第24話 スキルブック・裏の使い方

「ショータさんやりましたねっ!」


「結構あっけなかったな」


 ダメージ無効って最強じゃね?

 魔法も効かないし、もう死の恐怖はないぞ。

 などと考えていると、村のほうからリューシャが走ってきた。


「ショーターンっ! 怪我なくてよかったねぇっ!」


 普通に背中へのダイブはすり抜けないようだ。

 結構くるものがあるんだが、ダメージじゃない判定か。


「ショータン無理しちゃダメだよ? ダメージ無効っていっても無敵じゃないからね?」


「でも魔法も何も効かなかったぞ。ほぼほぼ最強だろ」


 俺の言葉に、真面目な顔になると、左右に首を振るリューシャ。


「全然そんなことないよ。封印されちゃダメだし、拘束されて放置されるだけで餓死しちゃうよ?」


「言われてみればそうだな……むやみに突っ込むのはヤバかったのか。今度からは自重しよう。あと、能力について他言するのはよくないな。ありがとな、リューシャ」


 照れくさそうにすると、黙って唇を突き出すリューシャ。

 今度は押してこず、清楚な感じで攻めてきやがったか。

 無駄に成長しやがって……。


「リューシャ、仕事が残ってるぞ」


「…………ん、仕事?」


 リューシャは片目を開け、周りを見回している。

 そろそろ気づいただろ。


「早くオーガの耳切り取ってこい」


「えーー、ここでも耳切り取り係なのぉ?」


「ここでもじゃない、これからも、いつでもだ」


 ぶつくさ文句を言いながらも切り取り始めるリューシャ。

 だが、急にテンションが上がったようで、やたら手際がよくなっていく。

 不気味なんだが……いったい何が起こったってんだ。


「これからも、いつでも一緒にいてくれってことだよね~。ショータンは恥ずかしがり屋さんだから、こういう言い方しかできないって知ってるもんね~ふふふふっ♪」


 独り言なのかわからないが、こちらにまではっきり聞こえる声で言うのはやめてもらいたい。

 正直薄気味悪い。

 だが、これだけ前向きだと、俺の心が先に折れちまいそうで不安だ……。



 アルナの気配がないのに気づき周りを見回すと、アルナは魔族の死体から装備と、身分証を剥ぎ取っている最中だった。


「そんなもの取ってどうするんだ?」


「今回の依頼は、そのまま達成で済ませる案件ではないですから。魔族が関与していた上に、ショータさんは魔族の指揮官を倒したんですよ。だから、その報告の証拠になるものを確保しているんです」


「そうか、依頼としてはCランクからのものだったけど、実際はもっと上だったってことだもんな」


「今回もランクアップは間違いなしですよ。あのレナさんを黙らせるには、こういうものがないとダメでしょうし」


 アルナまでレナ対策を考えるまでになったか……なんだか感慨深いな。


「よし、明日はギャフンと言わせてやろうぜ!」


 今日は遅いので、村で一泊させてもらおう。



       ◆  ◇  ◆



 その日の晩、リューシャとアルナが寝てから俺は村長に呼び出された。

 もう夜半過ぎで、村の住人も寝静まっていて静かなもんだ。


「今日は本当にありがとうございました。まさか、あなたがあんなにもお強いとは」


 村長は酒を片手に、村にやってきた時とは正反対の態度を見せる。

 もう俺をただのDランク冒険者とはみていないようだ。


「で、こんな時間に何か用です?」


「単刀直入に申し上げます。ショータさま、うちの娘を嫁に貰ってはくださらぬか?」


「へ? 俺に貰ってくれって?」


 村長は酔ってはいるが、その目は真剣だ。

 ただ目が据わってるだけじゃねえはず……。


「ええ、もう十九歳だが、働き者でいい妻になると思うのですが」


 十九歳なら全然ロリじゃねえよな?

 つうか、俺と四歳しか違わねえし!


「失礼ですけど、娘さんは知ってるんですか?」


「まだ言ってないが、ショータさんなら文句はありますまい」


 まさか、こんな美味しい展開になるなんてな。

 胸のドキドキが止まらねえんだが!


「それで、娘さんと顔合わせは、明日にでもできるんです?」


「娘は照れ屋で、顔合わせは……嫁に貰ってくださるなら、その時は大丈夫だと思います」


 いやいや、顔すら見ずにってのは無茶だろ………………ちょっと待てよ、これって、幸運を拾う、仲間に引き入れるってことと同義だろ。


「ちょっと待ってくださいね」


 スキルブックを取り出し、あれを見ることにした。

 日付も変わり、収集値も昼のアイツを倒したことで回復してMAXのはず。

 どういう人物か、これでわかるかもしれない。



【本日の一覧】

 食っちゃ寝女(関取級)―――――――消費収集値 0pt



 なんだよこれ…………荷物にしかならねえだろッ!

 0ptでもいらねえわ!

 娘が可愛いからって、目が曇りすぎだろ村長!

 働き者とか嘘吐くんじゃねえよッ!


「村長、俺は冒険者だ。いつ死ぬかわからない身だ。それに仲間もいるし、やっぱり妻を持つのはよくない。すまんなッ!」


「そうですか……では、冒険者をやめる時はぜひ!」


「……それはないから諦めろ」


 スキルブック使えるじゃねえか……ちょっとした未来が見えた気分だぜ。



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