第22話 期待はずれの冒険者?
ダメージを負わないというのはスゴいもんだ。
村にもうすぐ着くというところで、普通なら飛び降りたら骨折間違いなしの崖を飛び降りたが、ダメージはなかった。カッコよくは着地できなかったが。
「ショータさん、村が見えてきましたよ」
アルナが指差した先、山の麓に小さな集落が見える。
数百人程度が住んでいそうな規模の村だ。
「オーガの群れが来たら、あっという間になくなっちゃいそうだね」
「リューシャもオーガに詳しそうだな」
「だってさ、知能は低いのに、子作りだけは一丁前の魔物なんだよ。女の天敵だからね~」
「だったらさ、マッチョなお兄さんになっててもいいぞ――――そのままここでお別れになるけどな」
後ろでギャアギャア騒ぐリューシャを置いて村に入ると、年配の男性が若者数人を引き連れてこちらにやってきた。
「あなたたちは、ここに何か御用ですかな?」
「冒険者ギルドから依頼を受けてきたんだけど」
俺とアルナ、それに戦闘には役に立ちそうにないリューシャに目を向けると、はっきりと眉をひそめる男。
「我らはCランク以上の冒険者を希望したはずだ。あなたの装備は、剣は凄いが、それ以外は初心者装備のように見えるのだが?」
「あー、俺はDランクで、防具はそのまま初心者のやつを使ってるだけだ」
「本当に冒険者ギルドというのはあくどい。金がなければ、オーガの群れにこんな冒険者しかよこさないとは」
頭を抱え天を仰ぐ年配の男。
周りの若者はそれどころではなく、リューシャとアルナに釘付けだ。
「心配しなくても、このアルナはSランクだぞ」
俺の言葉に合わせ、アルナが胸元から黒いプレートを出してみせる。
それを、三回ほど目を擦って確かめる男たち。
「まさか、本当にSランクの冒険者の方がきてくださるなんて……何もない村ではありますが、ささっ、どうぞ中へ」
アルナが先頭になり、そのあとを付いてゆく俺とリューシャ。
「おかしいねえ。ショータンが主なのにねえ」
「アルナは勇者だからな、本来これが普通だろ。波風立たせず、無事依頼を達成できればそれでいいんだよ」
「ショータン大人! そんなショータンが大好きだよっ」
「残念だったな。本当はすごく子どもっぽいところのほうが多いんだぞ」
「子どものショータンも大好きだからいいのっ」
ダメだこりゃ……。
◆ ◇ ◆
まあ、村に入ってからの扱いは酷かった。
ランク持ちでもないリューシャより酷かった。というかリューシャは男どもからチヤホヤされてたから、全然酷いなんてことはなかったが。
あの年配の男は村長らしく、話を聞く限り、オーガが見える距離は近づいており、村の
「なあ、これって討伐が必要なんじゃないか?」
物見櫓に上り、周囲を監視しながらアルナに尋ねると、真剣な表情のアルナは遠くの一点を見つめたまま動かなくなっていた。
「アルナ、聞いてるか?」
「そんな悠長なことは言ってられなくなりそうですよ。オーガの群れと言ってましたけど、あれはそんな生易しいものじゃないです」
アルナの見つめる先には、魔物の大群が
「なんだあれ……数百はいるぞ」
俺の声に、監視もせず休憩していたリューシャも立ち上がり、その大群を確認しはじめた。
「ホントだね~。スゴい数のオーガ。その先頭に誰かいるみたいだけど……」
それだけ言うと、急に顔を引っ込めるリューシャ。
「どうかしたのか、リューシャ?」
「ショータさん、先頭に、誰かオーガを率いている人がいるみたいです」
アルナやリューシャは目がいいのだろう。アルナが指差した場所に目を凝らしても、俺の視力じゃほとんど見えない。
「見えないけど、誰がいるっていうんだ? 率いてるなら、違う場所に行ってもらえばいいんじゃないのか?」
「こちらの話は聞いてもらえそうにないです。あれは魔族です」
そうかそうか、それでリューシャはしゃがんで、同族から顔を見られないようにしてるわけか。
「リューシャ、別にお前の同族が悪さしてるからって、お前を責めたりしないから、そこは安心しろ」
「ショータン……優しいね」
とろんとした瞳を俺に向けるリューシャ。
「リューシャ……お前が説得してくれば万事解決、全く問題ない」
「ショータン……厳しいね」
刹那、地震かと思えるほど大きな振動が村を襲った。
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