れ、
その正体を、
しかし、その理由が分からない。
今の、この、
かといって、このまま
付け足せば、
こうなったら、
が、その
一体、自分はどうすれば
どうしたら、
「あ。
おーい。そこのお
などと考えに耽っていたら、
この都合の
「よ、よぉ……奇遇だなぁ」
「
まさか、こんな所で出会うなんて。
ところで、
逆サプライズー、みたいな?」
「あー……あの人、脱線してばっかだからなぁ……。
どっかに出掛けてるらしい」
差し詰め、
そう推測した
「まぁ、そこら辺、適当にブラついてたら、思いがけず会えたりするんじゃね?
悪かったな。時間取らせた上に、てんで参考、当てにならなんで」
「そっかぁ。
ううん。こっちこそ、ごめん」
やや消沈した顔を見せ、かと思えば、今度は意地悪な笑みを見せる
「じゃあ、お
「は?」
予想だにしない、願ってもない展開に、へちゃむくれになる
対する
「
それとも、お兄さんも、何か用事あった?」
「……別に、
「じゃあ、決まりだね。
ねぇ。早速だけど、この辺りで
「あ、ああ……それなら」
口が滑りかけ、前に
が、
かと言って、
よって。
「……妹がマスターしてる
その提案に
「大歓迎。
案内してくれる? お兄さん」
※
「へー。
いい感じのお店だね」
「気に入ってくれたんなら良かったよ」
「うん。凄く
常連さんになっちゃおっかなぁ」
「是非とも、そうしてくれ」
「ありがと。
ところで、その妹さんは?」
「あー……今日は、留守らしいな」
「残念。
一目、見てみたかったんだけどなぁ」
「
まぁ、また来てくれや」
「うん。そうする」
こんな調子で話しつつ、窓際の席に座る二人。
互いに注文を済ませたタイミングで、
「そういえば、自己紹介がまだだったよね。
ボクは、
思っていたよりもスムーズに情報を開示され、
「
「
「あ、ああ……。
じゃあ、
「ありがと。
改めて、これから
「こちらこそ……」
落ち着いていて、親しみ
なるほど。
これは、
「昨日は、ごめんね?
いきなり、無粋で不躾な
今は、猛省してる」
「い、いや……。
俺の方こそ、悪かった……」
「
面白いんだけど。
あれから、
昨夜。
そのまま帰宅し、食事し、互いの部屋の前で別れるまで終始無言だった
そんな彼の胸中を察したらしく、
「……ごめん。
「……別に……」
取り繕おうとする
が、こうなった以上、
「なぁ、
あんたは一体、
どうも、
「へー。
気になる?」
意地悪な笑みを見せ、迫る
それでも憎めない辺り、やり手というか、持て余すというか……。
「……悪ぃかよ」
対する
「
その健気さに、素直さに免じて、白状するよ。
「なっ……!?」
結果、悶絶した。
眼鏡姿が様になるクールな社会人。
気高く勇猛に剣を構える騎士。
本を片手に呪文を唱える魔道士。
晒しを巻き拳で戦うヤンキー。
助けた市民をお姫様抱っこするヒーロー。
胸の空いたスーツで誘惑する校医。
派手な服装を纏い偉そうに座する王子様。
ギターを壊し観客を沸かせるロックンローラー。
オーディエンスに向けウインクしているアイドル。
恋人と絶賛イチャイチ中、キス寸前のイケメン。
設定こそ違えども、
早い話、彼女の二次創作である。
しかも、TSしてる所、
つまり、元カレというのは、創作上での話であり、単なる杞憂、勇み足に過ぎなかったのだ。
「どう?
これ以上の説明、
「……
腹ぁ一杯だ……」
「まだ食事もしてないのに?
