第23話 攻撃? 全部無効だよ

「今の地震はなんだ?」


「オーガが大岩を投げてきたんです!」


 アルナは既に物見櫓から出ていこうとしている。

 俺も付いていくべきだろう。


「放っておいたら村が壊滅しそうだな。リューシャはここにいていいぞ。じゃあ、アルナ行くか」


「はいっ!」


 ハキハキした返事をしたアルナは、物見櫓から村の外まで一気に跳躍していった。俺は飛び降りてノーダメージで走っていくしかない。


「身体能力をどうにかしたいもんだな……」


 村の外、アルナの下にたどり着いた時には、体力が半分以上奪われていた。


「ショータさん大丈夫ですか?」


「体力が……ほしい……クライマックスまで、アルナ……お願い」


「わかりました。私の本気、見ててください」


 アルナは剣を抜き放つと、オーガへと突撃する。

 やっと視認できた先頭の魔族は男のようで、そんなアルナへ向け、オーガを次々ぶつけてきた。


「たぁアアアッ! えいやァアアアッッ!」


 巨大なオーガすら一刀のもと、あっさり葬り去るアルナ。襲い来るオーガをものともせず、確実に息の根を止めてゆく。


「貴様ァアアッ! 我がオーガ部隊を殲滅する気かッッ!」


 その惨状に、オーガを率いていた魔族の男が黙っているはずもなく、アルナの前に立ち塞がった。


「なかなかの腕だが、このオレの相手にはならんぞ。魔王様から賜ったオーガ部隊を壊滅させた責任、その命でもって償ってもらおうか」


「わたしも勇者として、魔族の悪行を見逃すわけにはいきません!」


 魔族の男とアルナが対峙している間、残ったオーガが村へ行く動きを見せる。


「俺も体力戻ってきたし、残ったオーガは殲滅させとくか」


 神剣を一振りすると、残ったオーガの上半身と下半身が一瞬で分断され、一気に血液を噴出させる。

 それを目にした魔族の動きが止まる。


「き、きき貴様ァアアアッッ! いったい何をしたのか理解してるのかッ!」


「何って、魔物狩りだよ」


「貴様は許さん、勇者は後回しだ。死んだことすら気づかせぬオレの魔法を食らうがいいッ!」


 魔族の男が両手を掲げると、漆黒の穴のようなものが頭上に出現した。

 そこが一瞬光ったと思ったら、俺の背後の地面が大爆発を起こした。


「ん? 何か体を通っていったかな?」


「ん? おかしいな、確かに貴様の体に命中したはずだが……」


 更に魔法を発動する魔族の男。

 その度に、俺の背後の地面に穴が空き、爆音が木霊する。


「…………貴様、どういうことだ。間違いなく体に当たっているだろう。もう肉片すら残っていないはずが、どうしてそんなにピンピンしていられるのだ」


「当たってねえからだろ。俺にダメージは与えられねえぞ」


「どういうことだ? 不死の体だとでもいうのか?」


「違う違う、単純にお前の攻撃は俺に当たらないんだよ」


「そうか、そういうことか」


 男は魔法を放つのをやめると、腰に携えている剣を抜き、一気に距離を詰めてきた。


「貴様は特殊な魔法で、魔法攻撃を効かないようにしているのだろう! はははははっ、残念だったな、俺は剣技にも自信があるのだ!」


 男は俺を一刀両断する斬撃を放つ、放つ、放つ、放つ。


「おかしいィッィイイイッッ!! どうして刀身がすり抜けるのだッ!」


 俺も神剣を構えると、警戒する男。


「その構えはド素人、だが、さっきのオーガを殺した技はよくわからんからな、一応防御だけはしてやろう」


 男は急に魔法を自分にかけ始める。

 幾重にも重ねがけされた魔法で、男の体が光って見えるほどだ。


「オレはこれでも用心深いほうでな、これでどんな魔法であろうと、オレを斬ることはかなわんぞ。はははははっ!」


 さっきから俺と魔族とのやりとりを見ていたアルナが、フィニッシュに気づいたのか、構えていた剣を鞘に戻し始めた。

 俺のダメージ無効がわかっているからか、全然手を出してこなかったな。


「じゃあ俺もやらせてもらうかな」


「さっさとするがいい。この魔法で強化した肉体、それに俺の剣技で、攻撃そのものが無駄だということを思い知るがいい」


 自信満々の笑みを浮かべる魔族。何かイラつく顔だ。

 魔族の男は俺の剣の軌道を防ぐ構えを取っているが、そんなものは関係なしに振り下ろす。


「ははははっ、なんだそのへっぴり腰の一撃は。そんなもので、このオレが――――あれ……あ、あばバババッッッッ」


 自分では防いだと思っていた剣、腕、体と真っ二つになっていく感触に、頭がおかしくなったのだろうか?

 男は素っ頓狂な声を出し、そのまま後ろに倒れると動かなくなった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る