Task.4「不器用(ぶきっちょ)へのスマイル講座」
「じゃあ、
もう一度、行きますよ?
せー、のぉ……」
「に……にぃー……」
間違い
現在、
が……意気込みに結果が伴っていなかった。
「少し、休憩しましょうか」
「まだ初めて数分しか経ってないわよね……?」
「
それに、帰って来たばかりで、心労も絶えないでしょうし」
こんな時ですら、愛想笑いではなく、心からの笑顔を咲かせる
そんな彼女に、同性として、大人として、接客業の先輩として、
「あら?」
ふと、
どうやら、
そんな愛らしい、いじらしい姿に、
が、数秒後。意図せず零れた笑顔は、自己嫌悪の念に支配され、そのまま
「普通に笑う
どうして、こうも苦戦を強いられるのかしら……」
「
誰にだって、不得意は
気落ちはしても、
「別に、それだけが理由じゃないわ」
「理由の一つではあるんですね……」
「まぁ……あいつとなら、自然体では居られるし、ね……」
やはり大半の女性は、
いや……それだけではない。
今まで、女っ気など
有事には、いつでも家族を助けに行ける
職場にも異性は
そんな兄が、唯一、やっと、それらしい相手が
この千載一遇のチャンスを逃すなど、どうして
是が非でも、この人に、兄を幸せにして
「
楽しい
そうすれば、今みたいに、自然と笑顔になれると思います」
「なるほど……理に適ってるわね。
具体的には?」
「そうですねぇ。
好きな物で溢れかえってる所を想像するとか?
口には出さなくても大丈夫なので、やってみてくれませんか?
言葉にはしなくて
「……妙に
「細かい
だって、
なんて本音は
相手が女性だからか、
「……
恐らく、札束風呂にでも浸かっているのだろう。
「じゃあ、次に。
それとは
「……ええ」
きっと、諭吉や一葉、英世を侍らせてでもいるのだろう。
「いい感じです。
では次に、三番目に好きな、同じく物を、ズラーッと、ありったけ揃えてみてください」
「……」
パァァァァ……と、花が咲くエフェクトを付け始める
かと思えば無我夢中で、
どうやら、夢の世界で
早い話……今現在、
それが起因してスマイルが
思うに、第四位か五位は『クルトン』なのも合わせて。
「
「お姉、ちゃん……。
泣かない、で……」
「……ええ……。
状況が飲み込めていないなりに、必死に
それにより、
そんなエモいワンシーンを見ながら、
ひょっとしたら、
「
「同意します。
主に、
にしても、これからどうしましょうか……」
「そうねぇ……」
手詰まりとなり、新しい、それでいて最適なアイデアを捻り出さんと欲する二人。
そんな二人に影響され、
「……
お
シュールにしか映らない状況に、調理をしていた
恥ずかしがったり、笑ったり、見るからに拗ねたり。三者三様のリアクションを見せつつ、三人はおやつを食卓に並べるのを手伝う。
にしても、と
料理だけに飽き足らず、スイーツまで作れるとは。この男、悔しいが、中々に
やはり人間、誰しも得意分野は
「……あ……」
そして、思い至った。
その手が、有ったのだと。
※
「という
翌日の開店前。
いつもより少し早く出社した面々は、相変わらず堅い、けれど不愉快ではない
「で?
裏方って
そんな中、謎の役職について、
「簡単に言うと、バックヤード、パソでの仕事がメインね」
「業務内容は?」
「出品絡みの諸々。
ホビーやゲームハード、レトロゲームの加工。
電話、
商品検索。
精算業務。
クレジットの入力。
棚卸しなどの差異の追求。
備品発注。
在庫チェック。
動作確認。
迷子、無くし物、落とし物の捜索。
機械関連。
エトセトラね」
「多いな!?
それを一手に担おうってか!?」
「別に、全部を一日、一度にやろうってんじゃないわ。
必要、優先度によって動くだけよ。
で、メインの担当分野は」
「ちょい、ちょい」と、
支持に従うと、今度は上を指差された。
その方向に
「ばっかがみるー♪」
かと思いきや、いきなり
一体、自分はいつ、ラタトスクの最高幹部に登り詰めでもしたのだろうか。
「とまぁ、こんな感じに偽装、セットした監視カメラを、パソルーのモニターで常にチェックし、必要とあらば注意するわ。
設置場所は、アダルトやZ指定などの18禁エリア。
ショーケース、メディア化作品の特設コーナーなどの狙われ
それから耽美、少女漫画など、主に女性が集まり、変質者が出没し
他にも、色んな形で、店全体を
「俺をネタにする必要、少しでも
「百聞は一見に
次に行きましょう」
それは、腕に装着するデバイスだった。
「腕時計型スマホよ。
前に一緒に仕事した会社に、試作品を
ほら。ここ、基本的にスマホは持ち運びNGでしょ?