「ちょせぇ……」
連日、精神的な披露が絶えない
改めて考えてみれば、『
自分は、まんまと騙され、嵌められた
ショックが半端ではない
だが、これだけは確認せねばと、
「つまり……あんたは……?」
「性別、生物学的には、女だよ。
っても、こっちのがイメージ膨らむし、
「外出用ですらねぇのか……」
要は、家でも着用してる、という
通りで、対抗心さえ芽生えない、生まれる前に根絶やしにされるレベルで、バシッとビシッとピシッと
「もう聞いてるだろうけど、
本人もお高く止まりがちなんで、『
そんな
『ボクのナイトに、ヒロインになってくれ』、ってね」
「……ストレートだなぁ」
「目の前に、理想通りの相手が
体現せしめんとするのは、必然でしょ?
で、そんな
手前味噌だけど、向こうじゃ
でも、今までで断トツに変な仕事を
「よくもまぁ、その状態で、ここまで辿り着けたなぁ」
「
こっちでも、本名でランク入りしてたんだ。
で、それを見た瞬間、彼女の故郷を思い出して、我が身一つで追い掛けたって
まぁ、荷物は引越し先に送って
「ストーカーかよ……。
「ボク達が極端なだけじゃない?」
「そうである
「それより、
パスタを行儀良く食べ進めながら、
「君には、もっと頑張って
昨日はいまいちだったけど今、君を深堀りしたら、新しいシーンが、次から次へと、
君は、
「これっぽっちも嬉しくない情報、あんがとよ」
「
「
「君が持ち味を把握してないからだよ。
ところでボク、
新しい住処も決まったし、イラストレーターなんて、ペンタブさえ
「あんた
一つの武器だけで、そこまで戦って生きて行けるの!」
都会組ってぇのぁ、こんなんばっかなのか……?
そう思いつつ、背凭れに体を預ける
「兄さん。大丈夫?
これでも呑んで、落ち着いて?」
「あ、ああ……。
あんがとよ、
兄を心配し、
言われるがまま、一服する
次の瞬間、クールに尋ねる。
「……
お前」
「だって、私のお店だし」
「
「買い出しに行ってただけだよ」
「……
「今日は、オフ組と出掛けてるけど……。
それより、兄さんこそ、何してるの?
おかしい。これはおかしい。
いや、男である自分が『嫁がせられる』側なのもそうだが、そこだけじゃなく。
だって、有り得ないのだ。
社会人にとっての休日が、どれ
「……あー、ごめん、妹さん。
その話、詳しく聞かせてくれない?」
「え?
あのぉ……どちら
「
「……よく分からないけど、
声すらかけずに、そのまま帰って来ちゃいました」
「近くのスーパーだね。
分かった。ありがと」
再確認するや
その手際の良さに、
「あ、あの……お
「気にしないで。情報料だから。
それより、
ボク、そのスーパーの場所、分からないから。
「あ、ああ……。
分かった……」
流されるままに、同じく帰り支度を整える
そしてそのまま、
こうして、
※
スーパーに到着し、二手に分かれ、
しかし、
「
そっちは、どうだった?」
「あんた
「だよね……。
参ったなぁ……このままじゃあ……」
「あぁ……」
「このままじゃあ、ボクの預かり知らない所で、
「おい」
「しかも、
なんて
攻め、ヒーローとしての役割までは、
「
こんな時でさえ創作の話が
だが実際問題、これでは詰みである。
しかし、
「……あ……」
「
心当たりを思い出したのを察知したらしく、
「
これは、賭けだ。恐らく俺達に残された最後の希望、大博打だ。
だが……」
「乗るよ、
当てが
確かめよう」
「ああ!
付いて来い、
「ははっ。
頼もしく、楽しくなって来たぁ。
名付けるなら、『ネッシンシ』だね。
あぁ……あぁ……。クリエイティブが、止まらないよぉ……」
「別に待ったはかけねぇが、
あと、Z指定は
「TSまではオーケーなんだ。
あと、安心して。
二人とも中身はお子ちゃまだから、自ずとコンシューマー版に限定される」
「
やっぱ、TSも無しだ!」
「ツレないなぁ。
期待してた
こんな調子で喧嘩しつつ、二人は一路、最後の心当たり……
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