異世界にはトンデモナイモノが落ちている……拾えるのは俺だけでした

第27話 手作りプレートいただきました

　興奮するギルド長をなだめるレナ。

「アルナの登録を書き換えても、結局そのプレートは無駄になっただろ。なんでそんなに怒る必要があるんだ」

「その時は勇者の従者として、それなりの実力がある証明として、これを進呈しようと……」

　絶対渡すつもりだったんだな……ちょっと可哀想になってきたぜ。

「ショータさん。これはあなたにもメリットがある話なんですよ」

　ギルド長が落ち着くと、次はレナが口を開く。

　アルナは真面目に話を聞いているが、リューシャは欠伸をしはじめた。

　こいつは話が終わるまで、部屋を出ていってもらったほうがいいかもしれない。

「メリットなんてあるか？」

「まず、受付嬢の態度が変わります」

「…………それはお前が担当じゃなければ、最初から改善されてたことだと思うぞ」

「違います！　そういうことではなく、他の受付嬢、他の町のギルドに行ってもです」

　まあまあ、貴重な上位のランク持ちならそうなって然るべきだわな。

　重役と同僚相手に、態度が変わらない平社員がいないのと同じだ。

「お前は次から態度改めるんだろ？　他の場所も普通なら別に構わないぞ」

「ギルドに通達しますから、受付嬢からモテますよ！」

「別にモテたからって俺は――」

「それは必要ないと思う！　ショータンが腑抜けになっちゃうよ？」

「急に横から口挟むなよ」

　さっきまで欠伸をしていたリューシャが、急にやる気を漲（みなぎ）らせ、会話に乱入してきた。

「だってだってさ、ショータンは女の子大好きだしさ、色仕掛けとかされたら、コロッといっちゃうの目に見えてるしぃ」

「そんなわけねえだろ。お前は俺をそういう目で見てたのかよ」

「ならさ、どうして村長から「うちの娘を嫁に貰ってはくださらぬか？」って言われた時に、すぐに断らなかったの？　ねぇ、なんでなんでぇ？」

「くっ、お前、そこまで知ってて、今まで知らないフリしてたのかよ……つうかこんなところでバラすなよ……」

　まさかあの時起きてて、ここまで盗み聞きしてたなんて……それに微妙に村長のモノマネ似てるし、「ねぇ、なんでなんでぇ？」がすげええ鼻につく言い方でイラつくぜッ。

「リューシャさん、どういうことですか？　あの夜にショータさん、お見合いしてたんですか？」

「アルナ、そんなことしてないから！　はっきり断ったから！」

　リューシャに目をやると、今にもその続きを話そうとする動きをしている。

「リューシャわかった！　俺は色仕掛けでコロッといくかもしれないからな、受付嬢に言い寄られるのは困るな！」

「ショータンは自己分析がちゃんとできてるね！」

　自己分析ね……脅迫に屈しただけなんだけどな……。

　それにしてもこいつ、俺にも脅迫してくんのかよ、恐ろしい奴だぜ！

「そういうことでしたら、ギルド支部の受付嬢には伝えないでおきます」

　レナは、俺とリューシャのやりとりを困惑気味に聞いていたが、要領だけは得ているようだ。

「そうなると、もう俺には何のメリットもないな」

「まだあります。もし金欠になった場合、特別にＡランクの依頼も受けることが可能です」

「それはメリットなのか？　金欠になることは、そんなにないような気もするんだが」

「もう一つありますよ！　普通なら依頼以外で受けた魔族討伐には報奨金は出しませんが、今回は装備品やら、金品も持ち帰っていたので、特別に200万ガルの報奨金をお出しします。これで安宿からも脱出できるでしょう！　わざわざリューシャさんが、別の部屋に泊まる必要もありません！」

「その話乗ったよぉ！」

「リューシャ！　勝手に乗るなっ！」

　こちらの懐事情は予想がつくのはわかるが、リューシャが別の部屋とか、どこまで把握してんだよ、このストーカーは！

　だが、安宿生活から抜けられるのは魅力的である。

「わかった。俺がリーダーのままで、そのリバーシブルプレートを受け取るわ」

　途端に項垂れていた頭を持ち上げるギルド長。

「そうかそうかっ！　そんなに気に入ったのかね！　私が愛情込めて作ったものだ。大切にしてくれたまえ。ははははっ！」

　愛情はいらないし気持ち悪いが、200万ガルの魅力には勝てないな！

　Ｂランクに上がったとしても、またリバーシブル作りそうだし、暫く我慢するか。

　そんな喜ぶギルド長を無視するかのように、レナが一枚の紙を差し出してきた。

「ではここにサインをお願いします。今回の提案を受け入れたという承諾と、200万ガルは大金ですから、倉庫ギルドに口座を作っておきますので、そのプレートと顔の登録許可についてです」

　結局、ギルドの思うとおりに動いてる気がしないでもないが、こっちに利益もあるなら呑むしかないってことだな。