それだと、家族からの緊急の要件、商品検索、
でも、これさえ
ワイヤレスのイヤモニも
カラーは、事前に
それ付けてるだけで宣伝になるから、来客や求人も見込めるわね」
「……」
この時、
あんた、何者なんだよ、と。
「
「……だな。
で、
同年代と
対する、
「
それについても、
「以後、こいつを『ガレット』と総称したい。
『理解した』って英語と、『ブレスレット』を足した造語だ。
賛成する者は、挙手を」
言うまでも
「
「ええ。
文句無しよ」
「……うす。あざっす」
奥様方に褒められ、反応に困りながら、
元ネタがウルトラマ○だなんて、言えないよなぁ……と。
「ガレットは他にも、金庫室やロッカー、レジを使う
なるべく、常備する
ただ、忘れたら忘れたで、金庫室に予備は
「
「防犯上、その方が望ましいの。
このご時世、どこで
「そうね。
ありがとう、
主婦勢の一人に礼を言われ、やや縮こまる
その姿を見て、
働き
が、どうやら
そして
「とまぁ、こんな形で
一通り売り込みを終え、最終確認する
その姿は、昨日までの彼女……スマイルという、初歩中の初歩で躓いていた元バリキャリとは思えない
「……
「そうね。
でも、一緒に働く以上は、少しでも
だから、教えて
的外れ、理念に反してなくて、
だから……」
それまでの、やや上からな姿勢を崩し頭を下げ、
「だから……どうか、お願いします。
まだ笑顔一つ満足に
偉そうな
感情表現が不得手な、
機械を介してでしか、メカ頼りでしか、
どうか……ここに、置いてください」
真摯に、必死に、訴える
そんな彼女に、
「……こちらこそ、
「……
「知っての通り
おまけに最近、ファン層拡大の
あんたが加わってくれさえすりゃ、二つの悩みの種が同時に、最高の形で狩り取れる。
なぁ、店長」
「その通り!
良く言った、アッくん! 正しく、
「だったら報酬として、後で色付けといてくれや。
とまぁ、冗談はさておきだ、
笑顔なんて、その内、自然と
改めて。これから
「……ええ」
ガシッと、
そして、
そんな二人に向けて、他のスタッフ一同も、
こうして、
「あ。
「……は?」
「これから、あんたのフォローだったり、笑顔の特訓だったりは、俺の担当だから」
「はぁ!?
言っとくけど
「
3アイも
「
教えなさいよ!」
「ほら見ろ早速、俺に質問してんじゃねぇか!
『挨拶』『アイコンタクト』『愛想笑い』のこったよ!」
「そんなの、マニュアルに書いてなかったわ!」
「マニュアルに書いてない
「だったら、そっちの落ち度じゃない!
人の
大体、愛想笑いって本来、あんまり
「それすら
「
今に見てなさい! あんたなんか、明日にでも追い越してやるわ!!」
「きちんと調べてから物言えってんだ!
裏方ならまだしも、接客業務において、付け焼き刃で俺に勝てる
そもそも、あんたまだ、
「はぁ!?
「いーや、
世間知らずの女子高生ですら、もっと普通に笑えるってーの!
悔しければ、とっとと上達しろってんだ!」
「あんた数分前、『
「おーっと、いっけね。
誰かさんの悪い
「こんのぉ……!!
「誰から聞いた!?
おぉっ!? 誰から聞いた、その蔑称!!
店長か!?」
「
「「日頃の行い!!」」
「二人して!?」
こうして、
二人の意気投合、息の合いっ
※
「ふーん。
そんな
「そうなんだよ。
で、お前、
「
開店して十分後。
カウンターの前にて、棚直しをしつつ、
ここまでは
問題なのは、ここからである。
「で、素朴な疑問なんだが、
「
「
「
「ごめん、
「あ。
「大型、
ただ一つのネックだった笑顔が、
そりゃそーだ。
これで、ブロンズの星が
「
「
まだ、
※
二十分後。
「ねぇ、
「……
あと、付いて来んなよ」
「今、
「……ああ」
「しかも、対応の速さと丁寧さ、褒められたよね?」
「……そだね」
「
「あの人、博識だなー。アンテナ広いなー。
まさか、昭和時代のコンテンツにまで明るいとはなー」
「しまいには、
「カウンターにぶつからないか、ヒヤヒヤしたな」
「そんな
今のお気持ちをお聞かせください」
「俺、あの人に、
3アイしか……」
「以上、現場からのリアルな感想でしたー」
※
三十分後。
「ねぇ、
「コメントは差し控えます」
「
『
「い、いやー、仕事が忙しいなー。
他の場所なんて、見てる
「で、間髪入れずに切り返してたよね?
『枕と不倫と隠し子とDV、陰湿な
「
実際には、ただの
役満だよなー。
ゴクドル○かってーの」
「しかも怪文書みたいな
「よっ!
「……
一日も経たずに、
「……」
どうしよう……。そう、
もしかして自分は、とんでもない人間を、弟子に持ってしまったのかもしれない……と。
そして、
初出勤日、たったの一時間で、まさかまさかの五階級特進、完凸に成功した
自ずと裏店長、裏番長、裏ボス、ラスボス、守護神、RTAガチ勢などと呼ばれる
「で、師匠。
弟子が華々しくデビューした、ご感想は?」
「誠に申し訳ありませんでしたぁ!!」
「分かれば
きちんと。対等に。扱って
そして
※
「ねぇ、
そろそろ、機嫌直しなさいよ」
「……
「
純然たる結果よ。
「フォローする
ドヤ顔、
「ごめんなさい。
ちょっと、無理みたい。
夕ご飯のグレードを維持しようとしたんだけれど、残念ね」
「り・ゆ・うっ!!
俺は!? 俺の
閉店後。
トホホ感マックスで徒歩中の
そのままヒートアップする……と思いきや。
二人の前に、
「……見付けた……」
次の瞬間、謎の人物は突如、
「おい、あんたっ!」
少しラグって、引き離そうとする
そんな彼を、
「……驚いたわ。
まさか、ここまで追って来るなんて。
相変わらずね……
「当然だよ。
「
どうやら知り合いだったらしい。
「す、
予想だにしない急展開に、焦る
「
悪いけど、あなたを認める
「……は?」
一難去って、また一難。
明日も明日とて、
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